365日のこまり。

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83日目 大事な人

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【注意】この話はネガティブな内容を含みます。元彼が何をしたかの詳細については11話嫌いの刃をご参照ください。そちらを読まなくても理解はできるとは思います。


 別に手紙の返事なんて決まっている。

 連絡返していなくてごめんなさい。
 ありがとう。ごめんなさい。


 こまりには結婚3年目になる大事な夫がいる。彼は3人目の彼氏。

 1人目の彼氏とは学生の頃から4年付き合った。
 2人目の彼氏とは5年。
 3人目の彼氏となる夫とは付き合って1年も経たずに結婚した。

 彼には感謝しかない。

 1人目の彼氏にレイプをされたのは、結婚2ヶ月弱前。元彼には直接言っていないが、人づてに結婚するのが耳に入ったのか、そんなの関係なかったのかはわからない。

 結果的に彼の行為は結果的にこまりの婚約を大きく阻害した。

 既に一緒に住んでいたので、帰ってきたこまりの様子がおかしいことに婚約者は気づいたし、行為があった深夜1時頃になるとこまりは毎晩パニックに陥った。

「助けて、助けて」
 と泣きながら叫んで、過呼吸を起こす彼女を彼は何を思いながら見ていたのだろう。
 自殺を企てるようになり、体調不良でずっと動けず寝ている女。

「もう結婚やめよう? 」
 とこまりは何度も言ったけれど、彼はそれでも結婚してくれた。とても嬉しかった。もうセックスも楽しくできないのに。

 元彼が結婚したのはそのほんの数ヵ月後で、その後すぐに子どもが生まれた。どちらもお祝いを部活の同期の連名で贈った。

 元彼は自分が何を壊したか何て想像もしないだろう。セックスは最大で最高の愛情表現だと思っていた人間の。

 別にいい。もう連絡もとりたくない。
 知らなくていい。もうこまりの人生に出てこなくていい。


「働かなくても元気で笑顔でいてくれたらそれでいいよ。子どもだって別に俺も欲しいとは思わない」

 そういって心身共に不安定で家事も完璧に出来ない引きこもりを家にいさせてくれる人。

 この人以上に大事な人なんていないから、他の人と連絡を絶っても問題なかった。

 この人以上に人間関係を良好に保ちたい人はいない。

 パートナーの席に座れるのは1人だけ。
 その椅子の座は常に争われている。他の人とだけじゃない。身も心も環境も、日々変化していく中で良好な関係を保つにはそれなりの努力が必要だ。

 こまりはその努力だけは惜しまないし、彼のために生きたいと思う。


 大変申し訳ないが、手紙の彼に返事を書くことはあっても、彼の気持ちを知ってしまった以上その後も連絡を取り合うことはもうしないだろう。

 こまりが彼氏が出来たことも、結婚したことも前から知っていたのだから。
 手紙にはそれを恨むような文面が含まれていた。悲しい。

 辛いことがあったとき、
 結局自分を助けられるのは自分だけ。

 うじうじ悩んで動かない自分を好きになってくれる人何かいない。そんなご都合主義のミラクル展開は現実では起こらない。

 好きな人も、大事な人も、一緒にいたい人も、自分を何より生きたいと思わせてくれる人も

 自分で探して自分で関係性を作る。

 こまりは毎日「ありがとう」の言葉を欠かさないし、気持ちを伝える言葉を多用する。自分の食事は作らなくても、彼と食べる夕御飯だけは栄養も味も考慮する。

 それでも毎日不安は絶えない。一体いつ捨てられるのかと。

「好きな人ができたら言ってね」と伝えてある。足手まといのパートナーが彼の足を引っ張るのは嫌だ。好きな人には一番幸せになって欲しい。

 彼が喜ぶかわからないけれど、こまりは来年の4月7日までに『自分を好きになる』ことを目標にしている。

 本当は彼とずっと楽しく過ごしたいから。

 一番大事な人は1人だけ。優先順位は決定事項で揺らぐことはない。


 手紙の返事はまだ書けない。早く書かなくてはいけない。



【今日できたこと】
 ・優先順位確認
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