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第5章 帰還
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翌日の朝を迎えた。
ヨ―ルリアン帝国に戻ることになった私は緊張と不安で満足に寝ることが出来なかった。
ルクは相変わらず近くにある森に一人ドランゴンとなって魔力補給をしていたそうだ。
私の支度が終わり部屋を出るとルクが部屋の前で腕を組んで待っていてくれていた。
「おはよう、エリーザ」
「おはようございます。昨晩はあまり寝付けませんでした」
「そうか。私もだ。早急にここを発とう。一刻も早く帝国へ戻らねば」
「はい……」
ルクはドラゴンの姿になってヨ―ルリアン帝国に戻ると言う。
私はまたドランゴンとなったルクの背中に乗ることになった。
御屋敷でお世話になったアイルと公爵様に礼を言って森へと入って行った。
ある程度奥に進むと大きな穴があいたような場所に出た。
「ここでドランゴンの姿になる。其方は私の背中に乗るのだ」
「分かりました。道中宜しくお願いします」
「ああ、分かった」
とてつもない光がルクの身体を包み込むと大きな黒竜が姿を現した。
大きな鳴き声を放ち木々に止まっていた鳥たちが一斉に羽ばたいた。
私はルクの手の上に乗るとそのまま背中まで誘導され大きな背中に捕まる。
「行くぞ、エリーザ」
「はい、宜しくお願いします」
私の言葉を訊いた後大きな翼を動かしながら徐々にルクの足が宙に浮く。
離陸すると一気に空高く迄舞い上がった。
私は落とされないよう必死でルクにしがみ付く。
空の上にルクが勢いよく飛ばし始めた。
私は風を受けながら必死で落ちないよう目を瞑っていた。
ドラゴンとなったルクは勢いをさらに加速して翼を動かす。
ごぉ~っと翼の擦る音と風の音が私の耳に入り込んでくる。
「直ぐにヨ―ルリアン帝国の領土に着く。その後歩きになるが、エリーザ大丈夫か?」
大きくて低い声でルクが私にそう訊ねて来た。
私は声を発して答えようとしたが風の音がその声をかき消してしまった。
ルクは私の答えを訊かず飛び続けた。
少しルクの飛ぶスピードが緩み目を開けられるほどになって下を見下ろすとそこは私は最初に侍女マリと訪れた街の真上だった。
「良し、この森の中に行くぞ」
「は、はいっ」
私はルクに聞こえるように大きな声でそう言った。
しかしルクの耳には届いていたいようで返事はなかった。
ここは…私がマリに殺されかけた場所。
今頃あの子は何をしているのかしら。
私の暗殺に失敗したとなれば酷い仕打ちを受けているに違いない。お兄様……私は……。
ヨ―ルリアン帝国に戻ることになった私は緊張と不安で満足に寝ることが出来なかった。
ルクは相変わらず近くにある森に一人ドランゴンとなって魔力補給をしていたそうだ。
私の支度が終わり部屋を出るとルクが部屋の前で腕を組んで待っていてくれていた。
「おはよう、エリーザ」
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「はい……」
ルクはドラゴンの姿になってヨ―ルリアン帝国に戻ると言う。
私はまたドランゴンとなったルクの背中に乗ることになった。
御屋敷でお世話になったアイルと公爵様に礼を言って森へと入って行った。
ある程度奥に進むと大きな穴があいたような場所に出た。
「ここでドランゴンの姿になる。其方は私の背中に乗るのだ」
「分かりました。道中宜しくお願いします」
「ああ、分かった」
とてつもない光がルクの身体を包み込むと大きな黒竜が姿を現した。
大きな鳴き声を放ち木々に止まっていた鳥たちが一斉に羽ばたいた。
私はルクの手の上に乗るとそのまま背中まで誘導され大きな背中に捕まる。
「行くぞ、エリーザ」
「はい、宜しくお願いします」
私の言葉を訊いた後大きな翼を動かしながら徐々にルクの足が宙に浮く。
離陸すると一気に空高く迄舞い上がった。
私は落とされないよう必死でルクにしがみ付く。
空の上にルクが勢いよく飛ばし始めた。
私は風を受けながら必死で落ちないよう目を瞑っていた。
ドラゴンとなったルクは勢いをさらに加速して翼を動かす。
ごぉ~っと翼の擦る音と風の音が私の耳に入り込んでくる。
「直ぐにヨ―ルリアン帝国の領土に着く。その後歩きになるが、エリーザ大丈夫か?」
大きくて低い声でルクが私にそう訊ねて来た。
私は声を発して答えようとしたが風の音がその声をかき消してしまった。
ルクは私の答えを訊かず飛び続けた。
少しルクの飛ぶスピードが緩み目を開けられるほどになって下を見下ろすとそこは私は最初に侍女マリと訪れた街の真上だった。
「良し、この森の中に行くぞ」
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しかしルクの耳には届いていたいようで返事はなかった。
ここは…私がマリに殺されかけた場所。
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