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2章 放たれた魔銃と幸運の石
38 気がついたら弟子でした
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事件があってから一夜明けた。
研究所はまだ閉鎖中で先輩との面会もさせてもらえなかった。
やることが無くなってしまった僕は、図書館へ行く気も起こらず、天気も良いので公園を行くことにした。
さすがに歴史ある王国の首都だけあって、とても良く整備されている。
シンプルながらもよく見ると意匠を凝らした噴水、植えてある草花も目を楽しませてくれる。
僕がこの街に来てからは、研究所、宿舎、図書館、飲食店をぐるぐる回っていた気がする。
飲食店は美味しいところを、先輩の案内で一緒に回ったりしていたのだ。
そんな生活はやることが多く、そして楽しくて。
まさかこんな形で終わりを告げるとは思わなかった。
僕はベンチに腰掛けると空を見上げた。
太陽がまぶしかったので目をつぶった。
「君、ここに座っても良いかね。」
声がしたので目を開けると、杖をついた優しそうな老人が立っていた。
「どうぞ。」
僕がそう答えると、老人がゆっくり座った。
白い髭を蓄えたサンタクロースのような老人だ。
「君は年はいくつかね。」
「六歳になります。」
「ほう、学校はどうした?」
「僕は学校へは通っていません。
田舎から出てきて、伝手でジェイソン魔術研究所でお手伝いをさせてもらっています。」
「そうか、大変だのう。
学校へ通いたいとは思わないのかね。」
「そういうのも良いかもしれませんが、研究所の仕事の方が楽しいと思います。
だから今のままで満足ですよ。
今のままで・・・。」
僕は昨日の事件の事を思い出した。
そう、昨日までは満足だったのだ。
「私も少々立場のある人間でな。
研究所の方で不幸があったのは知っておる。
大変だったの。」
「気持ちの整理をつけたくてここに来ました。
未だに信じられない気持ちでいっぱいです。」
「整理はつきそうかの?」
「残念ながら。
事件の真相が分かるまでは無理だと思います。」
老人は心配している表情をしつつ、優しそうな目で僕を見た。
そしてあることに気がつく。
青いペンダントだ。
この街での流行(はやり)なのだろうか?
僕がペンダントを見つめていると、それに気がついた老人が言った。
「これは同じものを弟子達に授けておってな。
幸運を招く石だから、いずれ大切な人が出来たらその人に渡しなさいといっておる。」
そしてその青い石のペンダントを僕に差し出し言った。
「私の元へ来い、オキス。
そして共に今回の事件の真相を明らかにするのじゃ。
ヌシのことはジェイソンから聞いておる。」
そして老人は白い髭を撫でながら言った。
「言い忘れておったな。
私の名はクルデウス、この国の宮廷魔術師をしておるものじゃ。」
僕は手を伸ばすと、青いペンダントを受け取った。
真実の断片を掴むために。
迷探偵無双が始まってしまうのか。
研究所はまだ閉鎖中で先輩との面会もさせてもらえなかった。
やることが無くなってしまった僕は、図書館へ行く気も起こらず、天気も良いので公園を行くことにした。
さすがに歴史ある王国の首都だけあって、とても良く整備されている。
シンプルながらもよく見ると意匠を凝らした噴水、植えてある草花も目を楽しませてくれる。
僕がこの街に来てからは、研究所、宿舎、図書館、飲食店をぐるぐる回っていた気がする。
飲食店は美味しいところを、先輩の案内で一緒に回ったりしていたのだ。
そんな生活はやることが多く、そして楽しくて。
まさかこんな形で終わりを告げるとは思わなかった。
僕はベンチに腰掛けると空を見上げた。
太陽がまぶしかったので目をつぶった。
「君、ここに座っても良いかね。」
声がしたので目を開けると、杖をついた優しそうな老人が立っていた。
「どうぞ。」
僕がそう答えると、老人がゆっくり座った。
白い髭を蓄えたサンタクロースのような老人だ。
「君は年はいくつかね。」
「六歳になります。」
「ほう、学校はどうした?」
「僕は学校へは通っていません。
田舎から出てきて、伝手でジェイソン魔術研究所でお手伝いをさせてもらっています。」
「そうか、大変だのう。
学校へ通いたいとは思わないのかね。」
「そういうのも良いかもしれませんが、研究所の仕事の方が楽しいと思います。
だから今のままで満足ですよ。
今のままで・・・。」
僕は昨日の事件の事を思い出した。
そう、昨日までは満足だったのだ。
「私も少々立場のある人間でな。
研究所の方で不幸があったのは知っておる。
大変だったの。」
「気持ちの整理をつけたくてここに来ました。
未だに信じられない気持ちでいっぱいです。」
「整理はつきそうかの?」
「残念ながら。
事件の真相が分かるまでは無理だと思います。」
老人は心配している表情をしつつ、優しそうな目で僕を見た。
そしてあることに気がつく。
青いペンダントだ。
この街での流行(はやり)なのだろうか?
僕がペンダントを見つめていると、それに気がついた老人が言った。
「これは同じものを弟子達に授けておってな。
幸運を招く石だから、いずれ大切な人が出来たらその人に渡しなさいといっておる。」
そしてその青い石のペンダントを僕に差し出し言った。
「私の元へ来い、オキス。
そして共に今回の事件の真相を明らかにするのじゃ。
ヌシのことはジェイソンから聞いておる。」
そして老人は白い髭を撫でながら言った。
「言い忘れておったな。
私の名はクルデウス、この国の宮廷魔術師をしておるものじゃ。」
僕は手を伸ばすと、青いペンダントを受け取った。
真実の断片を掴むために。
迷探偵無双が始まってしまうのか。
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