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25 国王様が倒れられました。

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突然だったのですが、国王様が倒れられた。
胸の病気とのことで、王太子が国王の執務を代わりにしているようだった。
私にはよく分かっていないのですが、国の混乱を避けるため、国王が倒れられたことは伏せられていた。

国王様が倒れてから一週間後、王太子が私に話をした。

「父上の病気が悪化している。このままだとそう長くはないそうだ。その前にその子を見せてあげることが出来ればよいのだが……」
「この子が生まれるのはもうすぐだと伺いました。私も出来れば国王様に御見せできればと思っているのですが……こればかりは……」
「其方の気持ちが訊けただけでも有難い。私は明日隣国の王族との会議がある。留守にするが、申し訳ない。傍に居てやれず……」
「構いませんよ。お仕事ですから」
「ああ……」

王太子と私はベッドの上に仰向けになって一緒に寝た。
王太子が私の手をぎゅっと握りしめてくれた。
私も同じようにぎゅっと握り返した。


―――次の日。

王太子は予定通り隣国へ旅立ち、私は部屋で寛いでいた。
ただ、時より国王様にお会いして顔を見せることにしていたのだ。
国王様は私が様子を伺ってもずっと目を閉じたまま動かない。
お医者様が仰るには薬が効いているからだとか。

「このまま目が覚めないのでしょうか」

私は医者に訊ねた。

「薬が効いている内は大丈夫だと思われますが、ご容態次第では何ともん…」
「そう、ですか……」

重たいお腹を持ち上げながら私は一礼して国王様の部屋を後にした。
早く子が産まれ、国王様を元気付けたい。
そんなことを考えながら部屋にもどった。

「国王様のご容態はどうだった?」

ラスティが私の部屋に来てそう訊ねて来た。
侍女の彼女は国王様に接見することが出来ないので気になっている様子だった。
私は他言無用をお願いして話をした。

「まだ、目を覚まさない状態だったわ。このままってことも……」
「そんなの酷いの? もうすぐお腹の子が生まれるというのに……」

私も同じことを考えていた。
早く子供の顔を見て貰いたい。
それだけが私の唯一の願いでもあった。

「早く出てきておいで……」
「マリア様……」

ラスティは私のお腹を擦りながら微笑んでいた。
私もラスティに微笑み返した。

本当に国王様が元気になって貰って、この子を抱いてくれることを神に願ったのだった。
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