193 / 262
7章 次への引き継ぎと暗躍の者達
194 川の氾濫のような反乱
しおりを挟む
帝国と魔領の軍事同盟が結成され、クルセイダーズを主力とする神側との戦いは好転するかに思えた。
しかし実際は状況が悪化している。
帝国国内で真実の歴史と神との戦いを布告し、魔領と同盟を結んだことを伝えると、各所で反乱が起こり始めた。
今まで敵だった魔族と手を結んだのだ、やはりタダでは済まない。
各所で起こった反乱は小規模なものが多い。
しかし最悪の場所で最大の反乱が起こった。
大聖堂のあるエンプティモの街が反旗を翻し、クルセイダーズ側に味方したのだ。
エンプティモの街は、対クルセイダーズ戦の要所になっている。
そして街を守るために展開していた帝国軍は、後方の反乱によって撤退を余儀なくされた。
挟み撃ちにされる状況になったからだ。
もし反乱の鎮圧を行えば、背中をクルセイダーズに刺されることになる。
情報は通信機経由で行軍準備中の私の元にもたらされた。
ルディンの分析では、反乱はエスフェリアの布告の前から準備されたものらしい。
あまりにタイミングと手口が出来すぎているのだ。
そして大聖堂の人間は、最初から神側に付いていたのだろう。
教会が神側というのは、考えてみれば当たり前か。
そしてサブオーレンから一つの情報がもたらされる。
以前私の父がエンプティモに死霊術を使う精鋭の魔族を派遣し、街を潰そうとしたのだ。
その時サブオーレンは、試しの剣の破壊もしくは奪取を目的に命令したのだと思っていたそうだ。
今にして思えば、神側の人間を倒すことが目的だったのかも知れないと言っていた。
計画は勇者ジキルと彼によって失敗に終わる。
このタイミングは偶然だろうか?
教会は父の計画を知って、タイミング良くエンプティモに勇者を送り込んだのかも知れない。
ルディンの意見は、偶然と故意どちらの可能性もあると言っている。
ただし故意だと考えた場合、神側の情報網や情報伝達手段は想像していたよりも遙かに優れていることになる。
これから戦う上で、それを前提としなければ危険だということだ。
出発の準備が整い、魔領の軍は北側迂回ルートを目指す。
途中で案内を務める帝国軍の大隊と合流することになっている。
監視の意味もあるのだろうけれど、帝国の町や村を通るときにいてくれないと困る。
話が分かる指揮官を回してくれていることを期待したい。
「陛下、これを。」
出立前にサブオーレンが一振りの剣を差し出す。
「遅ればせながら、先王陛下の形見の剣でございます。」
私はその剣を手に取った。
かなり強力な魔力を感じ取れる。
「先王陛下が勇者と戦うときに用いたものでございます。
わずかな傷でも付けることが出来れば、その者は心臓を呪いの鎖で縛られることになるのです。」
サブオーレンはそう言った。
物騒極まりない魔剣だ。
私と戦ったときに使わなかったのは情をかけたと言うより、時間を戻されたら無意味だからだろう。
私はその剣をサブオーレンに渡した。
そして魔剣で魔領を守るのに使うようにと命じた。
ようやく始まった行軍中、さらに情報がもたらされる。
帝国周辺の国に入り込んだクルセイダーズが反転し、エンプティモ方面へ集結しているとのことだった。
帝国の神の遺跡はエンプティモから南西方向にある。
おそらく戦力を集中し、そこへ向かうつもりなのだろう。
クルセイダーズが反転したのは、作戦上の理由だけでは無いらしい。
遺跡街レイネスの部隊が各国で戦闘を行い、クルセイダーズと次々と敗走させている。
どうやらレイネスの部隊は空から降りてくるらしい。
そして他国の地上戦力と協力し、奇襲による攪乱や殲滅を行う手法をとるという。
兵の数は少ないものの、一人一人の火力が高レベルの魔術師に匹敵する能力を有しているらしい。
そして戦闘を終えると素早く次の戦場へ移動し、兵力の少なさを補っているようだ。
未だに敵であるという疑いが捨てきれないけれど、味方なのだとすると頼もしい限りだ。
魔領と同盟関係を結んだことによって、帝国軍の主力はエンプティモ周辺に展開し、クルセイダーズと睨み合う格好になっているようだ。
しかし反乱の鎮圧にも少なからぬ兵力を割くことになってしまったため、運用が上手くいっているとはいえないようだ。
長引く前に勝負を付けなければマズい。
クルセイダーズは時間が経過と供に、どんどん力が増強されているのだ。
魔領の軍が間に合うかどうか、微妙な状況になってきた。
ただでさえ遠回りしているのだ。
あとは魔神ギスケの力を信じるしか無いのだろう。
焦っても行軍速度は速くならない。
そして行軍中、一人の魔族が私との面会を求めてやってきた。
名をブリゲアンと名乗ったのだった。
最終的に誰が無双することになるのか。
しかし実際は状況が悪化している。
帝国国内で真実の歴史と神との戦いを布告し、魔領と同盟を結んだことを伝えると、各所で反乱が起こり始めた。
今まで敵だった魔族と手を結んだのだ、やはりタダでは済まない。
各所で起こった反乱は小規模なものが多い。
しかし最悪の場所で最大の反乱が起こった。
大聖堂のあるエンプティモの街が反旗を翻し、クルセイダーズ側に味方したのだ。
エンプティモの街は、対クルセイダーズ戦の要所になっている。
そして街を守るために展開していた帝国軍は、後方の反乱によって撤退を余儀なくされた。
挟み撃ちにされる状況になったからだ。
もし反乱の鎮圧を行えば、背中をクルセイダーズに刺されることになる。
情報は通信機経由で行軍準備中の私の元にもたらされた。
ルディンの分析では、反乱はエスフェリアの布告の前から準備されたものらしい。
あまりにタイミングと手口が出来すぎているのだ。
そして大聖堂の人間は、最初から神側に付いていたのだろう。
教会が神側というのは、考えてみれば当たり前か。
そしてサブオーレンから一つの情報がもたらされる。
以前私の父がエンプティモに死霊術を使う精鋭の魔族を派遣し、街を潰そうとしたのだ。
その時サブオーレンは、試しの剣の破壊もしくは奪取を目的に命令したのだと思っていたそうだ。
今にして思えば、神側の人間を倒すことが目的だったのかも知れないと言っていた。
計画は勇者ジキルと彼によって失敗に終わる。
このタイミングは偶然だろうか?
教会は父の計画を知って、タイミング良くエンプティモに勇者を送り込んだのかも知れない。
ルディンの意見は、偶然と故意どちらの可能性もあると言っている。
ただし故意だと考えた場合、神側の情報網や情報伝達手段は想像していたよりも遙かに優れていることになる。
これから戦う上で、それを前提としなければ危険だということだ。
出発の準備が整い、魔領の軍は北側迂回ルートを目指す。
途中で案内を務める帝国軍の大隊と合流することになっている。
監視の意味もあるのだろうけれど、帝国の町や村を通るときにいてくれないと困る。
話が分かる指揮官を回してくれていることを期待したい。
「陛下、これを。」
出立前にサブオーレンが一振りの剣を差し出す。
「遅ればせながら、先王陛下の形見の剣でございます。」
私はその剣を手に取った。
かなり強力な魔力を感じ取れる。
「先王陛下が勇者と戦うときに用いたものでございます。
わずかな傷でも付けることが出来れば、その者は心臓を呪いの鎖で縛られることになるのです。」
サブオーレンはそう言った。
物騒極まりない魔剣だ。
私と戦ったときに使わなかったのは情をかけたと言うより、時間を戻されたら無意味だからだろう。
私はその剣をサブオーレンに渡した。
そして魔剣で魔領を守るのに使うようにと命じた。
ようやく始まった行軍中、さらに情報がもたらされる。
帝国周辺の国に入り込んだクルセイダーズが反転し、エンプティモ方面へ集結しているとのことだった。
帝国の神の遺跡はエンプティモから南西方向にある。
おそらく戦力を集中し、そこへ向かうつもりなのだろう。
クルセイダーズが反転したのは、作戦上の理由だけでは無いらしい。
遺跡街レイネスの部隊が各国で戦闘を行い、クルセイダーズと次々と敗走させている。
どうやらレイネスの部隊は空から降りてくるらしい。
そして他国の地上戦力と協力し、奇襲による攪乱や殲滅を行う手法をとるという。
兵の数は少ないものの、一人一人の火力が高レベルの魔術師に匹敵する能力を有しているらしい。
そして戦闘を終えると素早く次の戦場へ移動し、兵力の少なさを補っているようだ。
未だに敵であるという疑いが捨てきれないけれど、味方なのだとすると頼もしい限りだ。
魔領と同盟関係を結んだことによって、帝国軍の主力はエンプティモ周辺に展開し、クルセイダーズと睨み合う格好になっているようだ。
しかし反乱の鎮圧にも少なからぬ兵力を割くことになってしまったため、運用が上手くいっているとはいえないようだ。
長引く前に勝負を付けなければマズい。
クルセイダーズは時間が経過と供に、どんどん力が増強されているのだ。
魔領の軍が間に合うかどうか、微妙な状況になってきた。
ただでさえ遠回りしているのだ。
あとは魔神ギスケの力を信じるしか無いのだろう。
焦っても行軍速度は速くならない。
そして行軍中、一人の魔族が私との面会を求めてやってきた。
名をブリゲアンと名乗ったのだった。
最終的に誰が無双することになるのか。
0
お気に入りに追加
622
あなたにおすすめの小説
虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~
すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》
猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。
不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。
何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。
ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。
人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。
そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。
男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。
そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。
(
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
夜明けの続唱歌
hidden
ファンタジー
炎に包まれた故郷。
背を灼かれるように、男は歩き続けていた。
辺境では賊徒が跋扈し、都では覇権や領土の奪い合いが繰り返されていた。
怯えながら、それでも慎ましく生きようとする民。
彼らに追い打ちをかけるように、不浄な土地に姿を現す、不吉な妖魔の影。
戦火の絶えない人の世。
闘いに身を投じる者が見据える彼方に、夜明けの空はあるのだろうか。
>Website
『夜明けの続唱歌』https://hidden1212.wixsite.com/moon-phase
>投稿先
『小説家になろう』https://ncode.syosetu.com/n7405fz/
『カクヨム』https://kakuyomu.jp/works/1177354054893903735
『アルファポリス』https://www.alphapolis.co.jp/novel/42558793/886340020
現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
転生賢者の異世界無双〜勇者じゃないと追放されましたが、世界最強の賢者でした〜
平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人は異世界へと召喚される。勇者としてこの国を救ってほしいと頼まれるが、直人の職業は賢者であったため、一方的に追放されてしまう。
だが、王は知らなかった。賢者は勇者をも超える世界最強の職業であることを、自分の力に気づいた直人はその力を使って自由気ままに生きるのであった。
一方、王は直人が最強だと知って、戻ってくるように土下座して懇願するが、全ては手遅れであった。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる