365日のこまり。

tonari0407

文字の大きさ
上 下
65 / 103

(番外編)お肉どう食べますか?第3回お肉祭り~ボルシチ~

しおりを挟む
 あのさ、いくらパッケージに書いてある期限はまだ先でもさ、家庭の冷凍庫保管は限界あるぜ?そろそろ出番じゃない?

 こまりは冷凍庫に鎮座する、冷凍牛肉に声をかけられた。彼の意見には大いに同意する。実際1パック400グラム入っていた彼は。100グラム位ずつ、切り分けられ2回料理された。彼は最後の末裔の200グラムだ。

 最初の子は、ヒラタケと共に中華に。
 2つ目の子は、青梗菜と共にこれまた中華に変身した。

 さて、残りのこの子はあれになる。
 ボルシチになるのだ。

 1度も食べたことのないボルシチ。1回食べてみたかった。正解がわからないがレシピ通り作って、美味しくなったらきっとそれはボルシチだ。

 生のビーツは見つからなくて、缶詰のものを買ってある。サワークリームは水切りヨーグルトで代用する。

 レッツクッキング!

 と思ったら最初からつまずいた。ビーツの缶詰が缶切りのいるタイプのものだったのだ。こまりは缶詰を開けるのが上手くない。

 缶詰と缶切りを洗い、いざ挑戦したが、何故か刃が通らない。刃先を良く見ると先端が少し曲がっていて尖っていなかった。手で直そうとしても到底直らない。

 何回か従来の使い方で開けようとするが、傷がつくだけで穴は開かないし、力を入れると滑って手に穴が開きそうだった。

 更に先端が丸まってしまうことになるが、ガンガン垂直に打ち付けて穴を開ける作戦に変更する。それでもなかなか開かずにこまりは焦った。

 もうお肉は解凍してあるし、水切りヨーグルトも用意したし、缶切りをわざわざ買いに外に出たくはない。

 世の中の人の知恵をかりるべく、「缶切り 開かない」と検索したが、こまりの今の状態に該当する答えはなかった。つまり、レアケース。

 仕方なく、缶切りを垂直に降りおろす暴挙を続ける。

 がんっがんっ
 ご近所迷惑、すみません。

 同じ所を何回も攻撃していると、缶詰めから赤い血が出てきた。

 ただのビーツの汁だ。希望の汁だ。

 缶切りを入れられる隙間が開いてからは、従来の使い方で穴を広げていく。ただ、この作業は元より苦手な上に、赤い液体が飛び散るので、キッチンは瞬く間にスプラッタ映画のようになった。

 何とか開けきったときは、こまりは既に疲れを感じた。赤く染まった缶切りを流しに起き、材料を切って炒める作業に何とかうつる。

 水煮のビーツはその見た目の狂暴さとは裏腹に包丁を置くだけで切れる位柔らかった。

 牛肉、にんじん、玉ねぎ、じゃがいも、ビーツ、トマト缶。
キャベツは安くなかったので省略。玉ねぎは最近高いが、今日の価格はましな方だったのでちゃんと買った。

 調味料もいれて煮込む。材料に火が通った所で味見をしたが、ビーツとトマトの混ざったスープの味がした。普通に美味しいやつ。

 あとは、これに水切りヨーグルトをのせて食べてみればいい。本当のボルシチはどんな味か知らないけれど。

 慢性的な眼精疲労で目が痛い。痛いだけじゃなくて、最近は吐き気もするので日常生活にも支障をきたしている。
 何だか身体に良さそうな色をしたこの食べ物は効くだろうか?信じてれば効くはずだ。

 お取り寄せの冷凍牛肉400グラム✕3パックはこれで食べきった。またきっと頼むこともあるだろう。

 牛さんありがとー。

 こまりは手を合わせて「いただきます」と宣言し、口を開けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

鬼母(おにばば)日記

歌あそべ
現代文学
ひろしの母は、ひろしのために母親らしいことは何もしなかった。 そんな駄目な母親は、やがてひろしとひろしの妻となった私を悩ます鬼母(おにばば)に(?) 鬼母(おにばば)と暮らした日々を綴った日記。

怠け者娘の料理修行

ひつじ
エッセイ・ノンフィクション
料理がめっちゃ美味い我がママ上 高校時代から、会食やら何やらで舌が肥えた父を十分満足させる弁当を作り上げる強者… 田舎に嫁に来てからは、昔のしきたりにめちゃうるさい大姑、姑2人を自慢の料理で堕としまくり、今や『旅行先の飯より家で食う飯が美味い』と言わせるほど… そんな母上の娘に生まれた私は、料理のりの字も分からん怠け者娘… ママ上が、おかず屋開いてくれれば万事解決するのに…泣 ってなわけで、怠け者でおまけにかなーり手遅れなほど腐腐腐な娘が、ママ上のレシピを取りあえず保存して、料理とはなんなのかを学ぶエッセーです! 完全に料理レシピを書いたり、覚えたりするためのモチベ維持のためだけに書いてます(^◇^;) ママ上は、分量を量らない感覚天才派なので、分量は分かりませぬ 泣 強いて言えば、いつも4人〜6人分〜8人分くらいの多めですねん 〜以下ママ上より激励〜 娘に残したい料理レシピ!! ちゃんと作れ! ※レシピは素人の怠け者娘が書いてるので、作ってまずくても責任は取れません きちんとしたレシピ本などで、調べてくださいませ 泣 いつか、ちゃんとしたご飯小説書けるように頑張ります!

処理中です...