悪役令嬢に転生しちゃったみたいっ！

4 お父様との食事

「後は……」


私は日記を読みながら悪役非道な事が書かれている内容を読んでいた。
確かに酷い、ここに書かれている主な人物は『アリーレ』、『マルティ』だ。
アリーレは私の取り巻きの一人らしい。
一緒に誰を追い詰めたとか、気に入らない令嬢の私物を壊して捨てたとか、本当に酷い事ばかり書かれていた。


「本当に悪役令嬢だわ……」


私がソファに座りながら日記に目を通しているとドアのノックする音が鳴った。
私はドアの扉を開けるとメイド服を身に纏ったアデルが一礼していた。


「お嬢様。御食事のご用意が出来ました。旦那様もご一緒されるそうです」
「もうそんな時間なのね……。分かったわ」


私は日記を机の中にしまって部屋を後にした。
食堂に着くとお父様が先に食事をしていた。
私は自分の席（いつも座っていると無意識で分かった）に座るとナイフとフォークを手にして目の前の魚を食べようとした。


「クラーラ。お前というやつは……これからどうするつもりなのだ？」


お父様が俯いたまま手を動かし、私にそう訊ねて来た。
食器と食器が当たる音が静かな部屋に鳴り響いている。
私は手にしていたフォークとナイフをそっと置くとナプキンで口元を拭き話し出した。


「これからの私の行動をしっかり見て貰う事しか出来ませんわ。私は生まれ変わったんです。そのことをお父様にもちゃんと見て貰いたいと思っています」
「生まれ変わったとはどういうことだ？」


俯いていたお父様が私の顔を見つめた。
本当に生まれ変わったなんて言っても信じて貰えないだろう。

なんせ私は転生者。
今までのクラーラとは全くの別人なのだということは分かって貰えないだろう。
ならば前世の私の性格のようにお淑やかで目立たない、ひっそりとした生活をすればいいのだ。

前世と変わらない生活を送れば、私の悪役非道な振る舞いは無かったことになるだろうと思っていた。


「これからの私を観ていてください、お父様」
「そうか…、ならばしかと見届けよう。其方のしかし王太子との婚約は破棄されたことは事実。これからの事を考えると私は心配で仕方がない。それは分かってくれよ」
「分かりました。本当に申し訳ありません」


私が真剣な顔でそう言うとお父様はふぅ～っとため息をついてから「食事を済ませよう」と私に言って静かな食事が再開した。
その後お父様は何も言わず食事を済ませるとさっさと食堂を出て行ってしまった。


私の所為で自らの職も危うくなってしまったのだろうか。
お父様はこの国の宰相。
その娘が悪役令嬢ってだけで大ダメージだわ。
早く悪役令嬢のレッテルを剥がして普通のお嬢様として過ごさないとね。
私は食事を済ませ部屋に戻ろうと廊下を歩ていると後ろからメイドのアデルが声を掛けてきた。