365日のこまり。

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58日目 食物連鎖を援助?する人

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 初夏、おたまじゃくしの泳ぐ季節。
 こまりは実家の母を思いだした。

 こまりの実家はまぁまぁ田舎だ。一軒家に庭、畑がある家。家の周りは畑か田んぼで、夏の夜になるとかえるの声が響き渡る。

 害がなくて細い蛇も出る。カナヘビとか、ヤモリも。

 そんなこまりの家の庭には何故か両手で抱えたら持てそうで持てなさそうな位の大きさの陶器のかめがある。そこにはホテアオイが入れてあって、水が溜まっている。

 庭には沢山のアマガエル。手軽なところに水が溜まった小さな池。まぁ、産むよね、卵。

 というわけで、そのかめには毎年おたまじゃくしが生息する。小さめの可愛いやつ。

 但し、限られた水の中にはもちろん十分な食料なんてなくて、『なかなか大きくならないな』なんて思っているうちに、彼らは腕も足も生えぬままに共食いをしたり、蛇の餌食になるのか、いつの間にかいなくなる。

 全てのおたまじゃくしがカエルになって陸に上がれる訳ではないのだ。彼らは食物連鎖の中にいて、その命は常に脅かされている。

 その輪に少しだけ手を加える生き物がいる。こまりの母だ。

 金魚はもう飼っていないのに、金魚のエサを撒いておたま達を育てる。『おっきくなっても蛇に食べられちゃったりするんだけどね』と言いながら。

 彼女が手を加えても、水の中におたまじゃくしがいなくなる事実は変わらない。その行く末が少し変わっただけ。

 彼女のしていることは何だろう?
 食物連鎖の援助?何だろう?その意味は?

 ただ、こまりは知っている。いずれ自分があの家に住むようになったら、母と同じことをすることを。

 ただ、食べるものがなくて大きくなれない姿を見ているのは、自分が嫌だから。

 そして今年も卵はかえる。エサも買ってあるかしら?

【今日できたこと】
 ・昔は田んぼでおたまを捕まえて、かめの中に入れました。ごめんなさいの反省。
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