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左川ミエカ
現在の私
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ミサリの死から10年…
小学6年だった私達は22歳になった。
あの時警察やマスコミ、ミサリの家族はいじめを疑ったが、学校側は私達のいじめを隠蔽した。お陰で私は今普通の会社員として生活している。まるで何も罪を犯していない人のように……。
ーーー
家に帰るとお酒を飲んで酔っ払った状態のノエルが私に罵詈雑言を浴びせてくる。
「おいミエカ!酒足りねぇんだよ!今すぐ買ってこいグズ!」
そう言い放ちノエルは持っていた酒瓶を玄関に佇む私に向かって投げつけた。割れた瓶の破片が私の足元に散らばる。
「ノエル……お酒飲みすぎだよ…それに近所の人から苦情が来るから物投げないで……」
恐る恐る頼む私。しかしノエルの怒りはおさまらなかった。
「うるせぇんだよクソが!苦情言う奴なんかシメてやればいいだけだろ?分かったらさっさと酒買って来いよノロマ!」
「…ごめん……。」
理不尽だと思いながらも私はとりあえずノエルに謝る。
私とノエルは中学も一緒で、中学生になってからも不良グループでいじめをしていた。しかし中2くらいからノエルはいじめ以外の犯罪にも手を染め、非行はどんどん過激になっていき、中3の時に大学生の彼氏とクスリをやって捕まった。ノエルとその彼氏はノエルが大人になったら結婚する約束をしていたらしいけど、ノエルは彼氏に捨てられ私の所へ押し掛けてきた。
「あーあ、使えねぇパシリだなお前。あ、そうだ。今月金足りねぇんだ。寄越せよ?」
お酒に加えてお金まで求めるノエル。私はもう我慢の限界だった。
「ノエル…私もうムリだよ……。いい加減私に寄生しないで働いてよ!私はノエルの家政婦じゃないんだから……」
言いかけた私にノエルは灰皿を投げ付けた。
「私だって働いてんだよ!何も知らねぇクセにグチグチ言うんじゃねぇ!ブチ殺すぞ!?」
ノエルは自分では無職ではないと言い張るが、ノエルが何をして稼いでいるのか私は知らない…知りたくもない。慣れ切ったノエルの暴言を無視し、私は話を切替える。
「後さ……私達が小6の時…いじめてた女の子いたじゃん?」
恐る恐る言葉を発する私にノエルはあぁ?と漏らした。
「ほら…私達が旧校舎に閉じ込めたせいで……飛び降りて亡くなった……」
「あー、居たなそんな奴。」
タバコに火をつけながらノエルは適当な返事をする。
「あの子は…月原さんは……私達のせいで自殺したんだよ……だからさノエル、また今度一緒に謝りに行こう?10年経ったけど…あれはやっぱり自首するべきだよ…」
「ぷっ……ぎゃははははははは!」
いきなり笑い出したノエルに私は思わず震えた。
「何お前いつからそんないい子ちゃんになったワケ?てかさぁ、あの事が公にバレたらお前会社クビになると思うけどそれは良いってこと?」
「そ……それは……」
私はあくまで月原さんの遺族に対する謝罪しか考えていなかった。ノエルの言う通りもし過去のいじめが世間にバレたら私は社会的に抹殺されてしまうだろう。ネットにいじめっ子として晒され何処にも就職出来なくなるかもしれない。
「つーかさぁ、思い出してみなよ?あん時の大人達の言ってた事。校長も教頭も担任も他の先公達もいじめなんか無いつってただろ?お陰であの件は完全に隠蔽できたって訳。それを今更否定するとか…お前、あいつらの努力無駄にすんのか?」
ノエルに詰め寄られ私は黙り込んでしまう。いつもこうだ。ノエルは暴力だけでなく言葉でも私を支配してくる。
「でも……いくら隠したって私達がいじめをした事実は消えないでしょ?だから……」
「あーのーさー!」
ウンザリしたような様子でノエルは私の言葉を遮るといきなり私の頭を掴んだ。
「この世は多数決で弱肉強食なんだよ。強い者や大勢の者がいじめは無いと言った。そしたらそれが全てなんだ。弱者の戯れ言なんざ誰も聞いちゃいないんだよ。」
耳元で囁かれるノエルの傲慢な意見に私は硬直した。ノエルの言っていることは明らかにめちゃくちゃなのに言い返せない私……。
「大体今更「いじめてましたー」なんて暴露してお前、自殺した女の家族に慰謝料払えんの?無理だよなぁ?私だって困るんだよ…お前にはこれからも私の養分になってもらわなきゃいけねぇんだからな?分かったか?分かったらさっさと酒、買ってこいよこのグズ!ぎゃははははははは!」
私の頭を掴んでいた手を乱暴に離し悪魔の様に笑いながら、ノエルは元いた場所に戻っていった。
私は外に飛び出すと宛もなく走った。視界を涙で滲ませながら。
小学6年だった私達は22歳になった。
あの時警察やマスコミ、ミサリの家族はいじめを疑ったが、学校側は私達のいじめを隠蔽した。お陰で私は今普通の会社員として生活している。まるで何も罪を犯していない人のように……。
ーーー
家に帰るとお酒を飲んで酔っ払った状態のノエルが私に罵詈雑言を浴びせてくる。
「おいミエカ!酒足りねぇんだよ!今すぐ買ってこいグズ!」
そう言い放ちノエルは持っていた酒瓶を玄関に佇む私に向かって投げつけた。割れた瓶の破片が私の足元に散らばる。
「ノエル……お酒飲みすぎだよ…それに近所の人から苦情が来るから物投げないで……」
恐る恐る頼む私。しかしノエルの怒りはおさまらなかった。
「うるせぇんだよクソが!苦情言う奴なんかシメてやればいいだけだろ?分かったらさっさと酒買って来いよノロマ!」
「…ごめん……。」
理不尽だと思いながらも私はとりあえずノエルに謝る。
私とノエルは中学も一緒で、中学生になってからも不良グループでいじめをしていた。しかし中2くらいからノエルはいじめ以外の犯罪にも手を染め、非行はどんどん過激になっていき、中3の時に大学生の彼氏とクスリをやって捕まった。ノエルとその彼氏はノエルが大人になったら結婚する約束をしていたらしいけど、ノエルは彼氏に捨てられ私の所へ押し掛けてきた。
「あーあ、使えねぇパシリだなお前。あ、そうだ。今月金足りねぇんだ。寄越せよ?」
お酒に加えてお金まで求めるノエル。私はもう我慢の限界だった。
「ノエル…私もうムリだよ……。いい加減私に寄生しないで働いてよ!私はノエルの家政婦じゃないんだから……」
言いかけた私にノエルは灰皿を投げ付けた。
「私だって働いてんだよ!何も知らねぇクセにグチグチ言うんじゃねぇ!ブチ殺すぞ!?」
ノエルは自分では無職ではないと言い張るが、ノエルが何をして稼いでいるのか私は知らない…知りたくもない。慣れ切ったノエルの暴言を無視し、私は話を切替える。
「後さ……私達が小6の時…いじめてた女の子いたじゃん?」
恐る恐る言葉を発する私にノエルはあぁ?と漏らした。
「ほら…私達が旧校舎に閉じ込めたせいで……飛び降りて亡くなった……」
「あー、居たなそんな奴。」
タバコに火をつけながらノエルは適当な返事をする。
「あの子は…月原さんは……私達のせいで自殺したんだよ……だからさノエル、また今度一緒に謝りに行こう?10年経ったけど…あれはやっぱり自首するべきだよ…」
「ぷっ……ぎゃははははははは!」
いきなり笑い出したノエルに私は思わず震えた。
「何お前いつからそんないい子ちゃんになったワケ?てかさぁ、あの事が公にバレたらお前会社クビになると思うけどそれは良いってこと?」
「そ……それは……」
私はあくまで月原さんの遺族に対する謝罪しか考えていなかった。ノエルの言う通りもし過去のいじめが世間にバレたら私は社会的に抹殺されてしまうだろう。ネットにいじめっ子として晒され何処にも就職出来なくなるかもしれない。
「つーかさぁ、思い出してみなよ?あん時の大人達の言ってた事。校長も教頭も担任も他の先公達もいじめなんか無いつってただろ?お陰であの件は完全に隠蔽できたって訳。それを今更否定するとか…お前、あいつらの努力無駄にすんのか?」
ノエルに詰め寄られ私は黙り込んでしまう。いつもこうだ。ノエルは暴力だけでなく言葉でも私を支配してくる。
「でも……いくら隠したって私達がいじめをした事実は消えないでしょ?だから……」
「あーのーさー!」
ウンザリしたような様子でノエルは私の言葉を遮るといきなり私の頭を掴んだ。
「この世は多数決で弱肉強食なんだよ。強い者や大勢の者がいじめは無いと言った。そしたらそれが全てなんだ。弱者の戯れ言なんざ誰も聞いちゃいないんだよ。」
耳元で囁かれるノエルの傲慢な意見に私は硬直した。ノエルの言っていることは明らかにめちゃくちゃなのに言い返せない私……。
「大体今更「いじめてましたー」なんて暴露してお前、自殺した女の家族に慰謝料払えんの?無理だよなぁ?私だって困るんだよ…お前にはこれからも私の養分になってもらわなきゃいけねぇんだからな?分かったか?分かったらさっさと酒、買ってこいよこのグズ!ぎゃははははははは!」
私の頭を掴んでいた手を乱暴に離し悪魔の様に笑いながら、ノエルは元いた場所に戻っていった。
私は外に飛び出すと宛もなく走った。視界を涙で滲ませながら。
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