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50 立場と役割
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王妃となり初めての出産に向けて準備が始まった。
リリアンは私の事を心配しているかのような顔をしながら私に抱き着いてくる。
時折耳を当ててお腹の子の鼓動を感じている様子。
その微笑ましい姿をアルバン国王が見つめていた。
もうすぐ生まれる子。
周りで私の世話をする侍女たちが慌てている様子も伺える。
「ラスティ。そんな忙しくしなくても良いのよ」
「王妃様、そういうことは言わないでください。私たちは万全を期してご出産をお迎えいたします」
「有難う、ラスティ」
ラスティに怒られてしまった。
パーティ―以降、私は王妃としてどう自分が振舞えば良いのかをずっと考えていた。
しかし侍女だった時から自分を全面に出して何かを発言したり、行動したりすることを苦手としていた私には直ぐにどうこうすることは出来ない。
そのことをアルバン国王に話したことがあった。
「私は、侍女だった時から、それまででも目立つことをしないようにしてきました。私に王妃としての立場が務まるとは今も思っていません。どうすれば良いのでしょう」
「其方は変わらなくても良い。貴族達が何か言ってきたのか?」
「いえ……」
「もし貴族達や王族達が其方に何かを言ったとしたら私が其方を守る。何も心配する必要はない。今其方にお願いしたいことはその赤子を元気な赤子を産んでほしい。ただそれだけだ。それ以外の事を其方に求めることはない」
アルバン国王はそう言って私を優しく抱きしめた。
でも私の中では納得していなかった。
若し、子供が産まれれば、その後はどうすればいいのか。
貴族の令嬢達に嫌味を言われながら日々を過ごすことなんて絶対嫌。
それに王妃の役割って何?
そんな疑問をぶつけてみたくなった。
「私が子を産んで、その後私はどうすればいいのです?」
私の意外な質問に国王は少し困った表情をした。
その後ゆっくりと離れて頭を撫でながら話をした。
「その後は私を助けておくれ。私は神ではない。間違いや過ちを犯すことがあるかもしれない。そんな時其方が傍に居て私を助けて欲しい。王妃としてではなく、一人の妻として。王妃の拘りは捨てればよいのだ。其方にそこまでを望んでいるわけではない」
それって、私って……。
国王にそう言われて私はショックだった。
それから数日間は彼と話すことはなかった。
話しても仕方がない、そう思ったから。
結局王妃として今後どうすればいいのかは分からないまま。
「そろそろ…」
お腹の子供が出たがっている。
私はベッドの上に仰向けになってお腹を触る。
陣痛が始まったのだ……。
激痛が走る中、侍女たちと医師たちが忙しく動き出した。
リリアンは私の事を心配しているかのような顔をしながら私に抱き着いてくる。
時折耳を当ててお腹の子の鼓動を感じている様子。
その微笑ましい姿をアルバン国王が見つめていた。
もうすぐ生まれる子。
周りで私の世話をする侍女たちが慌てている様子も伺える。
「ラスティ。そんな忙しくしなくても良いのよ」
「王妃様、そういうことは言わないでください。私たちは万全を期してご出産をお迎えいたします」
「有難う、ラスティ」
ラスティに怒られてしまった。
パーティ―以降、私は王妃としてどう自分が振舞えば良いのかをずっと考えていた。
しかし侍女だった時から自分を全面に出して何かを発言したり、行動したりすることを苦手としていた私には直ぐにどうこうすることは出来ない。
そのことをアルバン国王に話したことがあった。
「私は、侍女だった時から、それまででも目立つことをしないようにしてきました。私に王妃としての立場が務まるとは今も思っていません。どうすれば良いのでしょう」
「其方は変わらなくても良い。貴族達が何か言ってきたのか?」
「いえ……」
「もし貴族達や王族達が其方に何かを言ったとしたら私が其方を守る。何も心配する必要はない。今其方にお願いしたいことはその赤子を元気な赤子を産んでほしい。ただそれだけだ。それ以外の事を其方に求めることはない」
アルバン国王はそう言って私を優しく抱きしめた。
でも私の中では納得していなかった。
若し、子供が産まれれば、その後はどうすればいいのか。
貴族の令嬢達に嫌味を言われながら日々を過ごすことなんて絶対嫌。
それに王妃の役割って何?
そんな疑問をぶつけてみたくなった。
「私が子を産んで、その後私はどうすればいいのです?」
私の意外な質問に国王は少し困った表情をした。
その後ゆっくりと離れて頭を撫でながら話をした。
「その後は私を助けておくれ。私は神ではない。間違いや過ちを犯すことがあるかもしれない。そんな時其方が傍に居て私を助けて欲しい。王妃としてではなく、一人の妻として。王妃の拘りは捨てればよいのだ。其方にそこまでを望んでいるわけではない」
それって、私って……。
国王にそう言われて私はショックだった。
それから数日間は彼と話すことはなかった。
話しても仕方がない、そう思ったから。
結局王妃として今後どうすればいいのかは分からないまま。
「そろそろ…」
お腹の子供が出たがっている。
私はベッドの上に仰向けになってお腹を触る。
陣痛が始まったのだ……。
激痛が走る中、侍女たちと医師たちが忙しく動き出した。
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