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「それは……わたくしの事を嫌っているからです。昔わたくしが言った一言に王太子様は大層お怒りになられたからなのですわ。それがどんな小さなことだったことか……本当に恥ずかしい事だと思いますわ」

わたくしは堂々とそう言い放ちました。
王太子との出会いは幼い時でした。
そのことから既にわたくしと王太子が婚約することになっていることは王族と貴族との間に結ばれた事実でした。

そんなある日の事でした。

王太子とわたくしがお城の中庭で遊んでいた時の事です。
わたくしが花を摘み、彼はその傍にいました。
ただ見ているだけの彼にわたくしは大きな花の王冠を作って差し上げたのです。
それを喜んで被った姿に少し可笑しくなって笑ってしまいました。
それを見た王太子が『何を笑っているのだ??』と不思議そうな顔で見ていたのです。
わたくしは子供みたいで面白い、と告げました。
本当にごく普通の会話でした。
しかし王太子にとってその言葉は羞恥だったようで激怒してわたくしが作った王冠を叩き付けてお城の中に入ってしまいました。



それから王太子はわたくしとあまり話さなくなったのです。
わたくしが言ったたった一言で彼は傷ついたという事です。
全く心の狭い人です。
わたくし達はそれから言葉を交わすことはありませんでした。
そして嫌悪の仲になっていきました。



「ただ、昔の事を今でもわたくしの言った言葉に苛ついているだけなのです。そんな心の狭い人をわたくしは愛することは出来ません。それにわたくしが言ってもいない事をまるでわたくしがしたかのような言いぶりで周りに言いふらす……まるで子供そのものですわ」
「まぁっ! なんてことを言うのですか! 仮にもこの国の王太子様ですわよ。そんな子供だなんて……本当に酷い人だわ。ねぇ、二人とも、そう思わなくて?」


アリーシャはそう言って隣にいた取り巻きA(めんどくさいから名前とか知らないです)と、取り巻きB(AがいるならBと名付けることにしました)を交互に見回しました。
この話をしてもなおわたくしが悪者になるとは……全くこの人たちの考え方ってどうなっているのです。
わたくしの知っている彼の過去もこれからどんどばらしてあげましょう。
そして彼がどんなに小さい男なのか、それを知るといいですわ。



「さ、話も終わりましたわ。わたくしは帰りますので、失礼しますわ」
「メリーザ・エリクトン! ま、待ちなさい!! まだ話は終わってません事よ!」



まだ話があるというのでしょうか。面倒くさい相手です。わたくしはため息をついてからくるりと踵を返すとアリーシャの所へ歩み寄り顔を近づけてこう告げました。

「言いたいことがあるなら、またの機会にして下さいまし。わたくしには時間が限られているのです。貴女様のように暇ではないのですから」
「な、なにをっ!」

わたくしはそれだけを伝えると悔しそうにしているアリーシャの事を無視しわたくしは校舎の外へ歩き出しました。
隣にはアンヌとカムランが一緒に歩いてくれていました。
まるでわたくしの事を守ってくれるような態度で時折後ろでぎゃーぎゃー喚くアリーシャを振り返ってみながら。
これからわたくししか知らない王太子の恥ずかしいことをどんどん振り撒いてやりますわ。


そう心に誓ったのです。




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