君はパクチー

試合

辰子の試合

「ただいまより女子の部を開始いたします。」

場内アナウンスが聞こえた。

「辰子出番じゃん！」

「がんばれ辰子！」

優とユリカは、まだ姿も見えていない辰子に声援を送った。

「辰子がんばれ、母さんも見てるぞ。」

隣で祈るように心からの応援をする辰子の父ちゃんの声も聞こえてきた。

辰子の父ちゃん、スーツ着てきてるもんな。親にとって子どもの試合って、スーツで祈るように応援するもんなんだな。入学式とか卒業式とかと同じレベルで気合の入るイベントなんだな。

徹也は彼女探しの口実にここにいる自分のことが少し恥ずかしくなった。

「辰子、出て来た！」

ユリが言った。

「辰子ー！辰子ー！」

エリカは名前を呼びながら手をふっている。

辰子は集中してるらしく、硬い顔でこちらには気がついていない。いつも笑っている印象の辰子の真面目な顔は、こっちまで緊張が伝染してくる。

辰子はパンパンと自分の頬を叩いて気合を入れている。

辰子は女の子にしてはデカイと思っていたが、辰子の対戦相手で出て来た奴もデカイ。

そりゃそうか。柔道は体重別なんだから、同じレベルの奴と当たる訳だ。

辰子の対戦相手は高３だった。

ということは経験値は相手のが上か。

辰子頑張れ。ようやく徹也も本気で応援する気持ちになった。