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本編 魔神の誕生と滅びの帝都

31 満足できない魔族の遺体

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 魔族達との戦闘が終わった闘技場は、怪我人の手当や襲撃犯の回収などが行われていた。
 俺はふと興味を持って、動かなくなった魔族の遺体へと近づく。

「・・・。
 は?」

 俺は絶句した。
 魔族と聞いていたので、とんでもない化け物だと思っていたのに、見た目は人間と変わりない。
 微妙に角を生やしていたり、特徴的な耳の形をしていたりはあるが、はっきり言って人間だ。

「魔族が珍しいのか?」

 魔族を目の前にして呆然としていた俺に、サイアグが話しかけてきた。

「ああ、実際に見るのは初めて何でな。
 この国に来てから初体験ばかりだぜ。
 まったく、楽しいことばかりだ。」

 俺は今頃になって、自分のやったことを理解した。
 実質的に人殺しだ。

「それがこれからお前が戦っていくことになるものの姿だ。
 目に焼き付けておくがいい。」

 サイアグが言う。

「俺は別に帝国にために戦うつもりはないぜ。」

「エスフェリア皇女殿下の為に戦うのだろう?」

「まあ、約束したからな。」

「ならば私の元へ来るがいい。
 時間も無いのだろ?」

 サイアグの一言に俺は不審を抱く。

「あんた、何を知っている?」

「これから帝国で何が起こるかぐらい分かっておる。
 お節介にも、未来を教えに来る人物がおってな。」

「エスフェリア・・・殿下に聞いたのか?」

「いいや、違う人物だ。
 胡散臭い者ではあるが、言(げん)を外したことは一度も無い。」

 この世界には死に戻りやら予知能力者やらが、有象無象にいるらしい。
 まったく・・・トイレに引き籠もりたくなってくるぜ。

「ギスケといったな。
 私を見て物怖じしないとは気に入った。
 歳を聞いておこう。」

「12だ。
 あんたは?」

「ふむ。
 自分の歳を聞かれるというのは新鮮な気分だ。
 私は54になる。」

「もっと上かと思ったよ。
 眼光は鋭いが、シワが酷いぜ。」

「これは苦労のシワだ。
 難題が降りかかるごとに増えていくのでな。
 はっはっは。」

 話してみると、以外に面白いオッサンかもしれない。
 俺とサイアグの会話を、魔術師達が遠巻きに見ている。
 サイアグが笑い出したあたりで、驚愕の表情に変わっていた。
 会話の詳細までは聞こえない距離だ。

「俺に選択権はないのか?」

「ギスケ、おぬしの立場を教えておこう。
 私の元へ来なければ、危険人物として拘束され自由を奪われる。
 帝国宮廷魔術師を超える魔法を使った者が、帝国内で好き勝手できるはずがなかろう?
 12でさっきの魔法、魔王種すら凌駕するのだぞ。」

「魔王種?」

「代々魔王の血統を受け継ぐ種族だ。
 凄まじい魔力と、固有の特殊能力を持つ。
 敵としては最悪の種族だ。」

「俺は魔王種とやらじゃないぜ。」

「分かっておる。
 魔力を全く感じぬからな。
 それが逆に魔王種以上の力を示しておるのだろう。
 まあ、どちらにしても選択権がないのは理解できたな?」

 こうして俺は、宮廷魔術師サイアグの弟子っぽい立場になった。
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