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第1章
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「何かしら?」
私は部屋に入って来た侍女にそう言うといつもの入浴時間に私が現れないのを心配になり失礼を承知の上私の部屋を訪ねて来たということらしい。
私の行動は常に誰かが把握されているのだとその時知ることが出来た。
これも又公爵家の娘として必要な情報だ。
「アレーレ様。お支度がまだでしたらまた後程伺いますが……」
「あ、良いの。今から支度をしてそちらに伺うことにするわ」
私がそう言うと侍女が不思議そうな顔をして私を見つめていた。
違うの?
この答えは間違ってるの?
いつもの私ってどういう振る舞いをしてるか全然分かんない。
と言うより前の私ってどんだけ悪役な振る舞いしてたっていうのよ。
マロンにお風呂の支度を指示するとてきぱきと下着やらなんやらを手にして直ぐ私の元に戻って来た。
「さ、行きましょ。マロン」
「私ではなく、お風呂はサロン姉様が担当しておりますので……」
サロン……ああ、今さっきこの部屋に入って来たこの子のことか。
なるほどね、様々な事柄によっては担当が変わるシステムってことなのね。
中々厄介だわ、この世界のお嬢様ってのは。
マロンの姉だというサロンにお風呂場まで案内して貰うと大きな扉の前で立ち止まった。
「ここはお風呂場なのね……」
(なんて大きな扉なのかしら……)
「アレーレ様。私共がご奉仕させて頂きます……」
「ご、ご奉仕!?」
「はい。いつも以上に丁寧に……」
ちょ、ちょっと待って?
それってどういう事するっていうの!?
まさか……。
「サロン。いつも通りとは。具体的に何をして下さるの?」
え? と言う顔をするサロン。
「お風呂はいつも私共侍女がアレーレ様のお身体を丁寧に洗わせて頂いているではありませんか。それとも私共のご奉仕ではご不満なのでしょうか……」
ええっ!!
マジでなの?
一人でお風呂くらい入れるって言いたいっ。
貧相な裸体を人様の前に晒すなんてまるで罰ゲームそのものじゃない。
これがこの世界…というよりこの家のやり方とでもいうの!?
「あの…え~と、一人で、入りたい…な…」
私は小さな声でそう呟いた。
するとそれを聞いていたサロンが驚いた表情で私を見つめた。
そのいちいち驚くの止めてくれないかな……。
私こっちに来てまだ数時間しか経ってないのよ。
大体令嬢って言うのがいまいちまだ分かってないんだから。
「アレーレ様、どこかご気分でも悪いのでしょうか。いつもなら『早く洗って頂戴。汗で私の綺麗な肌が荒れちゃうじゃない』と仰るのですが……」
「そうですっ。いつもなら『自分で身体を洗うとか本当に面倒くさいったないわ。さっさと洗って頂戴』と私共にご命令なさるのに……」
サロンの他に二人の侍女のうち一人がそう言った。
そういうキャラなのか……アレーレって。
暫く考えた挙句いつも通りにしていないといけない気がしたので、観念し腹を括った私は侍女たちにお願いしてこのみすぼらしい身体を洗って貰うことにした。
裸になった私を連れて侍女三人で私の腕や胸、お尻や背中、長い髪の毛を洗って貰う私。
目の前に有る大きな鏡に映る私の顔をその時初めて見た。
綺麗なブロンズの長髪に緑の瞳、ブロンズの眉毛に長い睫毛、整った顔立ち。
それに生前は小さな胸でお腹が少し出ていた隠れぽっちゃりな私だったはずが、今の私は胸も大きくそれにお腹もしゅっとして素晴らしいプロポーションだったのだ。
前世の私とは似ても似つかない美人が私の目の前に……ってこれ私だ。
転生してよかったぁ~、この時初めてあの時子猫を助けようと良い事をしたのご褒美を貰えてた気がした。
「えっと、貴女お名前は?」
私の腕を洗っている侍女にそう訊ねた。
すると不思議そうな顔をしながら『モロ』と名乗った。
そしてもう一人は空気を呼んだのか自らを『ソロ』と名乗った。
モロとソロとサロンか。なんだか変な名前だわね。
私はそう思いながら綺麗になった身体、長い髪の毛は上で纏めて広い湯船に肩まで浸かった。
「はぁ~、いい気持いいわぁ~」
「お湯加減はいかがですか、アレーレ様」
「上出来よ、モロ、ソロ、サロン」
「「「有難き幸せ」」」
三人同時に頭を下げてそう言った。
なんだかまるで日本でいうところの時代劇に出てくるお姫様気分。
さっきまではとっても窮屈で仕方がなかったのだけれどお風呂だけは天国そのものって感じね。
しっかりお風呂を頂いた私は湯船から上がり三人の侍女に身体を拭いて貰うとネグリジェのような薄い生地のパジャマに着替えてお風呂場を後にした。
今日はなんだか色々あってか相当疲れてしまった私はそののま寝室にある一人では広すぎる豪華なベッドで横になった。
侍女たちは何か用事があればこの金色の鐘を鳴らすようにとベッドの傍にある机の上に置いて部屋を後にした。
私は部屋に入って来た侍女にそう言うといつもの入浴時間に私が現れないのを心配になり失礼を承知の上私の部屋を訪ねて来たということらしい。
私の行動は常に誰かが把握されているのだとその時知ることが出来た。
これも又公爵家の娘として必要な情報だ。
「アレーレ様。お支度がまだでしたらまた後程伺いますが……」
「あ、良いの。今から支度をしてそちらに伺うことにするわ」
私がそう言うと侍女が不思議そうな顔をして私を見つめていた。
違うの?
この答えは間違ってるの?
いつもの私ってどういう振る舞いをしてるか全然分かんない。
と言うより前の私ってどんだけ悪役な振る舞いしてたっていうのよ。
マロンにお風呂の支度を指示するとてきぱきと下着やらなんやらを手にして直ぐ私の元に戻って来た。
「さ、行きましょ。マロン」
「私ではなく、お風呂はサロン姉様が担当しておりますので……」
サロン……ああ、今さっきこの部屋に入って来たこの子のことか。
なるほどね、様々な事柄によっては担当が変わるシステムってことなのね。
中々厄介だわ、この世界のお嬢様ってのは。
マロンの姉だというサロンにお風呂場まで案内して貰うと大きな扉の前で立ち止まった。
「ここはお風呂場なのね……」
(なんて大きな扉なのかしら……)
「アレーレ様。私共がご奉仕させて頂きます……」
「ご、ご奉仕!?」
「はい。いつも以上に丁寧に……」
ちょ、ちょっと待って?
それってどういう事するっていうの!?
まさか……。
「サロン。いつも通りとは。具体的に何をして下さるの?」
え? と言う顔をするサロン。
「お風呂はいつも私共侍女がアレーレ様のお身体を丁寧に洗わせて頂いているではありませんか。それとも私共のご奉仕ではご不満なのでしょうか……」
ええっ!!
マジでなの?
一人でお風呂くらい入れるって言いたいっ。
貧相な裸体を人様の前に晒すなんてまるで罰ゲームそのものじゃない。
これがこの世界…というよりこの家のやり方とでもいうの!?
「あの…え~と、一人で、入りたい…な…」
私は小さな声でそう呟いた。
するとそれを聞いていたサロンが驚いた表情で私を見つめた。
そのいちいち驚くの止めてくれないかな……。
私こっちに来てまだ数時間しか経ってないのよ。
大体令嬢って言うのがいまいちまだ分かってないんだから。
「アレーレ様、どこかご気分でも悪いのでしょうか。いつもなら『早く洗って頂戴。汗で私の綺麗な肌が荒れちゃうじゃない』と仰るのですが……」
「そうですっ。いつもなら『自分で身体を洗うとか本当に面倒くさいったないわ。さっさと洗って頂戴』と私共にご命令なさるのに……」
サロンの他に二人の侍女のうち一人がそう言った。
そういうキャラなのか……アレーレって。
暫く考えた挙句いつも通りにしていないといけない気がしたので、観念し腹を括った私は侍女たちにお願いしてこのみすぼらしい身体を洗って貰うことにした。
裸になった私を連れて侍女三人で私の腕や胸、お尻や背中、長い髪の毛を洗って貰う私。
目の前に有る大きな鏡に映る私の顔をその時初めて見た。
綺麗なブロンズの長髪に緑の瞳、ブロンズの眉毛に長い睫毛、整った顔立ち。
それに生前は小さな胸でお腹が少し出ていた隠れぽっちゃりな私だったはずが、今の私は胸も大きくそれにお腹もしゅっとして素晴らしいプロポーションだったのだ。
前世の私とは似ても似つかない美人が私の目の前に……ってこれ私だ。
転生してよかったぁ~、この時初めてあの時子猫を助けようと良い事をしたのご褒美を貰えてた気がした。
「えっと、貴女お名前は?」
私の腕を洗っている侍女にそう訊ねた。
すると不思議そうな顔をしながら『モロ』と名乗った。
そしてもう一人は空気を呼んだのか自らを『ソロ』と名乗った。
モロとソロとサロンか。なんだか変な名前だわね。
私はそう思いながら綺麗になった身体、長い髪の毛は上で纏めて広い湯船に肩まで浸かった。
「はぁ~、いい気持いいわぁ~」
「お湯加減はいかがですか、アレーレ様」
「上出来よ、モロ、ソロ、サロン」
「「「有難き幸せ」」」
三人同時に頭を下げてそう言った。
なんだかまるで日本でいうところの時代劇に出てくるお姫様気分。
さっきまではとっても窮屈で仕方がなかったのだけれどお風呂だけは天国そのものって感じね。
しっかりお風呂を頂いた私は湯船から上がり三人の侍女に身体を拭いて貰うとネグリジェのような薄い生地のパジャマに着替えてお風呂場を後にした。
今日はなんだか色々あってか相当疲れてしまった私はそののま寝室にある一人では広すぎる豪華なベッドで横になった。
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