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第8章
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全ての記憶を取り戻した私は全てを知った。
そしてある結論に達した。
それは、私の周囲でしかも身近な存在が私の記憶を消したという事だった。
どうしてそう思ったのかというと、過去私に対して反論できる者などいない。
ということは私の身近な存在が私に鍵を掛けたとしか考えられなかった。
朝食の時にお父様にそのことを話そう、私はそう思っていた。
「私の冤罪を晴らしに来たというのにこれじゃ犯人探しをする為に此処へ戻って来たようなものだわ」
「確かに、そのようですね」
え……? 誰……?
私は声の方に視線を向けるとそこには一礼している男性が立っていた。
「サタナキア? 貴方」
「はい。アレーレ様。突然のご訪問申し訳ありません。全ての記憶が蘇ると同時に私も呼び戻されることになっていたようです。それで、犯人は分かりましたか?」
「そこまでは……でも、妹のフェリシアってのが一番怪しいわ。そう言えば姿を見ないわよね。何処に居るのか知っているの?」
「フェリシア様でしたら、エルフィンダ王国の王子、 グルゴン様の所へ嫁がれたのでは。彼女はまだ未成年ですが、既にご両家から了承を得てあちらで暮らしていると聞き及んでおりますが」
また、エルフ族……。
こんな偶然ってないわよね。
私は口元に手を当てながら考えた。
アレーレの記憶は全部戻っていて、実は妹には特に冷たくあしらっていたのだった。
彼女は温厚でいつもにこにこしている印象だったけど、皆の前で叱責されたり、私と比べられたりすればストレスも溜まってくるはずだわ。
「エルフ族……エルフィンダ王国……グルゴン様の妻……か……」
何だか点と点が一つの線で結ばれた気がした。
アンダリエル姫があの会議の時に私に対する審議を言ったのは私にこの国の国王の妃になることを避けたかったのだろう。
もしターバリン様と婚約をしてしまったら、また私に頭が上がらなくなってしまう、そのことを避けたかったのだろう。
「全く……大人の都合ってわけね」
「アレーレ様。分かったのですか?」
「ええ……恐らく…それより貴方、いつまでそこにいるの?」
「あのぉ~……私にも魔力提供をしてほしいのですが……」
「貴方もなのね……この契約って言うの、切ることは出来ないの?」
「それは出来ません。主となる存在が私たちには必要なのです。特に私は上級精霊。魔族とは違って精霊なので、特にエルフ族の民には慕われておりまして」
「またエルフ族ね……仕方ないわね。契約しちゃったんだし。オロバスと同じことをすればいいのよね?」
「はい……」
私は手の甲をサタナキアに向けると、彼が跪いて私の手の甲にキスを落とした。
すると私の中にある魔力がどんどん吸われていくのが分かった。
血を吸われているような感覚。
オロバスより魔力を使う精霊。
私は意識を保つだけで背一杯だった。
そしてある結論に達した。
それは、私の周囲でしかも身近な存在が私の記憶を消したという事だった。
どうしてそう思ったのかというと、過去私に対して反論できる者などいない。
ということは私の身近な存在が私に鍵を掛けたとしか考えられなかった。
朝食の時にお父様にそのことを話そう、私はそう思っていた。
「私の冤罪を晴らしに来たというのにこれじゃ犯人探しをする為に此処へ戻って来たようなものだわ」
「確かに、そのようですね」
え……? 誰……?
私は声の方に視線を向けるとそこには一礼している男性が立っていた。
「サタナキア? 貴方」
「はい。アレーレ様。突然のご訪問申し訳ありません。全ての記憶が蘇ると同時に私も呼び戻されることになっていたようです。それで、犯人は分かりましたか?」
「そこまでは……でも、妹のフェリシアってのが一番怪しいわ。そう言えば姿を見ないわよね。何処に居るのか知っているの?」
「フェリシア様でしたら、エルフィンダ王国の王子、 グルゴン様の所へ嫁がれたのでは。彼女はまだ未成年ですが、既にご両家から了承を得てあちらで暮らしていると聞き及んでおりますが」
また、エルフ族……。
こんな偶然ってないわよね。
私は口元に手を当てながら考えた。
アレーレの記憶は全部戻っていて、実は妹には特に冷たくあしらっていたのだった。
彼女は温厚でいつもにこにこしている印象だったけど、皆の前で叱責されたり、私と比べられたりすればストレスも溜まってくるはずだわ。
「エルフ族……エルフィンダ王国……グルゴン様の妻……か……」
何だか点と点が一つの線で結ばれた気がした。
アンダリエル姫があの会議の時に私に対する審議を言ったのは私にこの国の国王の妃になることを避けたかったのだろう。
もしターバリン様と婚約をしてしまったら、また私に頭が上がらなくなってしまう、そのことを避けたかったのだろう。
「全く……大人の都合ってわけね」
「アレーレ様。分かったのですか?」
「ええ……恐らく…それより貴方、いつまでそこにいるの?」
「あのぉ~……私にも魔力提供をしてほしいのですが……」
「貴方もなのね……この契約って言うの、切ることは出来ないの?」
「それは出来ません。主となる存在が私たちには必要なのです。特に私は上級精霊。魔族とは違って精霊なので、特にエルフ族の民には慕われておりまして」
「またエルフ族ね……仕方ないわね。契約しちゃったんだし。オロバスと同じことをすればいいのよね?」
「はい……」
私は手の甲をサタナキアに向けると、彼が跪いて私の手の甲にキスを落とした。
すると私の中にある魔力がどんどん吸われていくのが分かった。
血を吸われているような感覚。
オロバスより魔力を使う精霊。
私は意識を保つだけで背一杯だった。
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