「私はまた、失う」

うた子

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家が、なくなる

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原発事故から、一時帰宅するたびに、どんどんと崩れて行く家の内部。
二階の床が一階まで崩れ落ち、踏み込めなくなった部屋。
いつの間にか住み着いたイノブタの親子を見て、ここはもう私たちの住む家ではないのだ、と思って呆然としたのだ。

空き巣に入ったのは近所の人だったし、粉々になったのは天井の灯りだけではなくて、それはもう、たくさんの人々の心や自尊心や生きてきた歴史であった。
それを失うと言うこと。

最後に見た時は内部が崩れていても、まだ家の形を保っていた、あの私の育った家は、もう二度と見ることはできなくなってしまった。

それを知った時、私はそっと今住んでいる家の自室に戻り、一人部屋の真ん中に立ち尽くし「お家なくなっちゃったよお」と呟いた。

すると、途端に涙が勝手にぼろぼろと零れ落ちてきた。

涙の意味は?
なんだかとても心細かった。
生きてきた、今の自分を作った歴史の半分を失ったようで、心許なかったから?
わからない。
何もかもが失くなってしまったかのような気分だった。

がらんどうの中に、灼熱の炎は溜まって行くようで、ただただ痛かった。
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