不思議なことが起きても不思議じゃない日

舞浜あみ

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ざる蕎麦といなり寿司

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何を食べようか。どこで食べようか。
そう考えながら祖母と歩いていたそのときだった。

ふいに雑居ビルから出てきた紳士は雑踏にすぐ紛れてしまい一瞬しか見られなかったが、祖父の生き写しのようだった。

祖母も気がついただろうか?

祖母は今日、まるで祖父とデートでもするかのようにおめかしをしていた。

「おばあちゃん、今日胸に付けている赤いブローチ素敵だね。」

「ありがとう。この柘榴石ざくろいしのブローチ、きよしさんから結婚記念日にプレゼントでいただいた物なの。何十年も前にね。うふふ。」

祖母は嬉しそうに笑った。

何十年も前の物に見えないのは、それだけ祖母が大事にしていたからだろう。

「柘榴石は1月の誕生石だそうよ。だから、きよしさんが初めてくれたプレゼントも柘榴石が付いていたのよ。」

「そうだったんだね。おばあちゃんの誕生日1月15日だもんね。初めてのプレゼントは何をもらったの?」

「柘榴石のかんざしよ。19才の時に。晴れ着を着るときはこれをつけてほしいって言ってね。プレゼントしてくれたの。若い頃から素敵な人だったのよ、きよしさん、うふふ。柘榴石の付いたの2つのアクセサリーはおばあちゃんの宝物。」

そう教えてくれた。
祖母の話は、いつも私の生きる道しるべとなる。雑な占い師に話すよりも祖母と話すほうがずっと有意義だと感じる。

そうしているうちに、祖母とも何度か来たことのある和食屋さんについた。

二人でお店の中に入った。店内には音楽が流れていた。最近の曲ではないみたいで彩衣にはわからなかった。

「何ていう曲かな?」

「あら、懐かしい曲ね。たしかザ・タイガース 白夜の騎士っていうよ。」

席に着いて、メニューを広げ、ざる蕎麦といなり寿司のセットをニつを頼んだ。

頼んだ物が届くのを待つ間、彩衣は柘榴石が気になりスマホで調べてみた。

「おばあちゃん、柘榴石はガーネットっていうんだって。実りの象徴、絆の証、情熱の石、努力が実る助けをしてくれる、恋愛を長続きさせてくれる、ポジティブなパワーを与えてくれる。1月の誕生石としても人気。ガーネットは人生に豊かな実りをもたらす、愛情や絆の石みたいだよ。おばあちゃんとおじいちゃんにピッタリだね。」

「そうなのね。調べてくれてありがとう。嬉しいわ。」

そう言いながら、祖母はブローチのついた胸に優しく手を添えた。

「せっかくだから、おじいちゃんの話を彩衣ちゃんにもっとしてあげましょうね。きよしさんの座右の銘は青雲之志なのよ。笑わせたりいたずらも好きな人だけど、根はとても真面目な人なのよ。」

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