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囚われた先輩を救え編
その3
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生放送が無事に終わり、俺は楽屋に戻るなり再度データを確認する。
データでは、数千から数億もの金があらゆる口座を転々としている証拠が残されていた。
「このデータを史でも分かりやすくまとめるのは骨が折れるな……」
そう思った俺は、史に電話を掛ける。
『あ、カンちゃん生放送お疲れ様―。データの方はどうだった? 俺でも分かるような内容だった?』
「史なら数秒でぶっ倒れそうな奴だったぞ。数字の羅列ばかりだ」
『えぇー!! じゃあ、カンちゃんが簡潔にまとめて!!』
「いやぁ、さすがにコレを簡潔にまとめるのは難しいから連絡をしたんだが……、史は“マネーロンダリング”って分かるか?」
俺の質問に『ぬ?』と変な声を出す史。
『まねぇ……ごろんごろん?』
「マネーロンダリングだ。別名、資金洗浄とも言うのだが……」
『ううっ。難しい言葉過ぎて、頭がっ……』
史は早くもギブアップモードのようだ。
「マネーロンダリングっていうのは、違法な方法で手に入れたお金を架空口座などを利用して転々と移動させて、移動させることで出所を掴めなくして正当なお金と見せかけることだ。つまりはお金の洗濯だな」
『お金を洗濯したらクシャクシャになるじゃん!!』
あまりにも純粋に史がそういうもんだから、俺は突然の頭痛に襲われる。
「洗濯っていうのは、比喩だ。実際に洗濯するわけじゃない」
『なるほど。で、その洗濯の何が悪いの?』
「資金洗浄で得られたお金は、犯罪で使われたりすることが多いんだ。まぁ、資金洗浄する前のお金も汚れたお金だから、犯罪等で得られたお金なんだが」
『それ、ダメなやつじゃん!?』
史もやっと話を理解してくれたらしい。
「恐らく先輩はある企業が行っていたマネーロンダリングの実態を掴むために取材をしてこのデータを手に入れたんだろうな。それで、ソレを掴んでしまった為に囚われているか、消されているか」
『そんなに大事な情報なら直ぐには消さないんじゃない? 在り処を吐いてもらわない限りは何時流されてもおかしくない訳だし』
「史にしては、たまには全うなことをいうじゃないか」
電話の先で史は、たまにはってなんだよーとプンプンと怒り出した。
「つまりは警察やら俺からの何かアクションが無い限り先輩の無事は保障されているというわけか……」
『そういうことだねー』
そういうことなら……、
「次に狙われるのは俺ってことかな?」
『カンちゃんが狙われるっていうその根拠は?』
「先輩に最後に会っているのは恐らく俺だ。それに、その時も誰か付けているとしたら、先輩が酔っ払いに偽装して俺に引っ付いていたのを見ているハズだしな」
先輩はあの時やけに周りを警戒していた。恐らくは誰か付けて俺たちのことを監視していたのではないかと考えた。
『俺がカンちゃんのボディガードでもしようか?』
「いや、史が護衛だなんて煩くて敵わないから却下だ」
『酷い! じゃあ、どうするの?』
「ちょっと大物を釣り上げようかなぁって思って」
『大物? 釣り?』
「まぁ後でメール連絡する。切るぞ」
俺はそう言って史との電話を切った。
「さて、まずは相手方について調べないとな」
俺はそう言って【テリトリー】を起動させ、データに書かれていた【HM興業】について検索する。
HM興業は海外の食品やサプリメントを仲介販売している会社のようだった。
主な事業形態はインターネットの通信販売で、結構儲かっているみたいだ。
「さて、ここから【テリトリー】の真髄だな」
俺はコマンドを打って、マネーロンダリングに関連しそうな検索結果のみ取捨選択をする。
検索数は0件だった。
「さすがに一番隠しておきたいものは易々とは出ないか。これは家に帰ってからさらに下層まで調べるかな。ラジオ局のWi-Fiだと追跡されたときが面倒だし」
俺は帰る準備をそそくさと整え、楽屋を後にした。
家に戻って、さらに下層を探ってみたがやはりそのような記事は出なかった。
「最近キーボードで打って検索するのが面倒くさくなってきたなぁ、流行の音声検索でも今後導入してみるか」
そんな物ぐさなことを言いながら、ネットの海で必死に欲しい情報を探していく。
ふと、あるページが目に入った。それは、
【先行投資、20年モノの高級ワインのオーナーになりませんか? オーナー様には20年後に最高級ワインを赤・白をもれなく差し上げます。大切な記念日に貴方がオーナーのワイナリーのワインで一杯。人気商品につき、申し込みはお早めに!!】
というものだった。
「これ、8年前の商品ページだな。本来のページは消されているみたいだけど幸いキャッシュページが残っていたのか」
その商品ページに書かれているワイナリーの住所を【テリトリー】で検索すると、そこは住宅密集地になっていた。
つまり、そんなワイナリーなんて存在していない。詐欺だ。
「20年はさすがに忘れている奴が居るもんな。そうか、資金はここからかき集めたんだ。さて、他にも似たようなものがないか……」
さらに似たような商品が無いか検索してみると、まぁ、出るわ出るわ先行投資商品の山が。訴えられないように、直ぐに商品ページは抹消しているみたいだが、生憎キャッシュページはゴロゴロと残っていた。
「さぁ、証拠は出たし、そろそろ反撃開始というこうか?」
俺はニヤニヤとしながら【テリトリー】経由で1通のメールをHM興業へと送った。
データでは、数千から数億もの金があらゆる口座を転々としている証拠が残されていた。
「このデータを史でも分かりやすくまとめるのは骨が折れるな……」
そう思った俺は、史に電話を掛ける。
『あ、カンちゃん生放送お疲れ様―。データの方はどうだった? 俺でも分かるような内容だった?』
「史なら数秒でぶっ倒れそうな奴だったぞ。数字の羅列ばかりだ」
『えぇー!! じゃあ、カンちゃんが簡潔にまとめて!!』
「いやぁ、さすがにコレを簡潔にまとめるのは難しいから連絡をしたんだが……、史は“マネーロンダリング”って分かるか?」
俺の質問に『ぬ?』と変な声を出す史。
『まねぇ……ごろんごろん?』
「マネーロンダリングだ。別名、資金洗浄とも言うのだが……」
『ううっ。難しい言葉過ぎて、頭がっ……』
史は早くもギブアップモードのようだ。
「マネーロンダリングっていうのは、違法な方法で手に入れたお金を架空口座などを利用して転々と移動させて、移動させることで出所を掴めなくして正当なお金と見せかけることだ。つまりはお金の洗濯だな」
『お金を洗濯したらクシャクシャになるじゃん!!』
あまりにも純粋に史がそういうもんだから、俺は突然の頭痛に襲われる。
「洗濯っていうのは、比喩だ。実際に洗濯するわけじゃない」
『なるほど。で、その洗濯の何が悪いの?』
「資金洗浄で得られたお金は、犯罪で使われたりすることが多いんだ。まぁ、資金洗浄する前のお金も汚れたお金だから、犯罪等で得られたお金なんだが」
『それ、ダメなやつじゃん!?』
史もやっと話を理解してくれたらしい。
「恐らく先輩はある企業が行っていたマネーロンダリングの実態を掴むために取材をしてこのデータを手に入れたんだろうな。それで、ソレを掴んでしまった為に囚われているか、消されているか」
『そんなに大事な情報なら直ぐには消さないんじゃない? 在り処を吐いてもらわない限りは何時流されてもおかしくない訳だし』
「史にしては、たまには全うなことをいうじゃないか」
電話の先で史は、たまにはってなんだよーとプンプンと怒り出した。
「つまりは警察やら俺からの何かアクションが無い限り先輩の無事は保障されているというわけか……」
『そういうことだねー』
そういうことなら……、
「次に狙われるのは俺ってことかな?」
『カンちゃんが狙われるっていうその根拠は?』
「先輩に最後に会っているのは恐らく俺だ。それに、その時も誰か付けているとしたら、先輩が酔っ払いに偽装して俺に引っ付いていたのを見ているハズだしな」
先輩はあの時やけに周りを警戒していた。恐らくは誰か付けて俺たちのことを監視していたのではないかと考えた。
『俺がカンちゃんのボディガードでもしようか?』
「いや、史が護衛だなんて煩くて敵わないから却下だ」
『酷い! じゃあ、どうするの?』
「ちょっと大物を釣り上げようかなぁって思って」
『大物? 釣り?』
「まぁ後でメール連絡する。切るぞ」
俺はそう言って史との電話を切った。
「さて、まずは相手方について調べないとな」
俺はそう言って【テリトリー】を起動させ、データに書かれていた【HM興業】について検索する。
HM興業は海外の食品やサプリメントを仲介販売している会社のようだった。
主な事業形態はインターネットの通信販売で、結構儲かっているみたいだ。
「さて、ここから【テリトリー】の真髄だな」
俺はコマンドを打って、マネーロンダリングに関連しそうな検索結果のみ取捨選択をする。
検索数は0件だった。
「さすがに一番隠しておきたいものは易々とは出ないか。これは家に帰ってからさらに下層まで調べるかな。ラジオ局のWi-Fiだと追跡されたときが面倒だし」
俺は帰る準備をそそくさと整え、楽屋を後にした。
家に戻って、さらに下層を探ってみたがやはりそのような記事は出なかった。
「最近キーボードで打って検索するのが面倒くさくなってきたなぁ、流行の音声検索でも今後導入してみるか」
そんな物ぐさなことを言いながら、ネットの海で必死に欲しい情報を探していく。
ふと、あるページが目に入った。それは、
【先行投資、20年モノの高級ワインのオーナーになりませんか? オーナー様には20年後に最高級ワインを赤・白をもれなく差し上げます。大切な記念日に貴方がオーナーのワイナリーのワインで一杯。人気商品につき、申し込みはお早めに!!】
というものだった。
「これ、8年前の商品ページだな。本来のページは消されているみたいだけど幸いキャッシュページが残っていたのか」
その商品ページに書かれているワイナリーの住所を【テリトリー】で検索すると、そこは住宅密集地になっていた。
つまり、そんなワイナリーなんて存在していない。詐欺だ。
「20年はさすがに忘れている奴が居るもんな。そうか、資金はここからかき集めたんだ。さて、他にも似たようなものがないか……」
さらに似たような商品が無いか検索してみると、まぁ、出るわ出るわ先行投資商品の山が。訴えられないように、直ぐに商品ページは抹消しているみたいだが、生憎キャッシュページはゴロゴロと残っていた。
「さぁ、証拠は出たし、そろそろ反撃開始というこうか?」
俺はニヤニヤとしながら【テリトリー】経由で1通のメールをHM興業へと送った。
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