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また 5月28日⑤
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「って、うわっ。杏梨さん、なんで泣いてるんですか?」
杏梨は樹の声に驚いた。杏梨自身無意識に涙を流していた。
「どうしたんすかー?はい」
樹は慌ててリュックを探り、ティッシュを差し出してくれた。
「ありがとう」
杏梨はティッシュが涙に湿るのを見ながら、何故泣けてきたのかを考えていた。金田の顔が思い浮かぶ。
自分はもう大人で、社会人で仕事をしているけれど、夢を追いかけて得た仕事ではない。責任を持ってこなしているけれど、金田のようにプライベートを削ってまでやりたい仕事でもない。
真理ちゃんは金田で、杏梨自身は樹のように思えて、他人事には思えなかった。でも杏梨は樹ほどの覚悟を持って、金田に愛情を注げていたかも自信がなかった。
「樹くん、ごめんね。私勝手に樹くん達のこと自分のことに重ねてたみたい。っていっても私の気持ちなんて樹くんに比べたら全然なんだけど」
樹の目は杏梨のことを心配そうに見つめていた。
「そうなんですか?なんか、すみません。俺が勝手にべらべら自分語りしたばっかりに」
「全然。むしろ、私頑張らなきゃーって思えたよ。樹くん、ありがとう」
杏梨が微笑むと樹は目を丸くした。そして、この短時間で杏梨も大好きになった笑顔で歯を見せて笑った。
「ははっ、やっぱり杏梨さんって素敵ですね。俺もうじうじしてないで頑張ります。大事なのは、未来を心配することよりも今を大切に行動することなんで」
飛行機の時間は樹のお陰で楽しく充実したものとなり、あっという間に過ぎた。周りに迷惑にならないように声を抑えるのが、大変だった位だ。
2人を乗せた飛行機はタイのバンコクに到着して、一緒に入国審査を受けた。
タイは樹も初めてとのことだ。樹はいつも適当にぶらぶらしている内に現地の人や他の旅行者と仲良くなったりして、時間が過ぎて旅行が終わるらしく、タイもほぼノープランと言っていた。そのコミュニケーション能力の高さは立派な彼の才能で、杏梨がそう伝えると樹は「人と話すの好きなんで」と笑った。
別れ際、樹は少し真面目な顔で杏梨のことを見つめた。
「あの、杏梨さんもし嫌だったら断ってくれて全然いいんですけど」
「なに?」
樹と別れるのが、寂しくて心細くなりながら、杏梨が答える。
「えーっと、連絡先教えてもらえませんか? いつもは仲良くなっても自分からきいたりしないんですけど、杏梨さんにはまた寂しくなったりしたときに、渇いれてもらいたくて。
って完全な俺の都合なんですけど。嫌だったら全然大丈夫です」
少し顔を赤らめる彼が可愛くて杏梨はつい笑ってしまった。
「ふっ、ははっ。うん、もちろん。私も渇入れてもらうから宜しくね」
そこで初めて樹の住んでる場所をきくと、杏梨の家から電車で1時間程の距離で、意外に近くてびっくりした。
「じゃあね、樹くん」
「はい、杏梨さん、楽しかったっす」
空港での別れ際、杏梨は樹に言いたかったことが1つあるのを思い出した。
「あっ、そうそう。樹くん。私は『杏梨さん』なのに、彼女さんは『近藤』なの?もし樹くんが周りの友達はみんな下の名前で呼んでるんだったら、彼女さんも名前で呼んだらどうかな?」
杏梨がそう伝えると、樹の表情が一瞬固まった。
「それは、ここ2年俺が連絡取る度に越えようとしてる壁っすね。友達は皆名前で呼ぶんですけど、近藤のことはなかなか」
人と距離をつめるのが早すぎる樹にも越えられない壁があるらしい。
「そっか。無理には言わないけど、もしも私だったら、名前のが嬉しいな。もちろん、彼女さんに聞いてみてもいいと思う」
最後の最後に少しだけ年上らしいアドバイスになっただろうか?
「聞いてみます。俺本当はずっと心の中で名前で呼んでるし、会えなくても心の距離は縮めたいんで」
そう言ってガッツポーズをとる樹はかっこよくて、彼女さんにも見てほしいと思った。
「あっ杏梨さん。杏梨さんは結構抜けてるんで、気をつけてくださいね。ここ日本じゃないし、杏梨さん女の人なんで」
「はい」
年上ぶったのに、最終的に樹にアドバイス返しをされて、杏梨は樹と別れた。
杏梨は樹の声に驚いた。杏梨自身無意識に涙を流していた。
「どうしたんすかー?はい」
樹は慌ててリュックを探り、ティッシュを差し出してくれた。
「ありがとう」
杏梨はティッシュが涙に湿るのを見ながら、何故泣けてきたのかを考えていた。金田の顔が思い浮かぶ。
自分はもう大人で、社会人で仕事をしているけれど、夢を追いかけて得た仕事ではない。責任を持ってこなしているけれど、金田のようにプライベートを削ってまでやりたい仕事でもない。
真理ちゃんは金田で、杏梨自身は樹のように思えて、他人事には思えなかった。でも杏梨は樹ほどの覚悟を持って、金田に愛情を注げていたかも自信がなかった。
「樹くん、ごめんね。私勝手に樹くん達のこと自分のことに重ねてたみたい。っていっても私の気持ちなんて樹くんに比べたら全然なんだけど」
樹の目は杏梨のことを心配そうに見つめていた。
「そうなんですか?なんか、すみません。俺が勝手にべらべら自分語りしたばっかりに」
「全然。むしろ、私頑張らなきゃーって思えたよ。樹くん、ありがとう」
杏梨が微笑むと樹は目を丸くした。そして、この短時間で杏梨も大好きになった笑顔で歯を見せて笑った。
「ははっ、やっぱり杏梨さんって素敵ですね。俺もうじうじしてないで頑張ります。大事なのは、未来を心配することよりも今を大切に行動することなんで」
飛行機の時間は樹のお陰で楽しく充実したものとなり、あっという間に過ぎた。周りに迷惑にならないように声を抑えるのが、大変だった位だ。
2人を乗せた飛行機はタイのバンコクに到着して、一緒に入国審査を受けた。
タイは樹も初めてとのことだ。樹はいつも適当にぶらぶらしている内に現地の人や他の旅行者と仲良くなったりして、時間が過ぎて旅行が終わるらしく、タイもほぼノープランと言っていた。そのコミュニケーション能力の高さは立派な彼の才能で、杏梨がそう伝えると樹は「人と話すの好きなんで」と笑った。
別れ際、樹は少し真面目な顔で杏梨のことを見つめた。
「あの、杏梨さんもし嫌だったら断ってくれて全然いいんですけど」
「なに?」
樹と別れるのが、寂しくて心細くなりながら、杏梨が答える。
「えーっと、連絡先教えてもらえませんか? いつもは仲良くなっても自分からきいたりしないんですけど、杏梨さんにはまた寂しくなったりしたときに、渇いれてもらいたくて。
って完全な俺の都合なんですけど。嫌だったら全然大丈夫です」
少し顔を赤らめる彼が可愛くて杏梨はつい笑ってしまった。
「ふっ、ははっ。うん、もちろん。私も渇入れてもらうから宜しくね」
そこで初めて樹の住んでる場所をきくと、杏梨の家から電車で1時間程の距離で、意外に近くてびっくりした。
「じゃあね、樹くん」
「はい、杏梨さん、楽しかったっす」
空港での別れ際、杏梨は樹に言いたかったことが1つあるのを思い出した。
「あっ、そうそう。樹くん。私は『杏梨さん』なのに、彼女さんは『近藤』なの?もし樹くんが周りの友達はみんな下の名前で呼んでるんだったら、彼女さんも名前で呼んだらどうかな?」
杏梨がそう伝えると、樹の表情が一瞬固まった。
「それは、ここ2年俺が連絡取る度に越えようとしてる壁っすね。友達は皆名前で呼ぶんですけど、近藤のことはなかなか」
人と距離をつめるのが早すぎる樹にも越えられない壁があるらしい。
「そっか。無理には言わないけど、もしも私だったら、名前のが嬉しいな。もちろん、彼女さんに聞いてみてもいいと思う」
最後の最後に少しだけ年上らしいアドバイスになっただろうか?
「聞いてみます。俺本当はずっと心の中で名前で呼んでるし、会えなくても心の距離は縮めたいんで」
そう言ってガッツポーズをとる樹はかっこよくて、彼女さんにも見てほしいと思った。
「あっ杏梨さん。杏梨さんは結構抜けてるんで、気をつけてくださいね。ここ日本じゃないし、杏梨さん女の人なんで」
「はい」
年上ぶったのに、最終的に樹にアドバイス返しをされて、杏梨は樹と別れた。
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