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6章 魔王の息子と最後の無双

173 夢幻のような無限ループ

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 アサシンに襲われるイベントはあったものの、その後は何事も無く魔領北の宮殿の近くまでたどり着いた。
 街を抜けてたその奥に広大な敷地があり、立派な宮殿が建立されているという。
 僕も生後しばらくはそこにいたはずなのだけれど、あまり記憶には残っていない。

 僕達が街に入ろうとすると、明らかにただ者では無い雰囲気のある魔族の女が立ち塞がった。
 暗黒騎士クリセリオンが相対する。

「貴殿、何用か?」

 クリセリオンが警戒し声をかける。

「あなたに用はありません。
 タレンティ、どの顔で戻ってきたのですか?」

 魔族の女はタレンティを睨む。

「ヴェネス、約束を果たすために戻ってきました。
 連れてきたのです、オキス様を。」

「知ってますよ。
 アサシンギルドを使って実力は確認しましたから。
 アリス殿下と謁見する権利は有するでしょう。
 しかし命の保証は出来ませんよ?」

「結局、アリスに会わせてもらえるということかな?」

「はい。
 しかし分かっていらっしゃいますか?
 殿下のお怒りを。」

 え、怒ってるの?
 まだ会ってもいないのに?

「いったいどういう?」

「ご自分でお確かめください。
 重ねて言いますが、命の保証は出来かねます。」

 僕達は街をスルーして、そのまま宮殿に案内された。
 宮殿は僕が赤ん坊の時に一度燃えたはずなのだけれど、そんな片鱗は全くなかった。
 そして凄まじい広さの謁見の間に通された。
 ヴェネスに促され、僕だけが前に進む。

 いた。
 見た目は前世と全く違っていたけれど、何故か確信できる。
 彼女だ。
 笑っちゃうぐらい美少女になっていた。
 どこぞの変人皇帝を超えるレベルだ。
 前世の顔は中の上ぐらいでそこまで美人では無かった。
 そこで僕は、ついやらかしてしまった。

「ぶっ。」

 吹き出した。
 心構えが出来ていなかった。
 いや、ある程度覚悟を持ってここに来たはずなのに、覚悟のベクトルがズレていた。

 次の瞬間、凄まじい数の尖った岩が僕に向けて飛んでくる。
 魔法だ。
 これは物理変換が強すぎて吸収できない。
 神の残滓を使い、肉体強化を図る。
 そして躱しきれない分だけ剣で打ち落とす。
 いきなりだったが、このぐらいは対処可能だ。 

 魔法を使ったのはアリスだ。
 僕は「いきなり何をするんだ」と言おうと思った。
 しかし出来なかった。

 次の瞬間、凄まじい数の尖った岩が僕に向けて飛んでくる。
 魔法だ。
 これは物理変換が強すぎて吸収できない。
 神の残滓を使い、肉体強化を図る。
 そして躱しきれない分だけ剣で打ち落とす。
 いきなりだったが、このぐらいは対処可能だ。 

 ・・・ちょっと待て。
 さっきやらなかったか?
 状況と記憶のズレで混乱する。

 次の瞬間、凄まじい数の尖った岩が僕に向けて飛んでくる。
 魔法だ。
 これは物理変換が強すぎて吸収できない。
 神の残滓を使い、肉体強化を図る。
 そして躱しきれない分だけ剣で打ち落とす。
 いきなりだったが、このぐらいは対処可能だ。 

 まずい、ループしてる。
 時間操作だ。
 状況を戻されてる。

 ギスケが言っていた。
 時間が戻った後、記憶がタイムリープすると。
 つまり物理的には時間が戻され、現在の記憶が過去に戻る。
 そして過去が現在になる。

 そんなことを考えている間に、何度目か分からないほどループが行われる。
 そしてついに回避に失敗する。
 腕や足に岩石が突き刺さる。
 ヤバいと思った瞬間、再び状況が戻る。
 傷は無くなっていたけれど、痛みが記憶からフィードバックされる。

 時間が戻されるから仲間が助けに入ることも出来ない。
 延々と切り取った時間の中で精神をすり減らされる。
 なんて能力だ。
 
 そのうち、滅茶苦茶強い強敵が現れて窮地に立たされるんだ。
 僕はそんなことを思ったのを思い出した。








 これが時間操作無双か!
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