3 / 7
1章
話を聞くなんて、言わなきゃ良かった
しおりを挟む
「ちょっ、何するんですか!?」
「助けると思って、話を聞いてくれ」
「はぁ?」
「マジで困ってんだ。芝田をアテにして来たのに居ないとか……」
「そう、言われましても」
「頼む! とりあえず部屋に入れてくれ!」
「いや、それはちょっと……」
このご時世、いくらなんでも、見ず知らずの人を部屋に入れるなんてことは出来ない。
「頼むよ……頼れる人、いないんだ」
だけど、明らかに怪しい人ではあるけど、綺麗な瞳で見つめられて懇願されると何だか物凄く断りにくい。
(いや、でもさすがに部屋には入れられないよね……)
例えどんなに良い人そうでも、簡単に人を信用するなんて出来ない。平気で騙す人だって沢山いるし、犯罪を犯す人だっているのだから。
だけど、ここで彼女を見捨てるというのも可哀想というか、なんていうか。甘いかな、部屋へ入れずせめて話を聞くだけならいいかと思い直した私は、
「あの、話を聞くくらいなら……」
そう言葉を零すと、
「本当か!? 助かる! お前良い奴だな」
ついさっきまでの表情とは打って変わって、子供のように無邪気な笑顔を見せてくれた。
「いや、別に、そんな……」
“いい奴”なんて言われて、少し照れ臭くなった私をよそに彼女は、
「じゃあ早速、上がらせてもらうな」
何を勘違いしたのか私の横を通って玄関に入り、靴を脱ぎ始めた。
「って! ちょっと待って! 話を聞くとは言ったけど、部屋に入れるとは言ってない!」
「はぁ? 外で話せって言うのかよ?」
「当たり前です!」
「それはまずい。頼むから中で話をさせてくれ」
「どうしてですか?」
「何でもだ」
「何ですかそれ? 答えになってません!」
そんな互いに一歩も譲らない言い合いが暫く続き、埒が明かない状態に陥ってしまう。
(もう、一体何なのよ? やっぱり関わらなきゃ良かった!)
いつまでも玄関先で言い合いなんてしていては隣近所に迷惑がかかるし、何より、だんだんこのやり取りが面倒臭くなってくる。
(芝田さんの知り合いみたいだし、女の人だし、とりあえず話だけ聞いて、さっさと帰ってもらうしかないか……)
色々悩んだ末、不安はあるものの折れたのは私の方だった。
「……分かりました、とりあえず上がって下さい。話は部屋で伺いますから」
「そうか? いやぁ、悪いな」
部屋へ上がるよう促すと、待ってましたと言わんばかりに満足そうな笑みを浮かべ、言葉とは裏腹に悪びれる様子もなく部屋へ入って行く。
「あなた、名前は?」
「遠野 尚」
何のもてなしもしないのは流石に失礼かと思い、コーヒーを淹れながら彼女の素性を聞いてみる。
「尚さんね。お住いは?」
「ん? まぁ……ここから少し離れたところ」
「……歳は?」
「二十二」
住まいに関しては何だか少し曖昧で怪しげだけど、そこはまぁ置いておくとしよう。年齢を聞くと、どうやら私より二つ年上ということが分かった。
彼女――尚さんはまるで自分の家かのように、リビングのソファーに座って寛ぎながら、私の質問に答えていく。
「助けると思って、話を聞いてくれ」
「はぁ?」
「マジで困ってんだ。芝田をアテにして来たのに居ないとか……」
「そう、言われましても」
「頼む! とりあえず部屋に入れてくれ!」
「いや、それはちょっと……」
このご時世、いくらなんでも、見ず知らずの人を部屋に入れるなんてことは出来ない。
「頼むよ……頼れる人、いないんだ」
だけど、明らかに怪しい人ではあるけど、綺麗な瞳で見つめられて懇願されると何だか物凄く断りにくい。
(いや、でもさすがに部屋には入れられないよね……)
例えどんなに良い人そうでも、簡単に人を信用するなんて出来ない。平気で騙す人だって沢山いるし、犯罪を犯す人だっているのだから。
だけど、ここで彼女を見捨てるというのも可哀想というか、なんていうか。甘いかな、部屋へ入れずせめて話を聞くだけならいいかと思い直した私は、
「あの、話を聞くくらいなら……」
そう言葉を零すと、
「本当か!? 助かる! お前良い奴だな」
ついさっきまでの表情とは打って変わって、子供のように無邪気な笑顔を見せてくれた。
「いや、別に、そんな……」
“いい奴”なんて言われて、少し照れ臭くなった私をよそに彼女は、
「じゃあ早速、上がらせてもらうな」
何を勘違いしたのか私の横を通って玄関に入り、靴を脱ぎ始めた。
「って! ちょっと待って! 話を聞くとは言ったけど、部屋に入れるとは言ってない!」
「はぁ? 外で話せって言うのかよ?」
「当たり前です!」
「それはまずい。頼むから中で話をさせてくれ」
「どうしてですか?」
「何でもだ」
「何ですかそれ? 答えになってません!」
そんな互いに一歩も譲らない言い合いが暫く続き、埒が明かない状態に陥ってしまう。
(もう、一体何なのよ? やっぱり関わらなきゃ良かった!)
いつまでも玄関先で言い合いなんてしていては隣近所に迷惑がかかるし、何より、だんだんこのやり取りが面倒臭くなってくる。
(芝田さんの知り合いみたいだし、女の人だし、とりあえず話だけ聞いて、さっさと帰ってもらうしかないか……)
色々悩んだ末、不安はあるものの折れたのは私の方だった。
「……分かりました、とりあえず上がって下さい。話は部屋で伺いますから」
「そうか? いやぁ、悪いな」
部屋へ上がるよう促すと、待ってましたと言わんばかりに満足そうな笑みを浮かべ、言葉とは裏腹に悪びれる様子もなく部屋へ入って行く。
「あなた、名前は?」
「遠野 尚」
何のもてなしもしないのは流石に失礼かと思い、コーヒーを淹れながら彼女の素性を聞いてみる。
「尚さんね。お住いは?」
「ん? まぁ……ここから少し離れたところ」
「……歳は?」
「二十二」
住まいに関しては何だか少し曖昧で怪しげだけど、そこはまぁ置いておくとしよう。年齢を聞くと、どうやら私より二つ年上ということが分かった。
彼女――尚さんはまるで自分の家かのように、リビングのソファーに座って寛ぎながら、私の質問に答えていく。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
先生と生徒のいかがわしいシリーズ
夏緒
恋愛
①先生とイケナイ授業、する?
保健室の先生と男子生徒です。
②生徒会長さまの思惑
生徒会長と新任女性教師です。
③悪い先生だな、あんた
体育教師と男子生徒です。これはBLです。
どんな理由があろうが学校でいかがわしいことをしてはいけませんよ〜!
これ全部、やったらダメですからねっ!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる