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第6章

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「イリスさん。本当に素敵なお部屋に案内してくれて有難う御座います。少し疲れてしまったので休ませて貰えますか?」
「あ、はい。勿論で御座います。何か御用が御座いましたらお呼びください。またお夕食の際にはお呼びいたします。では……ごゆるりと……」


イリスはそう言うと扉をゆっくりと閉めて部屋を後にした。
落ち着かない広さに驚きながらソファに腰かけると私の目の前に魔方陣が展開されて中からオロバスが出て来た。


「アレーレ嬢。お疲れの所申し訳ありません。一つ問題が出ました」


今更問題の一つや二つ……私はオロバスにどうしたのかを訊ねた。
普段冷静な顔をして私と会話するオロバスだったのだがこの時は少し様子がおかしかった。
何か焦っているかのような顔付きをして私を見つめている。


「それが……アレーレ嬢追放の後、ターバリン王子とアンドレ―様が此方に向かって来ているとの事でして……何処から聞いたのか不明なのですが……如何致しましょう」


如何いたしましょう……と言われても。
ていうか、何で私がここに居ることがバレちゃってるのよ。
オロバスが言う筈もないし、もしかしたら魔王が私の居場所を教えたとでもいうのっ。
私は髪の毛をさらっと手で流すとオロバスに話しかけた。


「どこでここの情報が知られていたのかは問題ではないわ。それよりも彼らが何しに来るかとういうことが問題だわ。既に私は追放されてしまった。それに令嬢としての身分も剥奪されているでしょう。その私の所に来るということは、王の命で私を討伐しに来るのかしら」
「いえ、そこまでは分かりません。ただこちらに向かっているという事だけでしか……」


何をしに来るのか分からないけれど、此処に来た時に何しに来たのかを訊ねれば済むはず。
どうせ彼等とは既に婚約破棄されちゃってるんだし。
私はため息をついてソファの背もたれにもたれかかり目を瞑った。


「とにかく彼らが何をしに来るのかを訊くしかないわ。オロバスは引き続き警戒して頂戴。あ、あと、お屋敷に残して着ちゃったマロン達の事も教えて欲しいのだけれど」
「御意。其方もぬかりなく御報告致します」
「お願いね。私は疲れてしまったのでこのままお風呂を頂くとするわ。……覗かないでね?」
「も、勿論……そのような事は致しません。では……」


オロバスは言葉を詰まらせながら魔法陣を展開してその中へ消えていった。
長旅をしたわけでもないのにも関わらず、妙に疲れが出てしまい私は服を脱いでバスタブのある場所へ向かった。
大きなお風呂場。綺麗に掃除も行き届いている。


「疲れを取ろうっと」


私は独り言を言いながら湯船に浸かって体の疲れをとった。
いつもならサロン達に身体を洗って貰っていたのだが今回は一人きりのお風呂。
そう言えばこの世界に来て初めて1人風呂をした。


「正直、こっちの方が気楽でいいわね」


私はこう言いながら暖かい湯船に腰かけながら疲れを癒した。
私がお風呂で疲れをとっている時、ターバリン王子とアンドレ―がサターニャ王国に向かって馬車を走らせていたのであった。
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