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6章 魔王の息子と最後の無双

161 咲く蘭を飲み込む錯乱

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 僕はすぐに意識を失った。
 魔力と体力を使い果たしたのだ。
 そして次に目覚めたとき、僕はベッドの上だった。

 目の前には宮廷魔術師エルシアが立っていた。
 その表情は絶望と恐怖に歪んでいた。

「エルシアさん?」

 僕は声をかけた。
 その声に驚いたように体を震わせる。

 僕は一体どれだけ眠っていたのだろう?
 もしかして戦況が悪い方向へ向かってしまったのだろうか?

「僕はどれだけ眠って・・・。
 もしかして、戦況が思わしくないんですか?」

 僕は問いかけた。
 その問いにエルシアさんは引きつった笑みを浮かべる。

「戦況が思わしくない?
 あははは、確かに思わしくないわね。
 だって戦う相手が・・・あっという間に消滅したんだから。
 十万よ、十万!
 奴らがいた場所ごとごっそり削り取って消滅。
 笑っちゃうわ、あははは。」

 エルシアの様子がおかしい。
 錯乱している?
 というか消滅って・・・。

「何度あなたを殺そうと思ったことか。
 陛下の勅命が無ければ、眠っている間にあなたを殺しているところよ。」

 腰に下げている短剣らしきものに手をかけて、物騒なことを言うエルシア。
 怯えている目、それは僕に向けられた視線だった。

 もしかしてあの闇魔法の結果?
 あくまで光の塊を迎撃するための魔法だったんだけど・・・。

「あの、目が覚めたばかりでイマイチ状況が掴みきれないんですが。」

 僕は詳しい説明を求めた。

「あなたの魔法が、敵の大規模攻撃魔法を消滅・・・吸収して、そのまま敵のあらゆるモノを飲み込んで爆発したのよ。
 山も木も草も魔族も魔物も、土でさえ・・・。
 周囲何十キロ・・・何も残ってないわよ。
 本当に何も。」

 僕はまたしても甘く見すぎていた。
 自分と仲間達の力を。

 すでに上位レベルの魔力を手にして、賢者の杖というチート武器を持つ僕。
 今までの知識と経験の集大成、賢者の杖でできる限り高性能な闇を発生させたつもりだった。
 勇者とか先代勇者から俺より攻撃力が上だと言われている人達。
 全員がフルパワーでさらに力を込めた闇の魔法。
 たぶんそれぞれの力が合わさって、無茶苦茶な変化まで起こしていたのだろう。
 それが阿呆な力を発揮したらしい。
 聞いた限り、神魔砲を余裕で超えた。

「敵の魔法が危険そうなので、とっさに思いついた魔法で迎撃してみたんですが・・・。」

 僕は正直に話した。

「とっさに思いついた?
 あれを?
 あはははは。」

 やばい、何か踏んづけた。
 地雷?虎の尾?

「さすが最悪の魔王アストレイアの息子ね。
 初めて会ったときは半信半疑だったけど、今は確信を持って言えるわ。
 あなたは魔王。
 今の魔王のグレバーン?
 あんなの雑魚よ、あなたに比べればね。」

 エルシアは短剣を握る手に力が入る。
 しかし手を離した。
 そしてそれから何も言わずに部屋から出て行った。

 色々ヤバいことになってしまった。
 どうしよう?







 取り返しのつかない無双だった。
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《異界の国に召喚されたら、いきなり魔王に攻め滅ぼされた》
同じ世界の別の場所での話になります。
オキス君が生まれる少し前から始まります。
感想 24

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