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7章 次への引き継ぎと暗躍の者達

197 不当に太る評価

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 行軍は順調に進み、帝国軍の展開している部隊との合流地点まで目前となった。
 そろそろ敵軍が潜んでいてもおかしくない地域に入っている。
 ルディンからそろそろ陣形を組み直し、臨戦態勢に入った方が良いというアドバイスをもらった。
 今のままだと進軍速度を優先して隊列が縦に伸びているため、側面から攻撃されると大打撃となってしまう。

 恒例になった歌の慰安回りが終わったところで指示を出そうとした矢先、見事に奇襲を受けた。
 クルセイダーズの部隊約三千が、タイミング良く側面を突いてきたのだ。
 まあ歩くGPSの私がいるんだから、位置はバレている。
 奇襲も容易なのだろう。

 そして前方を進軍していた第一師団が見事に分断された。
 前方が孤立し、後方部隊に投石や矢が雨のように降り注ぐ。
 後方を足止めしつつ、孤立した前方部隊に再度突撃をするクルセイダーズ。
 聞いていた通り、強力な装備と神の残滓を駆使するようだ。

 凄い勢いで第一師団の部隊が損耗していく。
 こうなるといったん引いて、体勢を立て直す必要が出てくる。
 しかし後続の部隊が直列に伸びているため、この行軍姿勢から後退させるのは至難の業だ。
 しかも前方部隊は各個撃破されている最中だ。

 私は別に焦ってはいなかった。
 奇襲を受けて損耗が広がろうが何の問題も無い。
 相手の出方がよく分かったから良しとしよう。

 私は永劫の回帰を発動させる。
 今回はセーブを忘れるミスはしていない。

 奇襲を受ける少し前に時間を戻した。
 すぐに先頭の師団に対して、鶴翼(かくよく)陣形を指示する。
 直列の行軍状態に対して側面から攻撃が来るなら、直列を少し変形させてV字型で迎え撃てば無駄が少ない。
 さらに私の直属部隊に投石や矢を飛ばしていた場所に対して、広域魔法の指示を出した。
 目標地点は高台にある森だ。
 相手の姿は確認できないが、たぶん当たっているはずだ。

 そしてさっきと同じように、クルセイダーズが側面に突撃してくる。
 私は味方に当たらないように、魔法で精密攻撃をしかける。
 吹き飛ばされていくクルセイダーズ。
 しかし威力のある魔法であるにもかかわらず、吹き飛ばされたクルセイダーズはまだ動ける状態にあった。
 想定していた以上に堅い装備だ。

 私の魔法攻撃では致命的な状態にはならなかったものの、突撃の勢いは失われた。
 そこから鶴翼陣形をとった第一師団が挟撃していく。
 あっという間に殲滅戦となった。

 そもそも私を相手に奇襲など無意味なのだ。
 相手の作戦を見た上で、勝てるまでやり直しが可能なのだから。
 こうして初戦は圧倒的な勝利に終わった。

 ちなみに私が出した指示は、会議で打ち合わせ済みの想定内の内容だ。
 ルディンからタイミングなども教えてもらっているので、実は私は用意されたシナリオ通りに動いただけなのだ。
 しかし初戦の大勝利によって士気はますます上がる。
 魔王アリスの評価が、実際とは違う形で不当に上がっていく。

 シナリオが用意されれば、指示は誰でも出せる。
 私にしか出来ない事と言えば、時間を戻すことぐらいだ。
 それをルディンに言ったら、その時間を戻すのが反則レベルで重要なんだと言われた。
 まあ、反則よね。

 勝利には終わったはずなのに、ルディンは今回の戦いを分析して何やら考え込んでいるようだ。
 相手の装備や神の残滓の力、そして動きや統率状態、さらに作戦の意図、そういったものを凄まじい広さと深さで思考している。
 私にはとても想像できないような速度で分析が進んでいるようだ。

 そしてルディンが結論を出した。
 このままだと私達は負けると。







 負け犬無双?
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