悪役令嬢とドラゴン王子

杏仁豆腐

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第3章 逃走 

3

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「ルクが選んでくれた洋服って此れなのねぇ~」


水浴びを終えてルクが選んだ洋服を手に取る。
赤いドレスだった。
目立つ色と言うよりワインレッドの落ち着いた色だった。
濡れた体をタオルで拭った後下着を付けてドレスに袖を通した。


「ぴったりだわ。凄い……」


私の身体にぴったり丁度のサイズのドレスを身に纏いルクの居る洞窟へ帰る。
洞窟で待つルクが大きな寝息を立てながらとぐろを巻くように丸まって寝ていた。
国を出る時かなりの魔力を消耗してしまったのだわ。
疲れているのね。

私はルクを起こさないようルクの隣にあった石に腰かけた。
汚れたドレスは湖で洗い乾くまで干しておこう。
水を切ったドレスを偶々道端で見つけた木の枝に掛けて干した。


「次はどの国へ赴くのかしら」


そう思いながらヨ―ルリアン帝国の事を考えていた。
私を失脚させた公爵や、マチルの事を考えていた。
私が居なくなって誰が一番得をするか、それは父でも兄でもない。
マチル本人だ。
私は第一王女。もし私に縁談の話が来た時、幾ら兄と結婚したとしても王族の中では地位が低い。
それも兄と結ばれれば必然と私は義理の姉になる。
立場的には邪魔な存在なのだ、私が。


「私を陥れた犯人は、マチル、でも私を退けたとしても――」
「何を考えておる。余計な事は考えない方がいいぞ」


私の小言の声でルクが起きてしまった。
別に犯人探しをして仕返しをしようなどと思っているわけではなかった。
ただ、もしも……私の考えていることが当たっていたとしたら、お父様と、お兄様が次に狙われる筈。
それに私の母方の叔母様も邪魔になる筈では……。


「すみません、起こしてしまいましたね。ちょっと考え事をしただけです」
「そうか。おお、その洋服良く似合っているじゃないか。良かった、色々あって迷っていたのだ。其方には赤い色が似合うと踏んでいたのだが正解だったようだ。」


ルクがそう言って笑顔を見せているようだった。
実際はドラゴンの鋭い目で睨みつけられているのだが……。


「準備が出来次第ここを出るぞ」
「もう、ですか?」
「ああ、夜更けになる前に次の目的地へ到着したい。ダメか?」
「いえ、わたくしは……」


帝国のいざこざを今考えるのは良そう、私はルクに笑顔を振り撒いて安心して貰おうと思った。
ルクには返しきれないくらいの恩がある。
それに私のような人間を妃に迎えると言ってくれている。
今はルクについていこう、そう思った。



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