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2章 放たれた魔銃と幸運の石

39 弟子になってもデシリットルって単位の必要性は分からない

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 僕は形式上、宮廷魔術師クルデウスに弟子入りした形になる。
 ということで白い髭の老人を師匠と呼ぶことになった。
 何故か本人から師匠と呼ぶように厳命されている。

 そして現在の身分は「王国政戦略統括室統括魔術顧問付」だ。
 何を言っているのか深く考えるのはよそう。
 身分証のメダルをもらったので、必要なときはこれを提示して名乗るらしい。
 名乗っているときに噛んだら恥ずかしいことになるのだけれど、何とかならないのかな。
 
 僕が現在いる場所は王宮内の端にある研究施設兼師匠の政務室だ。
 僕は王族でも貴族でもないので、王宮の出入りは物資の搬入なども行われる通用口を通ることになる。
 そこから近いのは良いんだけど、宿舎からは通用口までが遠い。

 ちなみに最近僕に付いていた尾行はクルデウス師匠の指示だった。
 ジェイソン所長から僕のことを聞いた師匠は、僕を国の重要人物に指定したらしい。
 そして護衛を派遣したそうだ。
 監視の意味合いもあるんだろう。
 そんな矢先、研究所の方で事件が起きたため、師匠が直接乗り込んでくることになった。
 公園で出会ったのは偶然ではない。
 僕の動きは完全に把握されていたようだ。


「オキス、ヌシが最初にやらねばならぬ仕事は分かっておるな。
 そのメダルを提示すれば、統括室の権限で調査することが出来る。
 必要な情報を集めてくるのじゃ。」

「分かりました。
 必ず真相を突き止めて見せます。」

「それと念のためサポートを付けよう。
 情報管理室のセフィリアだ。」

 栗色の髪の女性。
 明らかに見たことがあるような。

「お久しぶりですね。
 私のことは覚えていますか?」

 忘れるわけがない。
 転生後、初めて会話した人間なのだから。
 髪が長くなり、服装が情報管理室の制服らしきのもになっていたので印象はだいぶ変わっている。

「はい、覚えています。
 助けていただいて感謝しています。
 あの時はお礼どころか、名前も聞きそびれてしまったのに。
 すごい巡り合わせですね。」
 
「元気そうで嬉しいです。
 あの時は上役の方と一緒に目的地に向かう最中だったんです。
 まさかあんなことになるなんて。」

 その頃から情報管理室に所属していたとすると、修道服を着て目的地を目指すあたり、何らかのスパイ活動だったのかもしれない。
 深く突っ込むのはよそう。

「それではオキス様、まず何から調査なさいますか?」

「様?」

「はい、立場的に私より上の役職でいらっしゃいます。」

 師匠がニヤニヤしている。
 僕は師匠の方を見ていった。

「どうなってるんですか?」

「権限は与えた。
 ヌシはそれを上手く使えば良い。」
 
 公園では優しげな老人だと思ったけれど、さすがに立場がある人間だ。
 僕は試されている。
 これはテストなのだろう。
 師匠は僕自分の言わんとすることを僕が理解したと感じ取ると、優しくうなずいた。

「まずはテイラン先輩から話を聞くことにします。」

 僕は先輩が拘留されている施設を目指した。
 
 


 弟子権限無双が出来るのかな
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