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囚われた先輩を救え編
その2
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翌日、いつも通りに起きた俺は、昨日言っていた先輩の言葉を思い出した。
『俺に何かあった時は、コレを警察に渡してくれ』
夜帰ってから先輩に突っ込まれたパーカーのポケットを漁ると、其処にはUSBメモリが1個入れられていたのだ。
先輩の連絡先は聞いていたので、電話を掛けてみたのだが、
『お客様のお掛けになった電話番号は現在電波の届かない所にいるか、電源が入っていない為……』
繋がる気配が無い。
「本当に何かあったのか? そんな先輩自体が消えるような要因を俺に託してもらっては困るんだけどなぁ……」
コレを託された俺まで消されてしまっては困る。
俺はため息を吐いて、アドレス帳から史の番号を呼び出す。
数回の呼び出し音の後に呑気な声が聞こえてくる。
『もしもし、カンちゃん、どうしたの? ふぁあ』
しかも欠伸混じりだ。
「暇そうだな、史」
『暇じゃないよー。昨日、ビュッフェでハッスルして食べすぎちゃって疲れちゃったけど、暇じゃないよー』
「十分暇じゃねーかぁ!」
俺のツッコミに史は電話先でピューピューと口笛らしき音を鳴らす。
「暇じゃないなら事件になりそうな面白いものを教えてやろうと思ったのだが、やめておこうか」
『え、面白いもの!? 聞く聞く!!』
史は“面白いもの”という言葉に弱い。だから、“面白いもの”と言葉を付け加えるだけで直ぐに釣れてしまうのである。単純だ。
「高校の時に、俺が所属していた放送部に水嶋克哉先輩って居ただろ?」
『水嶋……、あー、俺達より1つ上でお祭り男の先輩だね!』
先輩は何でも催し物が好きだったので、高校時代につけられていたあだ名が『お祭り男』だった。
『懐かしいねぇー、お祭り男。で、その水嶋先輩がどうしたの?』
「最近上箕島へ帰ってきたっていうから、飲みに誘われたんだ。俺と先輩だけで飲みたいって」
『あの、グループでわいわいするのが好きな先輩がカンちゃんとサシ飲みって珍しい』
史も先輩の性格を知っているので、そこの部分にやはり引っ掛かったみたいだ。
「だろ? でも一応誘われたし飲みに行ったのだけど、其処で先輩が俺に何かがあったらコレを警察に渡してくれとUSBメモリを俺のパーカーのポケットにねじ込んできたんだ」
『ほー、それでそれで?』
「ついさっき先輩に電話を掛けてみたが、繋がらないというわけだ」
『そ、それってカンちゃん、つまりは、先輩に何かあったっていうわけだね!』
「そういうことになるな。恐らく失踪届けなんてものはまだ出されていないと思うが」
『そのUSBメモリの中身は見たの?』
「いや、まだだ。これからラジオ局へ行かないと行けないし、打ち合わせ後の空き時間に確認しようと思っているが? 警察に渡せって言っていたし史が確認しても良いんだが?」
俺がそう言うと、電話の先でえーとノリ気ではない返事が聞こえてきた。
『開いた途端山ほどの数字が出てきたら、俺、頭がパンクするもん』
「お前、昔から算数数学の分野は毛嫌いしているな」
『数学ダメ絶対! カンちゃんが見て、【テリトリー】経由で概要を分かりやすく送ってくれたらうれしいなー。なーんて』
史のぶりっこな声に俺はまたため息が漏れた。
「その代わり時間をもらうからな。生放送が終わった後でいいか?」
『いいよ。寧ろその方がカンちゃんの放送に集中できるから断然良い』
「仕事に集中しろ。まぁ、いい。そろそろ準備するから切るぞ」
『はーい』
史との電話を切って、俺はそそくさとラジオ局へ向かう準備を始めた。
昼の生放送の打ち合わせは30分ほどで終わり、俺は楽屋でノートパソコンの電源を入れる。
「さぁて、どんな恐ろしいものが出てくるのか」
先輩から託されたUSBメモリをノートパソコンへ差し込み、データをロードする。
USBメモリの中からは1つの表計算のワークシートと1つのテキストファイルが出てきた。
最初にテキストファイルの方を開いてみる。
其処には、
『コレを見られている方へ
コレを見ておられるということは、私は真相を追究してしまった為、消された又は何処かへ失踪してしまっています。
そのデータはとても重大な証拠です。私が取材の末に掴んだ重大なモノなんです。どうかお願いです。そのデータを決してアイツらに奪われないようにしてください。
何卒、宜しくお願いします。
水嶋克哉』
と、書かれていた。
「どんだけ危ないモノなんだよ……」
俺はゴクリと喉を鳴らして今度をワークシートファイルを開いた。
開いた途端、山ほどの数字の羅列。史ならものの数秒でノックダウンしそうだ。
つらつらと表を眺める。すると、あることに気がついた。
「これは……もしかしてマネーロンダリング?」
とある大手企業のマネーロンダリング、資金洗浄の決定的証拠だった。
『俺に何かあった時は、コレを警察に渡してくれ』
夜帰ってから先輩に突っ込まれたパーカーのポケットを漁ると、其処にはUSBメモリが1個入れられていたのだ。
先輩の連絡先は聞いていたので、電話を掛けてみたのだが、
『お客様のお掛けになった電話番号は現在電波の届かない所にいるか、電源が入っていない為……』
繋がる気配が無い。
「本当に何かあったのか? そんな先輩自体が消えるような要因を俺に託してもらっては困るんだけどなぁ……」
コレを託された俺まで消されてしまっては困る。
俺はため息を吐いて、アドレス帳から史の番号を呼び出す。
数回の呼び出し音の後に呑気な声が聞こえてくる。
『もしもし、カンちゃん、どうしたの? ふぁあ』
しかも欠伸混じりだ。
「暇そうだな、史」
『暇じゃないよー。昨日、ビュッフェでハッスルして食べすぎちゃって疲れちゃったけど、暇じゃないよー』
「十分暇じゃねーかぁ!」
俺のツッコミに史は電話先でピューピューと口笛らしき音を鳴らす。
「暇じゃないなら事件になりそうな面白いものを教えてやろうと思ったのだが、やめておこうか」
『え、面白いもの!? 聞く聞く!!』
史は“面白いもの”という言葉に弱い。だから、“面白いもの”と言葉を付け加えるだけで直ぐに釣れてしまうのである。単純だ。
「高校の時に、俺が所属していた放送部に水嶋克哉先輩って居ただろ?」
『水嶋……、あー、俺達より1つ上でお祭り男の先輩だね!』
先輩は何でも催し物が好きだったので、高校時代につけられていたあだ名が『お祭り男』だった。
『懐かしいねぇー、お祭り男。で、その水嶋先輩がどうしたの?』
「最近上箕島へ帰ってきたっていうから、飲みに誘われたんだ。俺と先輩だけで飲みたいって」
『あの、グループでわいわいするのが好きな先輩がカンちゃんとサシ飲みって珍しい』
史も先輩の性格を知っているので、そこの部分にやはり引っ掛かったみたいだ。
「だろ? でも一応誘われたし飲みに行ったのだけど、其処で先輩が俺に何かがあったらコレを警察に渡してくれとUSBメモリを俺のパーカーのポケットにねじ込んできたんだ」
『ほー、それでそれで?』
「ついさっき先輩に電話を掛けてみたが、繋がらないというわけだ」
『そ、それってカンちゃん、つまりは、先輩に何かあったっていうわけだね!』
「そういうことになるな。恐らく失踪届けなんてものはまだ出されていないと思うが」
『そのUSBメモリの中身は見たの?』
「いや、まだだ。これからラジオ局へ行かないと行けないし、打ち合わせ後の空き時間に確認しようと思っているが? 警察に渡せって言っていたし史が確認しても良いんだが?」
俺がそう言うと、電話の先でえーとノリ気ではない返事が聞こえてきた。
『開いた途端山ほどの数字が出てきたら、俺、頭がパンクするもん』
「お前、昔から算数数学の分野は毛嫌いしているな」
『数学ダメ絶対! カンちゃんが見て、【テリトリー】経由で概要を分かりやすく送ってくれたらうれしいなー。なーんて』
史のぶりっこな声に俺はまたため息が漏れた。
「その代わり時間をもらうからな。生放送が終わった後でいいか?」
『いいよ。寧ろその方がカンちゃんの放送に集中できるから断然良い』
「仕事に集中しろ。まぁ、いい。そろそろ準備するから切るぞ」
『はーい』
史との電話を切って、俺はそそくさとラジオ局へ向かう準備を始めた。
昼の生放送の打ち合わせは30分ほどで終わり、俺は楽屋でノートパソコンの電源を入れる。
「さぁて、どんな恐ろしいものが出てくるのか」
先輩から託されたUSBメモリをノートパソコンへ差し込み、データをロードする。
USBメモリの中からは1つの表計算のワークシートと1つのテキストファイルが出てきた。
最初にテキストファイルの方を開いてみる。
其処には、
『コレを見られている方へ
コレを見ておられるということは、私は真相を追究してしまった為、消された又は何処かへ失踪してしまっています。
そのデータはとても重大な証拠です。私が取材の末に掴んだ重大なモノなんです。どうかお願いです。そのデータを決してアイツらに奪われないようにしてください。
何卒、宜しくお願いします。
水嶋克哉』
と、書かれていた。
「どんだけ危ないモノなんだよ……」
俺はゴクリと喉を鳴らして今度をワークシートファイルを開いた。
開いた途端、山ほどの数字の羅列。史ならものの数秒でノックダウンしそうだ。
つらつらと表を眺める。すると、あることに気がついた。
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