呪部屋の生贄

猫屋敷 鏡風

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右上ノエル

冤罪

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「…だぁかぁらぁ♡わたし、今すぐにお金がいるのぉ」

ミエカが使えなくなってから私はあいつの家を去り、詐欺や麻薬の密売で生計を立てている。しかし、年寄り相手の電話は流石に疲れる。

『分かったわ。おばあちゃんが助けてあげる!…それで、どうすればいいの?』

電話越しの知らないババアがようやく折れてくれた。私は可愛こぶってそいつに礼を言うと金の受け渡しについて説明した。

「……それじゃ、よろしくね♡おばあちゃん♡」

そう言って電話を切ると私は大きなため息をついた。

「あーーーー、疲れたー…あのババア理解遅せぇんだよクソが……まぁ金貰えるから良いけどねー。さてと……」

私はなんとなくテレビをつけると、ベッドの下に隠していた大麻を取り出した。

邪魔者ミエカもいねぇし堂々と吸えるわ。」

私が大麻を吸おうとした時、テレビに映ったアナウンサーがある事件のニュースを読んでいた。

『数日前、呪山で見つかった遺体の身元が判明しました。』

そういえばそんな事件あったなぁ…
私がそう思った次の瞬間、

『遺体で見つかった女性は左川ミエカさん22歳……』

アナウンサーは確かにそう言った。

「ミエカ……!?嘘っ……あいつ死んだの!?」

私が驚いていると突然玄関からチャイムの音が聞こえた。
誰だろうと思いながらドアスコープを覗くと立っていたのはまさかの警察官だった。

(やべぇ…クスリのことがバレたかも……)

私は慌てて部屋に戻ると机の上に置いていた大麻とベッドの下に隠してあった覚醒剤、MDMA、コカイン、ヘロイン、LSD、阿片、モルヒネ等を急いでかき集めた。
そしてテレビを消し、居留守を使うことにした。

『やばい家の前にサツが居る』

私は同居人の男にメッセージを送った。
私にクスリを教えてくれた男で名前は亮吾リョウゴ。ミエカの家に居候してた時はこいつの所へ行ってクスリをやっていた。

『分かった。俺しばらく帰らないから居留守使え。』

亮吾にもメッセージで促され私は自分の部屋で息を潜めた。

暫くするとチャイムは鳴らなくなり、警察官達の私を呼ぶ声も無くなった。
そして、ガチャッと鍵の開く音がした。
亮吾が様子を見て帰ってきた!
そう思った私は玄関へ急いだ。

「亮吾~サツの奴らまじで…………」

言いかけて私は言葉を飲み込んだ。
目の前に立っていたのは亮吾ではなく警察官達、そしてこのアパートの管理人だった。

「右上ノエルさんですね?」

警察官の1人に尋ねられ私は頷いた。
クスリの事がバレた…。そう思った次の瞬間、

「左川ミエカさん殺害の容疑で署までご同行願います。」

警察官の想定外の台詞に私は思わずは?と漏らした。

「え…?いや、どういうこと?私がミエカを……殺害?」

訳が分からなくて混乱する私に警察官は話を続けた。

「呪山で発見された左川さんの下半身とその周辺から右上さん、あなたのDNAが検出されました。左川さんの上半身を探す為、今から家の中を調べさせて頂きます。」

そう言って警察官は両側にいた部下らしき警察官達に私の部屋を調べるよう促した。2人の警察官が私を押しのけて部屋の中へ入っていく。

「先輩!机の上に大量の薬物がありました!」

置きっぱなしにしていたクスリは呆気なく見つかった。

「なに!?……右上さん、あなた薬物までやっていたんですね…………。」

私を睨む警察官。その後ろでビクビクと震えながらこっちを見ている管理人。私は腹が立ってきて遂に言葉を発した。

「そうだけど?つかその事で逮捕しに来たんじゃなかったワケ?私はミエカとはもうとっくに疎遠になってるし殺すわけないじゃん!馬鹿なの!?」

私がそう言い放った次の瞬間、

「先輩!ベランダにあったゴミ袋から左川さんのものと思われる遺体が見つかりました!」

警察官の1人が言ったその台詞に私は言葉を失った。私はベランダにゴミ袋など置いていない。ましてやミエカの死体なんか…。
訳が分からなくて玄関に立ち尽くす私に警察官が手錠を掛けた。

「午後2時25分、右上ノエル、薬物所持及び死体遺棄の現行犯で逮捕する。」

ーーー

その後家の中を徹底的に調べられ、私が詐欺をしていたこともあっさりバレた。
クスリの件で共犯の亮吾も捕まったらしい。

私は詐欺とクスリはやったけどミエカを殺してなんかいないしベランダに死体の入ったゴミ袋なんか置いていない。しかし、いくら私が殺人と死体遺棄は冤罪だと訴えても何故か私が犯人である物的証拠が幾つも揃っていた為、信じてもらえなかった。

私はそのまま刑務所に入れられ、今も裁判で無実を訴えている。

ーーー

刑務所に入れられて約1年が経った頃、いくら無実を訴えても有罪にされる事に嫌気がさした私は遂に脱獄した。
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