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七月八日

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七月八日。

いそいそとお茶とお菓子の準備をととのえた。
紅茶と祖母の好きなザラメのお菓子だ。

今日はたくさんおばあちゃんから話を聞かせてもらうんだ。まるで恋話こいばなをするのがなによりも楽しい女学生のような雰囲気で浮足立っていた。

財津家では祖母の律と孫の彩衣あいがテーブルを挟んでにこにこと向かい合っている。

「それで、おばあちゃん昨夜はどんなことがあったの?どんな話をしたの?教えて教えて!」

彩衣は待ちきれずに祖母を急かしたが、祖母はいつも通りゆったりとしていた。

「彩衣ちゃん、昨日は綺麗な瓶のお酒をどうもありがとうね。うさぎさん柄だったわね。十五夜のうさぎさんはお餅つきをしているけど、七夕のうさぎさんは何をしてるのでしょうね。やっぱりお餅つきかしらね。うふふ。」

彩衣の質問とは全然ちがう返事がかえってきたが、祖母もとても機嫌が良さそうだ。

「お酒を少し飲んで窓をあけてお空を見ながら待っていたら、ちゃんと今年も来てくれたわよ。きよしさん。」

「おばあちゃん、よかったね!」
と彩衣は言った。おばあちゃんがきよしさんと言うときはきよしさん♡と言っているように聞こえる。

「お空を見て待っているのに、気がつくと隣に座っているのよ。不思議ね。」

「そうなんだ、不思議!」

「今年のきよしさんはね、なんとね、とてもびっくりする姿だったのよ。うふふ。」

「何なに?どんな姿だったの?教えて、おばあちゃん。」

「あのね、、、うふふ。」

「なんとね、子供の姿だったのよ。びっくりでしょう。」
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