復讐のレヴェヨン

猫屋敷 鏡風

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défendu

ルイ・シャノワーヌ

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あれからルイはアメリーに花屋の店主ジョアナ夫妻を紹介してもらい、その伝手で花屋の向かい側にある仕立て屋で働く事になった。元々裁縫が得意なルイにとって仕立て屋を紹介してもらえたのは非常に運が良かった。
仕立て屋『タイヤール・ド・シェロン』の店主、ガブリエル・シェロンと妻のコンスタンス・エメもルイの実力を認め、重宝してくれた。

「ルイさん本当に凄いですね!私、お仕事始めて1年くらいですけどようやく慣れてきたばかりですよ。」

ある日の帰り道、アメリーはルイの服飾の腕を褒めてくれた。

「ありがとう。俺、あれしか取り柄がないからさ。シェロンさん夫妻の役に立てて光栄だよ。」

同じ部屋で過ごし向かいの店で働いていることもあってか、2人はいつしかとても仲良くなっていた。そんな2人の空気を察したのか、店主たちも彼らの休憩時間を揃えてくれている。その事をルイは心の中で密かに感謝していた。

「あのさ…」

ルイが話しかけるとアメリーははい?と返事をした。

「その、そんな畏まった話し方じゃなくて大丈夫だよ。俺、貴族とかじゃないんだし。」

そう。自分はただの市民でありそれ以上でも以下でもない。増してや命の恩人であるアメリーにへりくだって貰うような人間であるはずが無い。
そう考えるルイにアメリーは少し困ったように返答した。

「でも…歳上の方には丁寧な言葉をって孤児院の先生方が……」

アメリーは真面目な子。大人の言うことを素直に聞き入れる純粋な少女だ。それでいて規則を破ってまでルイを部屋に住まわせてくれる優しさの持ち主。そんな子だと知っているから尚更謙って貰うのが申し訳ないと思ってしまう。

「たった1歳しか違わないし大丈夫だよ。それに、孤児院の先生は俺の存在を知らないから。俺は例えるなら君の部屋に住み着いてる鼠みたいなもんだよ。」

言い終えてルイはしまったと後悔した。時々こういった普通の人には意味不明だと思われるような事を言ってしまう癖が幼少期からどうしても直せない。親にも幼馴染にも変わり者扱いされるくらいだ。
アメリーはきっと冷めた顔をしているだろうと思いながら恐る恐る彼女の方を向くと、

「フフフフ…何それ!鼠って…分かったわ。これからも仲良くしてね!ねずみさん!」

アメリーは予想に反してルイのよく分からない例えを笑ってくれた。

「うん。よろしく!家主様!」

そう答えたルイにアメリーはまた笑った。
ルイにとって16年生きてきて人と関わるのが楽しいと感じたのはアメリーが初めてだった。
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