38 / 54
38 閑話 侍女時代の私の日々
しおりを挟む
少し前の話をしたいと思う。
リリアンを寝かせつけながら私自身の事を思い出そうとしていた。
私が侍女としてお城をで仕事をするようなったのは15歳の頃だった。
日々先輩方から丁寧な指導を受け、頑張って仕事を覚えようとしていた。
その時初めて王太子に会ったことがあった。
王太子は庭で貴族の令嬢達3人と一緒にお茶を愉しんでいた。
私には関係のない世界。
そう思っていたのに……。
年月は変わり侍女としての仕事も覚えてやっと一人前になったある日の事。
いつもと変わらず仕事をしていると後ろから声を掛けられた。
それがあのミレンダ令嬢だったのだ。
「あの、このお部屋凄くまだ埃が沢山残っているご様子ですわ。ちゃんと手入れをしているのかしら」
そう言われてムッとこない人はいないんだじゃないだろうか。
当然私はムッとしてしまった。
そして睨みつけ一礼した後部屋の掃除を始めた。
侍女に睨まれてあちらもムッとしたのだろう、また私に話しかけてきた。
「まぁ、ちゃんと仕事をしてくださいな。わたくしにそういう視線を出す前に……ねぇ、皆様」
「「そうですわね」」
取り巻き達も口々にそう言いって部屋を後にしていった。
悔しさと惨めさを感じた瞬間だった。
それから、私が侍女から王太子の妃になるなんて思いもよらなかった。
いまじゃ、立場は私の方が上。
でも、私は決して権力を振るわない。
そんなことをせずともちゃんとわかってくれる人が居るのだから。
「あの時は本当に楽しい日々だったわ……」
私は侍女時代の事を思い出しながらそう口にした。
舞踏会から戻って来た王太子が部屋に入って来た。
私がリリアンを寝かしつけているのを見て私の傍に腰かける。
「リリアン姫は寝たのか?」
「今寝かせつけている所です」
「左様か。今日は、本当に疲れたな……」
「私にはああいう社交界等、不向きで……」
「これから慣れればよい。それに、其方が居なくてはな……」
「アルバン様……」
「マリア……」
子供をまだ寝かしつけている時だったのだが、二人はゆっくりと顔を近づけ、口づけを交わした。
やっぱり、というか、なんというか、私はなんだかその口づけでほっとしたのだ。
理由が分からない。
けれど、落ち着く感じがした。
「それでは……世継ぎを……っ」
「今日はダメですっ。今度にして下さいまし」
「そうか……残念だ」
こういうところが無かったら本当にいい人だと思うのだけれど。
全く空気を読めない王太子だった。
リリアンを寝かせつけながら私自身の事を思い出そうとしていた。
私が侍女としてお城をで仕事をするようなったのは15歳の頃だった。
日々先輩方から丁寧な指導を受け、頑張って仕事を覚えようとしていた。
その時初めて王太子に会ったことがあった。
王太子は庭で貴族の令嬢達3人と一緒にお茶を愉しんでいた。
私には関係のない世界。
そう思っていたのに……。
年月は変わり侍女としての仕事も覚えてやっと一人前になったある日の事。
いつもと変わらず仕事をしていると後ろから声を掛けられた。
それがあのミレンダ令嬢だったのだ。
「あの、このお部屋凄くまだ埃が沢山残っているご様子ですわ。ちゃんと手入れをしているのかしら」
そう言われてムッとこない人はいないんだじゃないだろうか。
当然私はムッとしてしまった。
そして睨みつけ一礼した後部屋の掃除を始めた。
侍女に睨まれてあちらもムッとしたのだろう、また私に話しかけてきた。
「まぁ、ちゃんと仕事をしてくださいな。わたくしにそういう視線を出す前に……ねぇ、皆様」
「「そうですわね」」
取り巻き達も口々にそう言いって部屋を後にしていった。
悔しさと惨めさを感じた瞬間だった。
それから、私が侍女から王太子の妃になるなんて思いもよらなかった。
いまじゃ、立場は私の方が上。
でも、私は決して権力を振るわない。
そんなことをせずともちゃんとわかってくれる人が居るのだから。
「あの時は本当に楽しい日々だったわ……」
私は侍女時代の事を思い出しながらそう口にした。
舞踏会から戻って来た王太子が部屋に入って来た。
私がリリアンを寝かしつけているのを見て私の傍に腰かける。
「リリアン姫は寝たのか?」
「今寝かせつけている所です」
「左様か。今日は、本当に疲れたな……」
「私にはああいう社交界等、不向きで……」
「これから慣れればよい。それに、其方が居なくてはな……」
「アルバン様……」
「マリア……」
子供をまだ寝かしつけている時だったのだが、二人はゆっくりと顔を近づけ、口づけを交わした。
やっぱり、というか、なんというか、私はなんだかその口づけでほっとしたのだ。
理由が分からない。
けれど、落ち着く感じがした。
「それでは……世継ぎを……っ」
「今日はダメですっ。今度にして下さいまし」
「そうか……残念だ」
こういうところが無かったら本当にいい人だと思うのだけれど。
全く空気を読めない王太子だった。
1
お気に入りに追加
1,041
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。



娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる