9 / 21
父が、消える
しおりを挟む
私はただ毎日、コンビニでビールやワインを買って来ては飲んでいた。
生きてるのか死んでいるのかわからなかったし、テレビに映る津波の映像を見るたびに、自分が死ねば良かったのではないだろうか?と思うことしか出来なかった。
そんな風に日々を過ごしていた中、父が動いた。
なんとか親戚に連絡を取ることが出来たので、しばらくの間いられる場所を確保できたと言う話だった。
母方の祖父、祖母、叔父、叔母、従弟に一旦別れを告げて、父、母、父方の祖母、私、の四人で車に乗ると、はじめの目的だった福島県の真ん中辺りにある土地へと向かった。
父が連絡を取ることが出来た親戚から、親戚の亡くなったお祖母ちゃんが使っていた小さな平屋が残っているから、しばらく行き場が決まるまでその平屋を使って良いと言ってもらえたらしい。
なので、そちらにうつった。
その平屋に向かう途中で見た町の様子と言えば、ガラスは割れ、屋根は瓦が落ち、ブルーシートで覆われていたり、どの店も家も同じようなものだった。
時々割れた道路を避けて、なんとかたどり着いたその小さな平屋を片付け、掃除し、人が住める状態にすると、私と母で近所にあったスーパーに向かいカップ麺を買い込んだ。
お金の手持ちもあまりなく、通帳もカードも持って出てきていなかった。
でも、それらを取りに家に帰ることは出来ない。
原発が爆発してからすぐならば帰って取りに行けたかもしれないが、数日たってしまった今ではもう立ち入り禁止だろうと父は言った。
その通り、テレビをつければその土地へは入ってはいけないと言うようなことがニュースでは流れていた。
私は相変わらずビールやワインばかり飲んで生きていた。
それ以外、食べ物は全く受け付けなくなっていた。
そんなある日、父の姿が消えた。
生きてるのか死んでいるのかわからなかったし、テレビに映る津波の映像を見るたびに、自分が死ねば良かったのではないだろうか?と思うことしか出来なかった。
そんな風に日々を過ごしていた中、父が動いた。
なんとか親戚に連絡を取ることが出来たので、しばらくの間いられる場所を確保できたと言う話だった。
母方の祖父、祖母、叔父、叔母、従弟に一旦別れを告げて、父、母、父方の祖母、私、の四人で車に乗ると、はじめの目的だった福島県の真ん中辺りにある土地へと向かった。
父が連絡を取ることが出来た親戚から、親戚の亡くなったお祖母ちゃんが使っていた小さな平屋が残っているから、しばらく行き場が決まるまでその平屋を使って良いと言ってもらえたらしい。
なので、そちらにうつった。
その平屋に向かう途中で見た町の様子と言えば、ガラスは割れ、屋根は瓦が落ち、ブルーシートで覆われていたり、どの店も家も同じようなものだった。
時々割れた道路を避けて、なんとかたどり着いたその小さな平屋を片付け、掃除し、人が住める状態にすると、私と母で近所にあったスーパーに向かいカップ麺を買い込んだ。
お金の手持ちもあまりなく、通帳もカードも持って出てきていなかった。
でも、それらを取りに家に帰ることは出来ない。
原発が爆発してからすぐならば帰って取りに行けたかもしれないが、数日たってしまった今ではもう立ち入り禁止だろうと父は言った。
その通り、テレビをつければその土地へは入ってはいけないと言うようなことがニュースでは流れていた。
私は相変わらずビールやワインばかり飲んで生きていた。
それ以外、食べ物は全く受け付けなくなっていた。
そんなある日、父の姿が消えた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

もう会えないの
うた子
エッセイ・ノンフィクション
2011年3月11日、東日本大震災により、福島第一原子力発電所は事故を起こした。
私は、その原発事故のあった町に住んでいた。
事故により、放射能を巻き散らかすこととなった原発から逃れる為、着の身着のまま避難を余儀なくされた。
その当時、家では、二匹の犬を飼っていた。
すぐに帰って来ることが出来るから。
だから大丈夫。
少しの間だけ、待っていてね。
しかし、その約束は果たされることはなかった。
私たちは、すぐにその家へ、故郷へ戻ることは許されなかった。
何週間も、何カ月も、その土地に入ることは出来なかった。
自宅に帰ることすら、許可が必要になった。
真っ白な防護服とマスク、手袋、そして靴を包み込むビニール袋を身につけて。
その時、私が見たものは。

BL書籍の印税で娘の振り袖買うつもりが無理だった話【取らぬ狸の皮算用】
月歌(ツキウタ)
エッセイ・ノンフィクション
【取らぬ狸の皮算用】
書籍化したら印税で娘の成人式の準備をしようと考えていましたが‥‥無理でした。
取らぬ狸の皮算用とはこのこと。
☆書籍化作家の金銭的には夢のないお話です。でも、暗い話じゃないよ☺子育ての楽しさと創作の楽しさを満喫している貧弱書籍化作家のつぶやきです。あー、重版したいw
☆月歌ってどんな人?こんな人↓↓☆
『嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す』が、アルファポリスの第9回BL小説大賞にて奨励賞を受賞(#^.^#)
その後、幸運な事に書籍化の話が進み、2023年3月13日に無事に刊行される運びとなりました。49歳で商業BL作家としてデビューさせていただく機会を得ました。
☆表紙絵、挿絵は全てAIイラスです
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【画像あり】八重山諸島の犬猫の話
BIRD
エッセイ・ノンフィクション
八重山の島々の動物たちの話。
主に石垣島での出来事を書いています。
各話読み切りです。
2020年に、人生初のミルクボランティアをしました。
扉画像は、筆者が育て上げた乳飲み子です。
石垣島には、年間100頭前後の猫が棄てられ続ける緑地公園がある。
八重山保健所には、首輪がついているのに飼い主が名乗り出ない犬たちが収容される。
筆者が関わった保護猫や地域猫、保健所の犬猫のエピソードを綴ります。
※第7回ほっこり・じんわり大賞にエントリーしました。
【短編エッセイ】 紙魚の海
糺ノ杜 胡瓜堂
エッセイ・ノンフィクション
本棚の愛読書の中から、個人的に心に響いたり、面白いと思ったり・・・興味を引かれたものを紹介する超短編エッセイです。
主に江戸時代の書物、その中でも無類に面白い、江戸時代の名奉行、根岸鎮衛の随筆「耳嚢」等、古い話が中心になっていますが、その時々でジャンル問わず書いてゆくつもりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる