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6章 魔王の息子と最後の無双

156 鳥でもないと砦にはなかなかたどり着けない

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「ギスケはケルガナーダ公国へ向かいなさい。
 グラビデン砦の防衛戦の立案はエルシアに任せます。」

 皇帝エスフェリアが命令を下す。

「おい、さすがにあの団体様相手に俺抜きじゃきついだろ。」

 ギスケが反論する。

「ケルガナーダ公国から受けた恩は計り知れません。
 今こそ報いる時です。
 そしてエンプティモの兵力は、ケルガナーダ公国への侵攻が囮である可能性を考えると動かせません。
 迅速に対処するにはギスケが行くのが最良です。」

 たぶん帝国は首都が陥落した後の混乱の中、ケルガナーダ公国からの援助を受けたのだろう。
 位置的にはエンプティモに集中させている兵力をケルガナーダ公国に向ける手も確かにある。
 しかし皇帝が言った通り公国への侵攻がブラフで、戦力の落ちたエンプティモが狙われる可能性も十分に考えられる。
 この皇帝、頭が飛んでいるだけの人かと思っていたら、実はかなり出来るようだ。

「大丈夫です。
 こちらには心強い味方が増えましたから。
 そうですよね?」

 皇帝が僕に微笑みかける。
 不敬なことを考えていたのがバレた?
 ギスケも僕を見る。

「・・・頼めるか?」

 うわ、頼まれたよ。
 僕もギスケと同意見で、ギスケ無しで団体様はキツいと思うんだけど。

「僕に出来ることなら協力するよ。
 それにこっちには勇者もいるしね。」

 まあ、僕に選択肢は無い。
 勇者ジキルが最近どんどん強くなっているので、僕は彼を頼りにしよう。
 個人で団体の相手は難しいけれど、いざとなったら敵将の首を取ってくれば良いのだ。
 勇者って考えてみるとテロリストみたいな存在だよなあ。
 やっていることは拠点の破壊や要人暗殺だし。
 エンプティモ防衛戦の時もジキルが敵将の首をとって解決してるんだよね。

 急な事態で、悪徳商人ペネッティの件が宙ぶらりんになっている。
 まあ、優先度は高くないから良いか。
 未だ本人の顔すら見てないんだけど。
 
 結局アデルタの姉にも会ってない。
 まずは防衛戦を成功させた後に考えよう。
 失敗したらそれどころでは無くなってしまうのだから。

 そして細かい作戦が話し合われる。
 それが終わるとギスケは10人ほどの騎士を伴い、飛龍に乗ってケルガナーダ公国に出発した。
 これで北方面が落ちる心配は無いだろう。
 遺跡街もこれで安心だ。

 僕はブリゲアンと連絡を取る。
 念のため旗下の兵力をグラビデン砦側に移動してもらう。
 僕の指示で動く魔族陣営は魔族と子飼いの魔物で構成されている。
 ゴブリンやオークは魔物に分類される。
 試しにゴブリンに銃を渡してみたことがあるのだけど、さっぱり使い物にならなかった。
 弓は使えるのに。

 ブリゲアンからは、的の魔族と戦う上での注意点を教えてもらった。
 複数の魔族で構成される戦術攻撃魔法がけっこうヤバいらしい。
 ギスケなら防ぎそうだけど、僕で対処できるかは不安が残る。

 帝国軍だけで対処できなくなったら旗下の魔族達を投入することになるだろう。
 ただしその状況というのは、本当に最悪の事態だということだ。
 そこまで追い込まれないように戦いたい。

 現在僕の街から届いている武器は、試供品で渡した銃が二十丁ほど。
 後は手榴弾などが細々あるだけだ。
 三日後には三百丁程届くけれど、使い方の訓練をしている暇は無い。
 現時点でまともに扱えるのはネリネの配下が三十人ほどだ。
 しかし十万の敵兵相手でも砦の防衛戦なら、敵は全部隊を同時に展開できるわけでは無い。
 素人が混ざっていてもなんとかなるだろう。
 

 





 準備時間が足りないので、近代兵器無双が出来ないかも知れない。
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