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38 閑話 侍女時代の私の日々
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少し前の話をしたいと思う。
リリアンを寝かせつけながら私自身の事を思い出そうとしていた。
私が侍女としてお城をで仕事をするようなったのは15歳の頃だった。
日々先輩方から丁寧な指導を受け、頑張って仕事を覚えようとしていた。
その時初めて王太子に会ったことがあった。
王太子は庭で貴族の令嬢達3人と一緒にお茶を愉しんでいた。
私には関係のない世界。
そう思っていたのに……。
年月は変わり侍女としての仕事も覚えてやっと一人前になったある日の事。
いつもと変わらず仕事をしていると後ろから声を掛けられた。
それがあのミレンダ令嬢だったのだ。
「あの、このお部屋凄くまだ埃が沢山残っているご様子ですわ。ちゃんと手入れをしているのかしら」
そう言われてムッとこない人はいないんだじゃないだろうか。
当然私はムッとしてしまった。
そして睨みつけ一礼した後部屋の掃除を始めた。
侍女に睨まれてあちらもムッとしたのだろう、また私に話しかけてきた。
「まぁ、ちゃんと仕事をしてくださいな。わたくしにそういう視線を出す前に……ねぇ、皆様」
「「そうですわね」」
取り巻き達も口々にそう言いって部屋を後にしていった。
悔しさと惨めさを感じた瞬間だった。
それから、私が侍女から王太子の妃になるなんて思いもよらなかった。
いまじゃ、立場は私の方が上。
でも、私は決して権力を振るわない。
そんなことをせずともちゃんとわかってくれる人が居るのだから。
「あの時は本当に楽しい日々だったわ……」
私は侍女時代の事を思い出しながらそう口にした。
舞踏会から戻って来た王太子が部屋に入って来た。
私がリリアンを寝かしつけているのを見て私の傍に腰かける。
「リリアン姫は寝たのか?」
「今寝かせつけている所です」
「左様か。今日は、本当に疲れたな……」
「私にはああいう社交界等、不向きで……」
「これから慣れればよい。それに、其方が居なくてはな……」
「アルバン様……」
「マリア……」
子供をまだ寝かしつけている時だったのだが、二人はゆっくりと顔を近づけ、口づけを交わした。
やっぱり、というか、なんというか、私はなんだかその口づけでほっとしたのだ。
理由が分からない。
けれど、落ち着く感じがした。
「それでは……世継ぎを……っ」
「今日はダメですっ。今度にして下さいまし」
「そうか……残念だ」
こういうところが無かったら本当にいい人だと思うのだけれど。
全く空気を読めない王太子だった。
リリアンを寝かせつけながら私自身の事を思い出そうとしていた。
私が侍女としてお城をで仕事をするようなったのは15歳の頃だった。
日々先輩方から丁寧な指導を受け、頑張って仕事を覚えようとしていた。
その時初めて王太子に会ったことがあった。
王太子は庭で貴族の令嬢達3人と一緒にお茶を愉しんでいた。
私には関係のない世界。
そう思っていたのに……。
年月は変わり侍女としての仕事も覚えてやっと一人前になったある日の事。
いつもと変わらず仕事をしていると後ろから声を掛けられた。
それがあのミレンダ令嬢だったのだ。
「あの、このお部屋凄くまだ埃が沢山残っているご様子ですわ。ちゃんと手入れをしているのかしら」
そう言われてムッとこない人はいないんだじゃないだろうか。
当然私はムッとしてしまった。
そして睨みつけ一礼した後部屋の掃除を始めた。
侍女に睨まれてあちらもムッとしたのだろう、また私に話しかけてきた。
「まぁ、ちゃんと仕事をしてくださいな。わたくしにそういう視線を出す前に……ねぇ、皆様」
「「そうですわね」」
取り巻き達も口々にそう言いって部屋を後にしていった。
悔しさと惨めさを感じた瞬間だった。
それから、私が侍女から王太子の妃になるなんて思いもよらなかった。
いまじゃ、立場は私の方が上。
でも、私は決して権力を振るわない。
そんなことをせずともちゃんとわかってくれる人が居るのだから。
「あの時は本当に楽しい日々だったわ……」
私は侍女時代の事を思い出しながらそう口にした。
舞踏会から戻って来た王太子が部屋に入って来た。
私がリリアンを寝かしつけているのを見て私の傍に腰かける。
「リリアン姫は寝たのか?」
「今寝かせつけている所です」
「左様か。今日は、本当に疲れたな……」
「私にはああいう社交界等、不向きで……」
「これから慣れればよい。それに、其方が居なくてはな……」
「アルバン様……」
「マリア……」
子供をまだ寝かしつけている時だったのだが、二人はゆっくりと顔を近づけ、口づけを交わした。
やっぱり、というか、なんというか、私はなんだかその口づけでほっとしたのだ。
理由が分からない。
けれど、落ち着く感じがした。
「それでは……世継ぎを……っ」
「今日はダメですっ。今度にして下さいまし」
「そうか……残念だ」
こういうところが無かったら本当にいい人だと思うのだけれど。
全く空気を読めない王太子だった。
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