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1章 幼き魂と賢者の杖
10 勇気の有機栽培
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この希望の家には大人が二人いる。
一人は「気むずかしい婆さん」の称号がふさわしいエリザさん。
もう一人は「太っているのに俊敏おばさん」カティアさん。
呼ぶときは「さん」を付けないと大変なことになる。
エリザさんはいつも部屋で洋裁の仕事をしている。
みんなが着ている服もここで製造されている。
僕とはほとんど接点が無い。
カティアさんは、収穫した作物などを買い付けに来た町の人に引き渡したり、家畜の様子を見たりしている。
味のしない豆スープの下手人もこの人だ。
子供たちへの指示はカティアさんが出すが、仕事以外は喧嘩だろうがイジメだろうが放置が基本だ。
仕事はきっちりやれ、それ以外は好きにしろ、以上がここのルールのようだ。
僕は身の回りの改善を進めることにした。
まず有機農薬の開発。
この辺りでとれる渋みや辛みのある種や実を探し、砕いたり潰したりした後、煮詰める。
強烈な臭気を発生させたため、いたずらかと思われカティアさんから怒られた。
効果を説明して虫の駆除の効果を実証すると、使用の許可が下りた。
褒めてはもらえなかったが、これで一つ仕事が楽になった。
次は草履を編む作業。
魔領にいた頃は革の靴を履いていたのだが、こっちに来てからは子供は裸足だ。
大人は木のサンダルを履いていることが多い。
革製品は高級品なので、一般人は猟師などを除けば旅をするような時にしか使用しないようだ。
さすがに裸足は嫌なので、材料の入手が容易な草履を作ることにした。
他の子供たちにも羨ましがられたので、作り方を教えた。
いつの間にかカティアさんが、僕が作った農薬を他の農民に売り始めた。
そのおかげか豆スープの具材にニンジンが増えた。
喜んだ子供もいれば、辛そうに食べている子供もいる。
やっぱり子供はニンジンが嫌いなのか。
このままいくと草履を売り始めるのも間近な気がする。
そうしたらジャガイモ、そしていつか目指せ肉!
ちなみに希望の家で作っている作物は、自分たちで食べず、そのほとんどが町に売られていく。
家畜も同様だ。
衣食住のうち衣にも住にもお金がかかるのだ。
町から助成金が出ているようだが、とてもそれだけで子供たちを養う金額では無いらしい。
世知辛い。
僕がこの希望の家に来たときに、自分の名前以外の記憶が無いという設定にした。
最初に名前を名乗ってしまったが、魔領から転移してきたとか正直に話すのは、さすがに馬鹿というものだ。
戦闘後のどさくさで混乱していたこともあり、宿場町に来ていた旅の商人の子供だろうと勝手に推測してくれた。
そして親は死んでしまったのだろうと、砦にいた兵士が同情してくれた。
砦から希望の家に送られるときに栗色の髪の女性が寂しそうに手を振っていたけど、結局名前も分からないままだった。
僕のここでの立ち位置が固まってきた。
ルディンを虐めていたカシムや年長組に突っかかられたこともあるけど、転生前に古武術をかじっていたおかげで無力化できた。
武術を学んでいるような子供は一人もいないので、根本的に相手にならない。
過剰防衛にならないように、動きを封じた後に言葉で説得する形にした。
そして転生前の大人の知識で仕事の回し方の指示を出したりしているうちに、4歳でありながらリーダーっぽくなってきてしまった。
希望の家なら子供相手限定で無双かもしれない。
一人は「気むずかしい婆さん」の称号がふさわしいエリザさん。
もう一人は「太っているのに俊敏おばさん」カティアさん。
呼ぶときは「さん」を付けないと大変なことになる。
エリザさんはいつも部屋で洋裁の仕事をしている。
みんなが着ている服もここで製造されている。
僕とはほとんど接点が無い。
カティアさんは、収穫した作物などを買い付けに来た町の人に引き渡したり、家畜の様子を見たりしている。
味のしない豆スープの下手人もこの人だ。
子供たちへの指示はカティアさんが出すが、仕事以外は喧嘩だろうがイジメだろうが放置が基本だ。
仕事はきっちりやれ、それ以外は好きにしろ、以上がここのルールのようだ。
僕は身の回りの改善を進めることにした。
まず有機農薬の開発。
この辺りでとれる渋みや辛みのある種や実を探し、砕いたり潰したりした後、煮詰める。
強烈な臭気を発生させたため、いたずらかと思われカティアさんから怒られた。
効果を説明して虫の駆除の効果を実証すると、使用の許可が下りた。
褒めてはもらえなかったが、これで一つ仕事が楽になった。
次は草履を編む作業。
魔領にいた頃は革の靴を履いていたのだが、こっちに来てからは子供は裸足だ。
大人は木のサンダルを履いていることが多い。
革製品は高級品なので、一般人は猟師などを除けば旅をするような時にしか使用しないようだ。
さすがに裸足は嫌なので、材料の入手が容易な草履を作ることにした。
他の子供たちにも羨ましがられたので、作り方を教えた。
いつの間にかカティアさんが、僕が作った農薬を他の農民に売り始めた。
そのおかげか豆スープの具材にニンジンが増えた。
喜んだ子供もいれば、辛そうに食べている子供もいる。
やっぱり子供はニンジンが嫌いなのか。
このままいくと草履を売り始めるのも間近な気がする。
そうしたらジャガイモ、そしていつか目指せ肉!
ちなみに希望の家で作っている作物は、自分たちで食べず、そのほとんどが町に売られていく。
家畜も同様だ。
衣食住のうち衣にも住にもお金がかかるのだ。
町から助成金が出ているようだが、とてもそれだけで子供たちを養う金額では無いらしい。
世知辛い。
僕がこの希望の家に来たときに、自分の名前以外の記憶が無いという設定にした。
最初に名前を名乗ってしまったが、魔領から転移してきたとか正直に話すのは、さすがに馬鹿というものだ。
戦闘後のどさくさで混乱していたこともあり、宿場町に来ていた旅の商人の子供だろうと勝手に推測してくれた。
そして親は死んでしまったのだろうと、砦にいた兵士が同情してくれた。
砦から希望の家に送られるときに栗色の髪の女性が寂しそうに手を振っていたけど、結局名前も分からないままだった。
僕のここでの立ち位置が固まってきた。
ルディンを虐めていたカシムや年長組に突っかかられたこともあるけど、転生前に古武術をかじっていたおかげで無力化できた。
武術を学んでいるような子供は一人もいないので、根本的に相手にならない。
過剰防衛にならないように、動きを封じた後に言葉で説得する形にした。
そして転生前の大人の知識で仕事の回し方の指示を出したりしているうちに、4歳でありながらリーダーっぽくなってきてしまった。
希望の家なら子供相手限定で無双かもしれない。
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