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第1章
突然の過去 1
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――――転生前のアレーレ嬢
「誰か、誰かいらしてっ!」
大きな声であたりを見回す艶やかで綺麗な女性――ゴードン公爵の娘、アレーレ嬢。
直ぐに侍女たち数名が彼女の前に詰めかけた。
「はいっ。お呼びで御座いますでしょうか、アレーレ様」
「遅い、遅過ぎよ、マロン、サロン、ミーシャ。貴女達は本当にノロマなのだから」
「はいぃぃ~っ! 申し訳ございません、アレーレ様」
マロンが皆を代表して許しを請う。
他の2人は黙ったまま頭を下げていた。
これは夢? 一体何の余興?
自分自身……と言うよりアレーレを上から眺めるような感覚。
自分の体が宙に浮いている……と言うか溶け込んでいるかのような気分がしていた。
「ジャスミンって子がまた私の事を噂しているのよ。全く懲りない子だわ。もう少しお仕置きをして差し上げないと……マロン、良いわね。いつもの段取りで懲らしめてあげなさい」
「……畏まりました、アレーレ様」
ジャスミンと言う女性の名を初めて聞いた。
マロンはそのままアレーレの指示でどこかへ向かおうとしている。
私はその様子を上から眺めていた。
一体これから何が起ころうとしているのかしら。
屋敷から出たマロンは暫く歩いていると大きな屋敷の前で立ち止まり鐘を鳴らした。
すると西洋にいそうなメイド服を着た女性が姿を見せた。
その女性に一言二言話をするとマロンは屋敷の中へ入っていった。
「あら、マロンじゃない。どうしたのかしら、突然…」
屋敷のある部屋でマロンがソファに座り待っているとドアの向こうから綺麗なドレスを身に纏った女性が声を掛けてきた。
マロンはその場で立ち上がり一礼する。
「お久しぶりでございます、ジャスミン様」
この人がジャスミンって言うのね。
なんだか親しげな雰囲気だわ。
ジャスミンはそのままソファに座りマロンもその後座った。
「ジャスミン様。私共主アレーレ様よりご伝言がございます」
「アレーレから? 何かしら」
「ジャスミン様、今後アレーレ様が主催されるサロンにはご出席頂かなくても結構、とのことです」
「な、なんですってっ!! それはどういう事かしら、マロンっ」
大声でそうジャスミンが言うとマロンは澄ました表情で淡々と話を続ける。
「ジャスミン様とは今後一切のご縁を切らせて頂き、今後ゴードン家とリッチモンド伯爵家とは一切関わりを断つ、とのことでございます」
マロンはそれだけ言うと席を立ちその部屋を出て行った。
ジャスミンは大声でマロンを呼びつけていたがマロンはそれに従わず屋敷を後にしたのだった。
アレーレに逆らった者は誰であれゴードン公爵家との縁が切れてしまう、と言う事の見せしめだったようだ。
それにしてもアレーレと言う令嬢って本当に悪だわね……私はそう思いながら泣き叫ぶジャスミンを見ていると、ふと先程開催していたお茶会をしていた場所に意識が戻っていた。
「一体あれは何のかしら……」
「はい…? どうかなさいましたか? アレーレ様」
直ぐ傍に座っていたマロンが不思議そうな表情で私にそう訊ねた。
ああ、ついさっきまでマロンに異世界に飛ばされたことを話してそのまま意識がなくなっちゃったのね……。
それにしてもジャスミンと言う女性、それにリッチモンド伯爵ってどういう……。
「マロン。ジャスミンと言う女性を知っているかしら?」
またしても唐突な質問をマロンにぶつけてみた。
するとマロンの表情が一気に曇る。
そして小さな方が震えだしたのだ。
「あ、あ…、あの方は……その……国外へ……」
「え……? 国外追放されたの?」
マロンはこくりと頷いた。
あれは夢ではなく私が来る前のアレーレがした事だったんだわ。
やっと理解出来た私は続けて質問した。
「もしかして、私の怒りに触れてジャスミンとリッチモンド伯爵が国外へ追放されちゃったのかしら?」
マロンは何も言わずこくりと頷く。
なんてことなの。
どうやって国外追放が出来たのかは分からないけれど結果的に私が起こしてしまった嫌がらせでジャスミンとその父親までが被害に遭ってしまったという事なのね。
私の気分次第で伯爵の身分を取り上げて国外追放迄しちゃうなんて。
これはまさしく悪役令嬢……だわ。
私はそう思いながら自分自身の今後の立ち振る舞いを改めようと決心した。
「誰か、誰かいらしてっ!」
大きな声であたりを見回す艶やかで綺麗な女性――ゴードン公爵の娘、アレーレ嬢。
直ぐに侍女たち数名が彼女の前に詰めかけた。
「はいっ。お呼びで御座いますでしょうか、アレーレ様」
「遅い、遅過ぎよ、マロン、サロン、ミーシャ。貴女達は本当にノロマなのだから」
「はいぃぃ~っ! 申し訳ございません、アレーレ様」
マロンが皆を代表して許しを請う。
他の2人は黙ったまま頭を下げていた。
これは夢? 一体何の余興?
自分自身……と言うよりアレーレを上から眺めるような感覚。
自分の体が宙に浮いている……と言うか溶け込んでいるかのような気分がしていた。
「ジャスミンって子がまた私の事を噂しているのよ。全く懲りない子だわ。もう少しお仕置きをして差し上げないと……マロン、良いわね。いつもの段取りで懲らしめてあげなさい」
「……畏まりました、アレーレ様」
ジャスミンと言う女性の名を初めて聞いた。
マロンはそのままアレーレの指示でどこかへ向かおうとしている。
私はその様子を上から眺めていた。
一体これから何が起ころうとしているのかしら。
屋敷から出たマロンは暫く歩いていると大きな屋敷の前で立ち止まり鐘を鳴らした。
すると西洋にいそうなメイド服を着た女性が姿を見せた。
その女性に一言二言話をするとマロンは屋敷の中へ入っていった。
「あら、マロンじゃない。どうしたのかしら、突然…」
屋敷のある部屋でマロンがソファに座り待っているとドアの向こうから綺麗なドレスを身に纏った女性が声を掛けてきた。
マロンはその場で立ち上がり一礼する。
「お久しぶりでございます、ジャスミン様」
この人がジャスミンって言うのね。
なんだか親しげな雰囲気だわ。
ジャスミンはそのままソファに座りマロンもその後座った。
「ジャスミン様。私共主アレーレ様よりご伝言がございます」
「アレーレから? 何かしら」
「ジャスミン様、今後アレーレ様が主催されるサロンにはご出席頂かなくても結構、とのことです」
「な、なんですってっ!! それはどういう事かしら、マロンっ」
大声でそうジャスミンが言うとマロンは澄ました表情で淡々と話を続ける。
「ジャスミン様とは今後一切のご縁を切らせて頂き、今後ゴードン家とリッチモンド伯爵家とは一切関わりを断つ、とのことでございます」
マロンはそれだけ言うと席を立ちその部屋を出て行った。
ジャスミンは大声でマロンを呼びつけていたがマロンはそれに従わず屋敷を後にしたのだった。
アレーレに逆らった者は誰であれゴードン公爵家との縁が切れてしまう、と言う事の見せしめだったようだ。
それにしてもアレーレと言う令嬢って本当に悪だわね……私はそう思いながら泣き叫ぶジャスミンを見ていると、ふと先程開催していたお茶会をしていた場所に意識が戻っていた。
「一体あれは何のかしら……」
「はい…? どうかなさいましたか? アレーレ様」
直ぐ傍に座っていたマロンが不思議そうな表情で私にそう訊ねた。
ああ、ついさっきまでマロンに異世界に飛ばされたことを話してそのまま意識がなくなっちゃったのね……。
それにしてもジャスミンと言う女性、それにリッチモンド伯爵ってどういう……。
「マロン。ジャスミンと言う女性を知っているかしら?」
またしても唐突な質問をマロンにぶつけてみた。
するとマロンの表情が一気に曇る。
そして小さな方が震えだしたのだ。
「あ、あ…、あの方は……その……国外へ……」
「え……? 国外追放されたの?」
マロンはこくりと頷いた。
あれは夢ではなく私が来る前のアレーレがした事だったんだわ。
やっと理解出来た私は続けて質問した。
「もしかして、私の怒りに触れてジャスミンとリッチモンド伯爵が国外へ追放されちゃったのかしら?」
マロンは何も言わずこくりと頷く。
なんてことなの。
どうやって国外追放が出来たのかは分からないけれど結果的に私が起こしてしまった嫌がらせでジャスミンとその父親までが被害に遭ってしまったという事なのね。
私の気分次第で伯爵の身分を取り上げて国外追放迄しちゃうなんて。
これはまさしく悪役令嬢……だわ。
私はそう思いながら自分自身の今後の立ち振る舞いを改めようと決心した。
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