「私はまた、失う」

うた子

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絶望

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私はどんなに「あの場所」を「ばい菌扱い」されても、「非難の的」にされても、嫌うことなんて到底できやしない。

なんたって、今の私の半分を作り、土台を築き上げてくれたのはあの場所なのだから。

愛していた、あの、私を育んでくれたあの土地を、小さな私を形り生きながらえさせてくれた世界を、心から。

ゴーストタウンと化したあの場所を、まるで「ばい菌」のように扱われ、その土地で「悪者」になった原発の恩恵を受け生きて来た私たちは「嫌われ者」で、差別して偏見の的にしても良い相手であった。

私には「支えようとしてくれている人の手」が、全く見えなかった。
「救い出そうとして、一生懸命手を差し伸べてくれている人の腕」が、全部嘘っぱちにしか感じなかった。

全てを失くしてしまった、帰る場所のなくなった、空っぽだった。
迷子になったような心細い、子供のような気持ちで避難していた最中、私は一度、18歳から住んでいた東京へ戻り、懐かしい歌舞伎町へと向かった。
毎日毎日キャバクラでの仕事と、救いを求め、ウロウロとさ迷った。

県内にはキャバクラは少なく、尚且つ身分証明書である保険証を見せれば、住所がバレてしまう。
それではまた追い出されるのではないか、どこも雇ってはくれないのではないか、と思ったのだ。

歌舞伎町で面接に受かったキャバクラに勤め日払いをもらう生活をして、友人の部屋に泊めてもらったり、時々は色々な場で出会った人の部屋で寝かせてもらい、日々をなんとか凌いだ。
自暴自棄を極めていた。

そして私は、ほんの数日、少しの間を共に過ごしてくれた、歌舞伎町で出会ったとある心の優しい青年の住むマンションの部屋のベランダから、飛び降り自殺をはかった。

死ぬだろうと思っていた。
死ぬだろうと思っていた。
やっと終われると思っていた。

仕事上がりで酔いはほどほどと言った感じで、ただの諦めと消えない絶望感から、私は彼がシャワーを浴びている間にベランダの窓を開けた。

しっかりとコンクリートの地面に叩きつけられて、後頭部の頭蓋骨の骨が絶対に砕かれたと思った、それほどに痛かった。
空を仰ぐ形で私は倒れていたが、なんだか全てがだるいし、頭は酷く痛むし、体を動かす気力はなかった。
全開のように手首を切ったわけではなかったので、地面に血だまりを作ることもなく、綺麗な死に際なら良い、と思った。

女の人のものだろう、高い声で悲鳴が上がるのを、感覚のぶっ壊れた耳の鼓膜がなんとか最後に拾った。
とにかく頭だけが痛い、首はむち打ちかもしれない、痛覚は生きている、つまり私は死んでいない。
しくじった。

ダメなのか、と思って目を閉じた。

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