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「パドラー、これはどういうことなのだ? 私は其方を信じていたのだぞ?」
「パレッド様…わたくしが騙しているとでも!?」
「エリスが言っていることは正論だ。確かに証拠もなければ、夢を見ていただけでは……。もしや私に取り入ろうとして……エリスを……」
「そ、そんな事、わ、わたくしは知りませんっ」
パドラー令嬢は焦った表情をしていた。
間違いない。彼女が私を嵌めようとして仕組んだことだったのだ。
王太子はそのことに気付いたのか、私の方を向いて話し出した。
「済まぬ…証拠も無く、ただ訴えていたことだけを信じた私が悪かった。許してほしい」
「いえ……これでわたくしの事を信じて下さるなら」
「ああ……。パドラー、其方はなんということをしてくれたのだ。私の婚約者だったエリスに対して。其方が私を騙していたことがやっとわかった。其方との婚約を破棄する。そして二度と私の前に現れるな。追って沙汰を下す。おい、誰か。こやつを牢獄へ連れて行け」
「ま、待ってくださいっ。わたくしは……わたくしは……貴方様の事を愛しているのです。確かにわたくしの証言したことは虚偽でしたが、エリスが夢を見たという奇怪な話は本当ですっ! 信じてください、王太子様ぁ~」
二人の兵士に腕を掴まれて叫びながらそう訴えていたパドラー令嬢の言葉はもう王太子の耳には届かなかった。
王太子は私に謝罪し、婚約の事を進めたいと言い出した。
私は直ぐに返事が出来ないことを伝えた。
なぜなら隣国のマラス、そしてエリクソンにも同じことを言われていて返事をしていないからだった。
「そうか……私の過ちの所為で其方には苦労を掛けてしまったな。今宵は屋敷に戻りまた明日話をすることにしよう。マラス、エリクソン王太子には私からこの話の事を伝えることにする。それでよいか?」
「はい……有難う御座います。王太子様」
「昔馴染みのパレッド、でよいのだぞ」
ははは、王太子は笑った。
ゲームで言う所の王太子とのルートが復活したということかしら。
前世の私がやっていたゲームの事を思い出しながら王宮を後にした。
久々の御屋敷に行くとお父様が玄関口で待ってくれていた。
「エリザベス…良かった。本当に良かった」
「お父様…ご心配をお掛けしました」
「其方が無事であればそれでよい。さぁ、部屋に上がっておくれ。共の者もどうぞ、ゆっくりするといい」
私の傍に居た二人の女騎士にそう言うと二人は一礼した後客間に案内された。
私は久々自分の部屋に向かって歩ていると侍女が私を見ると一礼した。
「あの、アンはどうしたのですか?」
「あ、アンは……その、王宮で幽閉されております」
「何故?」
「お嬢様を売ったという罪で昨日お城の兵士が此処へ来られそのまま連れていかれてしまいました」
「そうなの……それは困ったわ。アンには一度会って話すことがあったのだけれど」
「パレッド様…わたくしが騙しているとでも!?」
「エリスが言っていることは正論だ。確かに証拠もなければ、夢を見ていただけでは……。もしや私に取り入ろうとして……エリスを……」
「そ、そんな事、わ、わたくしは知りませんっ」
パドラー令嬢は焦った表情をしていた。
間違いない。彼女が私を嵌めようとして仕組んだことだったのだ。
王太子はそのことに気付いたのか、私の方を向いて話し出した。
「済まぬ…証拠も無く、ただ訴えていたことだけを信じた私が悪かった。許してほしい」
「いえ……これでわたくしの事を信じて下さるなら」
「ああ……。パドラー、其方はなんということをしてくれたのだ。私の婚約者だったエリスに対して。其方が私を騙していたことがやっとわかった。其方との婚約を破棄する。そして二度と私の前に現れるな。追って沙汰を下す。おい、誰か。こやつを牢獄へ連れて行け」
「ま、待ってくださいっ。わたくしは……わたくしは……貴方様の事を愛しているのです。確かにわたくしの証言したことは虚偽でしたが、エリスが夢を見たという奇怪な話は本当ですっ! 信じてください、王太子様ぁ~」
二人の兵士に腕を掴まれて叫びながらそう訴えていたパドラー令嬢の言葉はもう王太子の耳には届かなかった。
王太子は私に謝罪し、婚約の事を進めたいと言い出した。
私は直ぐに返事が出来ないことを伝えた。
なぜなら隣国のマラス、そしてエリクソンにも同じことを言われていて返事をしていないからだった。
「そうか……私の過ちの所為で其方には苦労を掛けてしまったな。今宵は屋敷に戻りまた明日話をすることにしよう。マラス、エリクソン王太子には私からこの話の事を伝えることにする。それでよいか?」
「はい……有難う御座います。王太子様」
「昔馴染みのパレッド、でよいのだぞ」
ははは、王太子は笑った。
ゲームで言う所の王太子とのルートが復活したということかしら。
前世の私がやっていたゲームの事を思い出しながら王宮を後にした。
久々の御屋敷に行くとお父様が玄関口で待ってくれていた。
「エリザベス…良かった。本当に良かった」
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「其方が無事であればそれでよい。さぁ、部屋に上がっておくれ。共の者もどうぞ、ゆっくりするといい」
私の傍に居た二人の女騎士にそう言うと二人は一礼した後客間に案内された。
私は久々自分の部屋に向かって歩ていると侍女が私を見ると一礼した。
「あの、アンはどうしたのですか?」
「あ、アンは……その、王宮で幽閉されております」
「何故?」
「お嬢様を売ったという罪で昨日お城の兵士が此処へ来られそのまま連れていかれてしまいました」
「そうなの……それは困ったわ。アンには一度会って話すことがあったのだけれど」
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