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défendu
マリー=アンジュ・マクシミリアン
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「そう…アントワーヌね。ロイクは間違い無くそこに居たのね?」
マリー=アンジュは部屋に呼び出した召使のウスターシュに詰め寄った。
「ロイク様なのか似ておられる方なのかは分かりませんが……フランシス様がその方を御覧になられたのはアントワーヌの街へ出掛けた時でございました……」
マリー=アンジュの鋭い眼差しに圧倒されながら年老いたウスターシュは冷静に言葉を選んで答えた。
「それで?あなたは見たの?」
追い打ちをかけるようなマリー=アンジュの問いに、ウスターシュはいいえと首を横に振った。
マリー=アンジュは大きく溜息をついたがすぐに言葉を発した。
「あなたの部下を数人アントワーヌへ向かわせなさい!そこでロイクを徹底的に探すのよ!」
突然の命令にウスターシュは困惑した。
「お、お嬢様…大変申し訳無いのですがそれは不可能です!当屋敷の召使はマクシミリアン家の皆様のお顔は当然ながら存じ上げておりますが、シャンデルナゴール家のお方となれば話は別……それにロイク様は両家の集まり等にもあまり出てこられないお方……そんなお方のお顔をマクシミリアン家の召使達が覚えているとは思えません!捜索するなど不可能でございます……!」
額に汗を浮かべながらマリー=アンジュを説得しようとするウスターシュ。しかしマリー=アンジュは折れることは無かった。
「それなら執事長であるあなたと侍女長のレティシアだけでも探しに行きなさい!あなたたち2人はロイクを知っているでしょう!?」
マリー=アンジュは部屋に飾ってある肖像画を指差しながらウスターシュに言い放った。
マリー=アンジュとロイクとレオポルドの3人が描かれた肖像画。この絵が描かれたのは彼女らが13歳の頃。こちら側を見ているマリー=アンジュとレオポルドに対し、ロイクだけは横顔でどこか遠くを見つめている絵だ。
「で、ですがお嬢様…召使の長である私とレティシア2人ともがこの屋敷を離れるとなりますと業務に差支えが出てしまいます。…それに、旦那様のお許しは得ているのですか?」
ウスターシュの問いかけにマリー=アンジュは黙ってしまった。
その時、ノックも無しに部屋の扉が開くと母アナ=マリアが入ってきた。
「ウスターシュ、こんな所で何をしているの?フランシスがあなたを探しているわよ。」
いきなり部屋に入ってきてウスターシュを連れて行こうとする母にマリー=アンジュは腹を立てた。
「お母様!ウスターシュは今私と大切な話をしているの!それにノックもせずに人の部屋に入るのはいけないって私に仰ったでしょう!?」
怒る娘にアナ=マリアは溜息をついた。
「悪かったわねマリー=アンジュ。でもウスターシュにはこれからフランシスに学問を教えて貰うのよ。ウスターシュ、行くわよ。」
ウスターシュの手を引き部屋を出ようとする母にマリー=アンジュは更に怒りを募らせながら2人を引き止める。
「待ってよ!まだ話は終わってないのよ!ウスターシュ、この際だからレティシアはもういいわ。あなたと私だけでも今すぐアントワーヌへロイクを探しに……」
言いかけたマリー=アンジュをアナ=マリアが平手打ちした。鈍い音が部屋に響き、重苦しい空気が漂う。
「いい加減になさいと何度言えば分かるの!?ロイクの捜索は母親であるナディアが召使達にさせているわ。あなたには関係の無いことよ!」
母の言葉にマリー=アンジュは何とか言い返したかった。
自分の力でロイクを見つけ説得すれば自分をロイクの許嫁にしてくれると言ったナディア。しかし、そのナディアが先にロイクを見つけてしまえば自分はただの生意気な小娘としてナディアに蔑まれるだろう。
マリー=アンジュは姉の二の舞にだけはなりたくなかった。ナディアに虐げられる惨めな姉を見る度にこうはなりたくないと心のどこかで見下していた。
「お母様…私は……ロイクを真剣に愛しているの。だから、ナディアおばさまより先に彼を見つけておばさまに認めてもらいたくて……」
「マリー=アンジュ!」
鈍い音が再び部屋に響いた。
睨み合う母と娘。その2人をウスターシュが心配そうに見つめている。
「ロイクのことはいい加減諦めなさい!あの家に嫁ぐのはエミリエンヌだけで十分よ!あなたにはどこか別の嫁ぎ先をそのうち見つけてあげるから大人しくしていなさい!」
マリー=アンジュにそう怒鳴りつけるとアナ=マリアは強引にウスターシュの手を引き部屋を出ていった。
「どうして……どうしてお母様は私だけ……」
マリー=アンジュはその場に蹲り泣いた。
弟ばかりを可愛がる母に最初から期待などしていなかったがロイクとの結婚まで完全否定されるなど耐えられなかった。
(でも分かったわ…ロイクはアントワーヌに居るのね……。こうなったら私1人でも探しに行くわ。)
マリー=アンジュは涙を拭った。
マリー=アンジュは部屋に呼び出した召使のウスターシュに詰め寄った。
「ロイク様なのか似ておられる方なのかは分かりませんが……フランシス様がその方を御覧になられたのはアントワーヌの街へ出掛けた時でございました……」
マリー=アンジュの鋭い眼差しに圧倒されながら年老いたウスターシュは冷静に言葉を選んで答えた。
「それで?あなたは見たの?」
追い打ちをかけるようなマリー=アンジュの問いに、ウスターシュはいいえと首を横に振った。
マリー=アンジュは大きく溜息をついたがすぐに言葉を発した。
「あなたの部下を数人アントワーヌへ向かわせなさい!そこでロイクを徹底的に探すのよ!」
突然の命令にウスターシュは困惑した。
「お、お嬢様…大変申し訳無いのですがそれは不可能です!当屋敷の召使はマクシミリアン家の皆様のお顔は当然ながら存じ上げておりますが、シャンデルナゴール家のお方となれば話は別……それにロイク様は両家の集まり等にもあまり出てこられないお方……そんなお方のお顔をマクシミリアン家の召使達が覚えているとは思えません!捜索するなど不可能でございます……!」
額に汗を浮かべながらマリー=アンジュを説得しようとするウスターシュ。しかしマリー=アンジュは折れることは無かった。
「それなら執事長であるあなたと侍女長のレティシアだけでも探しに行きなさい!あなたたち2人はロイクを知っているでしょう!?」
マリー=アンジュは部屋に飾ってある肖像画を指差しながらウスターシュに言い放った。
マリー=アンジュとロイクとレオポルドの3人が描かれた肖像画。この絵が描かれたのは彼女らが13歳の頃。こちら側を見ているマリー=アンジュとレオポルドに対し、ロイクだけは横顔でどこか遠くを見つめている絵だ。
「で、ですがお嬢様…召使の長である私とレティシア2人ともがこの屋敷を離れるとなりますと業務に差支えが出てしまいます。…それに、旦那様のお許しは得ているのですか?」
ウスターシュの問いかけにマリー=アンジュは黙ってしまった。
その時、ノックも無しに部屋の扉が開くと母アナ=マリアが入ってきた。
「ウスターシュ、こんな所で何をしているの?フランシスがあなたを探しているわよ。」
いきなり部屋に入ってきてウスターシュを連れて行こうとする母にマリー=アンジュは腹を立てた。
「お母様!ウスターシュは今私と大切な話をしているの!それにノックもせずに人の部屋に入るのはいけないって私に仰ったでしょう!?」
怒る娘にアナ=マリアは溜息をついた。
「悪かったわねマリー=アンジュ。でもウスターシュにはこれからフランシスに学問を教えて貰うのよ。ウスターシュ、行くわよ。」
ウスターシュの手を引き部屋を出ようとする母にマリー=アンジュは更に怒りを募らせながら2人を引き止める。
「待ってよ!まだ話は終わってないのよ!ウスターシュ、この際だからレティシアはもういいわ。あなたと私だけでも今すぐアントワーヌへロイクを探しに……」
言いかけたマリー=アンジュをアナ=マリアが平手打ちした。鈍い音が部屋に響き、重苦しい空気が漂う。
「いい加減になさいと何度言えば分かるの!?ロイクの捜索は母親であるナディアが召使達にさせているわ。あなたには関係の無いことよ!」
母の言葉にマリー=アンジュは何とか言い返したかった。
自分の力でロイクを見つけ説得すれば自分をロイクの許嫁にしてくれると言ったナディア。しかし、そのナディアが先にロイクを見つけてしまえば自分はただの生意気な小娘としてナディアに蔑まれるだろう。
マリー=アンジュは姉の二の舞にだけはなりたくなかった。ナディアに虐げられる惨めな姉を見る度にこうはなりたくないと心のどこかで見下していた。
「お母様…私は……ロイクを真剣に愛しているの。だから、ナディアおばさまより先に彼を見つけておばさまに認めてもらいたくて……」
「マリー=アンジュ!」
鈍い音が再び部屋に響いた。
睨み合う母と娘。その2人をウスターシュが心配そうに見つめている。
「ロイクのことはいい加減諦めなさい!あの家に嫁ぐのはエミリエンヌだけで十分よ!あなたにはどこか別の嫁ぎ先をそのうち見つけてあげるから大人しくしていなさい!」
マリー=アンジュにそう怒鳴りつけるとアナ=マリアは強引にウスターシュの手を引き部屋を出ていった。
「どうして……どうしてお母様は私だけ……」
マリー=アンジュはその場に蹲り泣いた。
弟ばかりを可愛がる母に最初から期待などしていなかったがロイクとの結婚まで完全否定されるなど耐えられなかった。
(でも分かったわ…ロイクはアントワーヌに居るのね……。こうなったら私1人でも探しに行くわ。)
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