復讐のレヴェヨン

猫屋敷 鏡風

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défendu

伯爵家次女 マリー=アンジュ・セレスト・マクシミリアン

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「エミリエンヌ…あなた、いつになったら後継を産むの?」

「…申し訳ございません…お義母様……。」

シャンデルナゴール伯爵邸を訪れたマリー=アンジュ・セレスト・マクシミリアンがこの家に嫁いだ姉の部屋の前まで来ると、扉の向こうでは姉が義母に責められているようだった。

「あなたをエドワールと結婚させたのは他でも無い…我がシャンデルナゴール家の後継を産ませるためよ。それが出来ないのならあなたに価値などないわ。」

その言葉を聞いてマリー=アンジュは反射的に扉を開けた。

「そんな事ありませんわ!」

「マリー=アンジュ…!?」

突然現れた妹に驚いた姉、エミリエンヌ・クロエ・マクシミリアンは思わず声を漏らした。
しかし彼女の義理の母、ナディア・レベッカ・ド・ジェンヌはいきなり入ってきたマリー=アンジュを睨み付けた。

「マリー=アンジュ、ノックぐらいしたらどうなの?はしたない娘ね。」

ナディアの強い口調にマリー=アンジュは慄いた。しかし、

「し、失礼いたしました…。でも、お姉様を叱らないでください!お姉様はエドワールお義兄様を愛してらっしゃる…ですから、きっといつか後継を授かりますわ!」

ナディアの目を真っ直ぐに見つめ、マリー=アンジュはそう言い放った。

「マリー=アンジュ……」

エミリエンヌは不安そうな表情で妹と義母を交互に見た。

「フッ。エミリエンヌ、あなたの妹は随分と威勢が良いのねぇ……」

義母に呼ばれたエミリエンヌは急いで義母の足元に跪いた。

「申し訳ございませんお義母様!妹には後でしっかりと言い聞かせます…ですからどうか…このご無礼をお許しください……」

「お姉様!」

マリー=アンジュは義母に跪く姉に駆け寄ると再びナディアの目を真っ直ぐに見つめた。

「ナディアおば様、私が威勢が良いのには理由がありますわ。お姉様…いえ、姉がもし後継を授からなかった場合、おば様に生意気な態度を取った償いも込めて…この私、マリー=アンジュがシャンデルナゴール家の後継を産んでみせます!」

マリー=アンジュの予想外の台詞に姉のエミリエンヌは勿論、これまでずっと姉妹を見下し睨み付けていたナディアでさえ驚いた顔をした。
しかし、ナディアは直ぐに元の見下した表情に戻った。

「それはどういうことなの?マリー=アンジュ。あなた、エドワールの愛人にでもなるつもり?」

ナディアは鼻で笑った。

「違いますわ!私はそんなお姉様を裏切るような事はしません!私が言っているのは………………………………」

マリー=アンジュはナディアから片時も視線を逸らすことなく自分の考えを告げた。すると、最初はただ見下した表情で聞いていたナディアがフッと笑った。

「マリー=アンジュ…あなた、面白い娘ねぇ…。良いわ。やってごらんなさい。出来るものなら…ね。」

そう言い残すとナディアは部屋を後にした。

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