365日のこまり。

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65日目 この人みたいになりたい人

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 こまりは昨日夜に何となく恋愛の短編小説を書き、それに伴ってコンビニバイトの事を思い出した。短編がコンビニ定員の話だったのだ。
 コンビニの事は思い出す事が多すぎて、昨夜はなかなか寝れなかった。

 色々バイトも仕事もやってきたが、こまりが1番多くこなしていたのはコンビニバイト。
 計3ヵ所、全時間帯経験あり。学生なのに時には週11回勤務することもあった。1週間は7日のはずなのに。

 大変なこともあったが、楽しいことも沢山あったし、ときめきもあった。

 痴情のもつれで窓ガラスを破壊した通りすがりの人。

 深夜2時過ぎに流血しながら「かくまって下さい。警察は呼ばないで」という謎の男女2人組。床に落ちた血痕をそのままに去っていった。

「お姉さんは、俺が会った中で一番面白いコンビニ定員さんですよ!」と、喜べばいいのか自分の行動を反省した方がいいのか、わからない言葉をくれた人。

 3月13日の深夜2時に手作りチョコを持参して、皆の前でこまりに渡してすぐ帰っていった大好きなバイトの先輩。
 ボール状のチョコの中に更にチョコが入ってるって、何者?料理しないのに。 でも、バレンタイン渡したのは他の人に内緒にしてくださいって言いましたよね?

 必死におでん容器を洗うこまりにガラス越しに、チューチュートレインを披露する学生達。定員だからってからかっていいわけではありませんよ。

 楽しかったので、引っ越したりしても、バイトはコンビニを選ぶ事が多かった。
 良いコンビニはしっかりしたパートさんに支えられていることが多い。何しろ24時間営業なので、社員さんやオーナーさんが何時もいて指示をしてくれる訳ではないのだ。

 心強いのは、人材育成や商品発注も安心して任せられて、かつ、長い間継続して勤務してくれる人。
 逆にそういう人がいなくて、学生バイトばかりで成り立っている所は、テストの時期や卒業等によってシフトに穴が空きがちになるので、上の人の負担が大きい。
 断れないこまりみたいな学生も犠牲になり、授業があるのにシフト延長を頼まれて学校に行けなくなることもあるのだ。

 という訳で、有能なコンビニ店員さんやコンビニは、こまりにはすぐわかる。

 こまりが前に働いていた職場のすぐ近くのコンビニは、かなり体制が整っている様子だった。内情は知らないから、只の想像だか。

 その中でも一際輝きを放っていたのが『江口さん』だ。

 40代位の女性で、何時もハキハキ明るく笑顔で働いている。時として英語を話し、手の動きは高速なのに、お客さんとの会話もスムーズ。しかもお客さん一人一人をちゃんと認識している。

 当然こまりも覚えられていて、
「江口さんは何かスポーツしてるんですか?」
「わかるー?サーフィンしてるの」
 みたいな感じ。
 日焼けの跡がくっきりしていたので聞いてみたのだ。

 ときにはこんな会話もした。
「江口さんは私が今まで出会った中で一番素敵なコンビニ店員さんですー」
「えっ、何それ?嬉しー!!」
 コンビニの前にキャッシュカードの落とし物があって、話していたときに伝えた言葉。嘘偽りはない。キャッシュカードは結局、こまりが直接銀行に届けた。

 その後、食べ物の匂いを嗅ぐだけで吐き気がするようになってしまい、昼休みにコンビニでお昼ご飯を買くことも無くなった。そして、そのまま仕事を辞めたので江口さんにはもう会うことはない。

 でも、きっと、コンビニの仕事をしていても、していなくても彼女は周りの人に元気を与えているだろう。

 江口さんはすごい。憧れ。

 江口さんみたいにこまりはなりたい。


【今日できたこと】
 ・理想の人を思い出す
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