54 / 54
53 王族と後継
しおりを挟む
王子が産まれてから数年の時が経った。
私は相変わらず自分のしたいようにしている。
すくすくと育つ王子も今年で9歳となった。
「お母様。僕はこの国が好きで御座います」
「そう? 何処が好きなの?」
「はい。この豊かな自然がとても好きです」
「そうなの。それは良かったわ」
王子はそう言って私の顔を見て笑った。
隣には今年で13歳になるリリアンが傍に居た。
リリアンに今新たな話が持ち上がっているのだ。
それは……。
「リリアン姫にも今年で13になるな。そろそろ伴侶を探さねばな」
「まだ早くはないのでしょうか。陛下」
「そう、早くもないだろう。新たな話も出て来ておる。其方も知っておる隣国の王子だ。同盟国として姫には働いてもらわねばならない。それくらい分かるだろう」
「はい……」
そう、リリアンには婚約者の話が出てきているのだ。
私にはまだ早い話だと思っているのだが、本人は既に腹を括っている様子。
その話をしても顔色変えず微笑んで受け入れていた。
「リリアン。良いのですか? 私にはまだ早いと思っているのだけれど」
「お母様。大丈夫です。わたくしにはわたくしの役割があります。それは仕方のない事。王族として生まれたからには」
そう、王族として生まれたからには、だ。
私は侍女としてこのお城で暮らしていた時代があった。
王家とはどのような存在なのかやっと理解出来たところだったが、姫は既に産まれてから王族として育てられている。
私よりも理解があるのだと思うとやりきれない気持ちがあった。
「父上様。わたくしは何時お嫁に行くのですか?」
「まだまだ先の事だ。そんなに焦ることはないぞ、姫」
「わたくしは何時でも問題御座いません。覚悟はできております」
「そうか。その気持ちだけでも大切にするのだぞ」
「はい。お父様」
聞き分けのいい娘だと私は思った。
当然グラン王子にも色々と話は聞いていた。
将来の嫁候補として名高い名家の貴族の令嬢の話が……。
王族とはこうして繁栄し、守り続けていくのだとその時深く思った。
私は相変わらず自分のしたいようにしている。
すくすくと育つ王子も今年で9歳となった。
「お母様。僕はこの国が好きで御座います」
「そう? 何処が好きなの?」
「はい。この豊かな自然がとても好きです」
「そうなの。それは良かったわ」
王子はそう言って私の顔を見て笑った。
隣には今年で13歳になるリリアンが傍に居た。
リリアンに今新たな話が持ち上がっているのだ。
それは……。
「リリアン姫にも今年で13になるな。そろそろ伴侶を探さねばな」
「まだ早くはないのでしょうか。陛下」
「そう、早くもないだろう。新たな話も出て来ておる。其方も知っておる隣国の王子だ。同盟国として姫には働いてもらわねばならない。それくらい分かるだろう」
「はい……」
そう、リリアンには婚約者の話が出てきているのだ。
私にはまだ早い話だと思っているのだが、本人は既に腹を括っている様子。
その話をしても顔色変えず微笑んで受け入れていた。
「リリアン。良いのですか? 私にはまだ早いと思っているのだけれど」
「お母様。大丈夫です。わたくしにはわたくしの役割があります。それは仕方のない事。王族として生まれたからには」
そう、王族として生まれたからには、だ。
私は侍女としてこのお城で暮らしていた時代があった。
王家とはどのような存在なのかやっと理解出来たところだったが、姫は既に産まれてから王族として育てられている。
私よりも理解があるのだと思うとやりきれない気持ちがあった。
「父上様。わたくしは何時お嫁に行くのですか?」
「まだまだ先の事だ。そんなに焦ることはないぞ、姫」
「わたくしは何時でも問題御座いません。覚悟はできております」
「そうか。その気持ちだけでも大切にするのだぞ」
「はい。お父様」
聞き分けのいい娘だと私は思った。
当然グラン王子にも色々と話は聞いていた。
将来の嫁候補として名高い名家の貴族の令嬢の話が……。
王族とはこうして繁栄し、守り続けていくのだとその時深く思った。
32
お気に入りに追加
1,040
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(33件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
こんな国王一家があったら、すぐ崩壊するか他国に攻め落とされるのでは?
王も王妃は特におバカだし、マシな登場人物がいなくて、ある意味凄く楽しく読ませて頂きました。
気がついたら完結しててびっくりしました。
元婚約者とのあれこれを加筆するというのはなくなったのでしょうか?
ええっと、結局アルバンは自分は王族の義務を放棄して決まった婚約者を捨てて
王族に向いてない女を無理矢理妻としたけど、
自分は棚上げにして娘は王族として政略結婚するのが当たり前と。
そしてそのうち 息子には名家の令嬢が嫁入りして
あっという間に王家は嫁と嫁の実家に掌握され、
母はよくて日陰の身、悪ければ厄介払いに消されるというバッドエンドへ。
王家はそうして繁栄し、クズ男はクズ男のまま、バカな女もバカのまま、という物語なのかな。
面白い!
何が面白いのかわからない!
しかし、読み続けてしまいました。
この話、大好きです。
のらりくらりとした妃が「復讐か?」
と期待してみてもやらない(笑)
立派な妃になるのかと思いきや、ならない。(笑)
どんどんと子供達も大きくなってきて、国王に大切にされてて、夫婦で年老いていてます。(笑)
素敵なカップルです。