「私はまた、失う」

うた子

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生きなきゃいけないの?

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ここまでで書いた通りなのだが、私の生まれ育った故郷は東日本大震災の後に、爆発を起こしたり、放射能を蒔き散らかしたりした原発のある町だ。
けれど、私にとってはかけがえのない故郷であることには変わりはない。
本当に、心から愛しくて、愛してやまない故郷なのだ。

放射能がうつるから触るな、被災者は邪魔者。

風邪をひいて病院に行こうが、精神疾患の為の薬を処方して欲しくて心療内科に行こうが保険証に書かれている住所の土地名を見れば追い返される。

祖母の入れ歯を作る為に、母は何件もの歯医者を回った、断られ、追い出され、それでも祖母がご飯を食べられるようにと、よく知らない土地で、歯医者を探しては、何件も頼みに回った。

ホテルも、コンビニも、旅館も、スーパー銭湯さえ、嫌がられ、停めた車のナンバーで「虐めていい相手」「蔑んで良い相手」となり、車に悪戯をされる。

様々な偏見を受け、差別を受け、それでもなんとかアルコールに逃げ、誤魔化し、生にしがみつき生きて来た。
けれどもう、全てに耐えきれず抜け殻のようになっていた。

ああ、死にたい、また、いつの間にかそうとしか思えなくなっていた。

私はきっともう、とっくに生きることを諦めていた。

こんな想いをしてまで、どうして生きなくてはならないのだろう、と、そんなことをいつも考えていた。

希望?支え?絆?そんなもの、どこにも見えやしない。
だって誰も助けてなんかくれない。

皆私たちを邪魔者扱いしていて、嫌っているではないか。
私たちは、原発で被災して避難して来た者たちは、皆、死ぬべきだったのだろうか?

愚かで愚鈍で「安全神話」に騙されて「町を豊かにしたい」と言う夢を見て「バカを見た」、「自業自得の馬鹿ども」なんでしょう?

みんなそう言ってる。

「被災者は迷惑だ」って、そんな声しか、私には届かなかった。


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