79 / 208
四章 予想はよそう、第四層
79 ミスを犯したミスコン
しおりを挟む
僕に声をかけたのは剣聖ブレアだった。
「ブレアさん・・・えっとその格好は?」
「ミスコンに出ていたのを見ていなかったのね。一応、優勝したのよ。」
ドレスに身を包んだ剣聖が、その場で舞うようにくるりと一回転する。あまりの美しさに現実感が朧気で、まるでこの世のものではないように見えた。
「あの、僕に何かご用ですか?」
「アダマンタイトの剣のお礼に来たのよ。これで第七層の攻略に入れるわ。」
「大したことはしてませんよ。それに武器を作ったのは魔法・・・鍛冶屋のオヤジですから。」
「アフタがいなければ完成しなかったわ。本当にありがとう。」
僕の目をまっすぐ見つめてお礼を言う剣聖ブレア。人と目を合わせるのにまったく慣れていない僕は、そわそわして挙動不審になってしまう。どうやら剣聖用のアダマンタイト武器も完成したようだ。
「それと・・・さっき、サドンという男と話していたわよね? 何を言われたの?」
突然サドンの話になった。もしかして剣聖ブレアはイケメンのサドンが気になるのだろうか? まあ、やっぱり世の中イケメンだよね。
「僕の幼なじみがソルトシールに来ているという話を。」
「それだけ?」
「それだけです。」
リコッテの件があまりにも強烈だったので、他の内容は僕の脳内からほとんど吹き飛んでいる。すごい謎めいたことを言っていた気がするんだけど、結局何のことだかさっぱり分からなかった。
「ブレア、こんな所にいたんですの?」
武王ギデアだ。彼女はいつも通りの服装をしている。彼女はミスコンには出なかったのだろうか?
「借り物のドレスだから持ち出しはマズイですの。あ・・・もしかしてアフタさんに見せに来たんですの?」
その言葉に顔を赤くするブレア。ドレスを見せに来た? なんで?
「私もドレスのまま来れば良かったですの。」
「ギデアさんもミスコンに参加したんですか?」
「審査員特別賞をもらいましたの。」
その審査員は若干の犯罪者臭がするのは気のせいか? 気のせいだろう。うがった見方は良くない。
「せっかくですの。お祭りを一緒にまわるですの。」
ギデアがそう提案し、ブレアもそれに頷く。リコッテの件で精神的ダメージを受けていた僕は、そろそろ帰ろうかと思っていたんだけど。
コミュ障の僕に断るという選択はとれない。そのまま三人で買い食いの旅が始まった。僕のお腹はあっという間に限界に達したんだけど、剣聖と武王の胃袋は底知らずだった。次々と露店の在庫を空にしていく凶悪な二人。最強の冒険者達だけのことはある。カロリーの摂取量が尋常では無い。僕はそれを唖然とみることしか出来なかった。
途中、脳筋の人達に声をかけられたり、ジェイドンとその仲間達に改めてお礼を言われたり、その他冒険者から風呂の話やジャンクについて聞かれたりと、様々な人から話しかけられた。そういうのは苦手なのでそっとしておいて欲しい。
「アフタは顔が広いのね。」
剣聖ブレアが僕にそういった。いや、絶対にあなたの方が知名度は上ですよ。そうは思ったものの、僕は笑って話を濁した。
「アフタさん、しばらくぶりです。」
今度話しかけてきたのはスコヴィルだ。彼女は剣聖達にも会釈で挨拶する。しばらく顔を見ていなかったけれど、何だが以前よりもやつれた気がする。
「何だか元気が無いみたいですが、大丈夫ですか?」
「身体の方は全然平気です。ちょっとパーティーの中でゴタゴタがあって。でも全然大丈夫ですよ。」
そう言って無理に笑顔を作るスコヴィル。そして約束があるからと去って行った。本当に大丈夫だろうか? ふと気づくと、ブレアが意味深な表情でスコヴィルを見つめていた。二人がどの程度の面識なのかは僕には分からない。
さらに買い食いを続けていくあらゆる意味で化け物の二人。彼女たちのパーティーは明日から第七層攻略に旅立つらしい。
僕が七層へ到達する頃には、剣聖達によってダンジョン踏破が終わっているんじゃ無いだろうか? とにかくまずは第四層のクリアだ。そのための準備は既に終わっている。
【 41日目 】
単価 個数 金額 項目
-------------------------------------------------------------
4万5000蝸 1個 4万5000蝸 風呂燃料売り上げ50%
2万0000蝸 1個 2万0000蝸 鍛冶屋燃料売り上げ50%
-2万0000蝸 1個 -2万0000蝸 防具返済(2)
-8400蝸 1個 -8400蝸 買い食い
[ 残金 25万8400蝸 ]
「ブレアさん・・・えっとその格好は?」
「ミスコンに出ていたのを見ていなかったのね。一応、優勝したのよ。」
ドレスに身を包んだ剣聖が、その場で舞うようにくるりと一回転する。あまりの美しさに現実感が朧気で、まるでこの世のものではないように見えた。
「あの、僕に何かご用ですか?」
「アダマンタイトの剣のお礼に来たのよ。これで第七層の攻略に入れるわ。」
「大したことはしてませんよ。それに武器を作ったのは魔法・・・鍛冶屋のオヤジですから。」
「アフタがいなければ完成しなかったわ。本当にありがとう。」
僕の目をまっすぐ見つめてお礼を言う剣聖ブレア。人と目を合わせるのにまったく慣れていない僕は、そわそわして挙動不審になってしまう。どうやら剣聖用のアダマンタイト武器も完成したようだ。
「それと・・・さっき、サドンという男と話していたわよね? 何を言われたの?」
突然サドンの話になった。もしかして剣聖ブレアはイケメンのサドンが気になるのだろうか? まあ、やっぱり世の中イケメンだよね。
「僕の幼なじみがソルトシールに来ているという話を。」
「それだけ?」
「それだけです。」
リコッテの件があまりにも強烈だったので、他の内容は僕の脳内からほとんど吹き飛んでいる。すごい謎めいたことを言っていた気がするんだけど、結局何のことだかさっぱり分からなかった。
「ブレア、こんな所にいたんですの?」
武王ギデアだ。彼女はいつも通りの服装をしている。彼女はミスコンには出なかったのだろうか?
「借り物のドレスだから持ち出しはマズイですの。あ・・・もしかしてアフタさんに見せに来たんですの?」
その言葉に顔を赤くするブレア。ドレスを見せに来た? なんで?
「私もドレスのまま来れば良かったですの。」
「ギデアさんもミスコンに参加したんですか?」
「審査員特別賞をもらいましたの。」
その審査員は若干の犯罪者臭がするのは気のせいか? 気のせいだろう。うがった見方は良くない。
「せっかくですの。お祭りを一緒にまわるですの。」
ギデアがそう提案し、ブレアもそれに頷く。リコッテの件で精神的ダメージを受けていた僕は、そろそろ帰ろうかと思っていたんだけど。
コミュ障の僕に断るという選択はとれない。そのまま三人で買い食いの旅が始まった。僕のお腹はあっという間に限界に達したんだけど、剣聖と武王の胃袋は底知らずだった。次々と露店の在庫を空にしていく凶悪な二人。最強の冒険者達だけのことはある。カロリーの摂取量が尋常では無い。僕はそれを唖然とみることしか出来なかった。
途中、脳筋の人達に声をかけられたり、ジェイドンとその仲間達に改めてお礼を言われたり、その他冒険者から風呂の話やジャンクについて聞かれたりと、様々な人から話しかけられた。そういうのは苦手なのでそっとしておいて欲しい。
「アフタは顔が広いのね。」
剣聖ブレアが僕にそういった。いや、絶対にあなたの方が知名度は上ですよ。そうは思ったものの、僕は笑って話を濁した。
「アフタさん、しばらくぶりです。」
今度話しかけてきたのはスコヴィルだ。彼女は剣聖達にも会釈で挨拶する。しばらく顔を見ていなかったけれど、何だが以前よりもやつれた気がする。
「何だか元気が無いみたいですが、大丈夫ですか?」
「身体の方は全然平気です。ちょっとパーティーの中でゴタゴタがあって。でも全然大丈夫ですよ。」
そう言って無理に笑顔を作るスコヴィル。そして約束があるからと去って行った。本当に大丈夫だろうか? ふと気づくと、ブレアが意味深な表情でスコヴィルを見つめていた。二人がどの程度の面識なのかは僕には分からない。
さらに買い食いを続けていくあらゆる意味で化け物の二人。彼女たちのパーティーは明日から第七層攻略に旅立つらしい。
僕が七層へ到達する頃には、剣聖達によってダンジョン踏破が終わっているんじゃ無いだろうか? とにかくまずは第四層のクリアだ。そのための準備は既に終わっている。
【 41日目 】
単価 個数 金額 項目
-------------------------------------------------------------
4万5000蝸 1個 4万5000蝸 風呂燃料売り上げ50%
2万0000蝸 1個 2万0000蝸 鍛冶屋燃料売り上げ50%
-2万0000蝸 1個 -2万0000蝸 防具返済(2)
-8400蝸 1個 -8400蝸 買い食い
[ 残金 25万8400蝸 ]
0
お気に入りに追加
366
あなたにおすすめの小説
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました
mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。
ーーーーーーーーーーーーー
エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。
そんなところにある老人が助け舟を出す。
そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。
努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。
エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
国が滅ぼされる原因となる男のモブ妻ですが、死にたくないので離縁します!~離縁したらなぜか隣国の皇太子に愛されました~
Na20
恋愛
夫と王女の浮気現場を目撃した私は、その衝撃で前世の記憶を思い出した。どうやら私は小説の最初の最初に出てくる一国を滅ぼす原因となる男(夫)の妻に転生してしまったようだ。名もなきモブ妻は夫の連座となり処刑される運命…
(そんなのやってられるか!)
なんとか死の運命から逃れるために、王女の婚約者である隣国の皇太子に一か八か願い出る。
そうして気がつけばなぜか皇太子に愛されていて…?
※ご都合主義ですのでご了承ください
※ヒロインはほぼ出てきません
※小説家になろう様でも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる