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15 告げ口しました。

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ミレンダ令嬢たちの意地悪を受けて暫く休憩していたのだが、私がいないことに気が付いた王太子が私の部屋を訪れた。
くしゃくしゃの髪、ボロボロになった洋服を目にした王太子が私に話し掛けてきた。

「どうしたのだ!?」
「何でもありません」
「そんな、こんな状態で…何があったか言うのだ。マリア」

初めて自分の名前を言われたような気がした。
私は目から涙を零してミレンダ令嬢の事を話した。
黙って聞いていた王太子が怒りを露わにした。

「許せん…ミレンダめ……私の婚約者をこんな辱めをさせておいて」
「私の事など……いいのです。どうせ私には釣り合わないって皆も思っているでしょうし」
「皆とは誰の事かっ。言ってみよ!」

王太子の初めて見る怒る姿に少し驚いた私だったがミレンダにされたことを正直に話した。
すると、王太子は近衛隊長を呼びつけ私の目の前で叱責した。

「お前が居ながら何故このような事になった!? お前は私の妻を守る気が無いのか?」
「い、いえ……そういうわけでは……誠に申し訳御座いません」
「こんど、またこのような事で我妻を辱めにあった時其方の首はないと思え」
「ははっ!」

何だか格好いい…私は近衛隊長を怒鳴り散らす姿を見てそう思ってしまった。
此れなら私の言う事を訊いてくれるかもしれない。
私はそう思い話をした。

「この方の所為ではないのです。その辺で許してあげてください。それよりミレンダ様をどうにかしてくれませんか? 私はあの人に嫌われてるようで……」

くすん、と目から涙を零し頬を伝る涙を王太子が人差し指で掬ってくれた。

「分かった。ミレンダには私からきつく言っておくことにする。後、このことは国王…父上にも言わねばならない。ミレンダの父君にもな」

ミレンダ=アリフレッド……。
ミレンダ様の御父上はこの国の参謀を任されているアリフレッド伯爵。
国王の耳にこのことが伝わればミレンダ様とは言え謹慎処分だけでは済まない。
ふふふ、これで少しは私に対する嫌がらせがなくなるといいのだけれど。

「決して大事にはしてほしくないのです。アルバン様」
「おお、其方には一切危害が無いよう注意しよう。おい、マリアを自室へ運んでくれ。私はこのまま父君の所へ向かう」
「ははっ! マリア様……こちらへどうぞ」
「はい……」

近衛隊長は私の腕を掴んで私を立たせると部屋に向かって歩き出した。
これからは、私に逆らう人間がどうなるのか、楽しみだわ。

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