365日のこまり。

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21日目 冬の終わりのオランジェット

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こまりはご機嫌だった。
昨日、ようやく親に連絡できて、乗り越えないといけない壁を1つ越えたからだ。

ダメすぎる自分が嫌すぎて、そんな自分が恥ずかし過ぎて、外の人との交流を全てたってしまった。

こんな娘の存在は忘れて欲しかったが、そういう両親ではないことはこまり自身がよく知っている。とりあえず、連絡できて良かった。


外はもうすっかり初夏の気配だ。衣替えもしなくてはいけないし、こたつもしまわなくてはいけない。

だか、とりあえず今日はこれから始めよう。
こまりは冷蔵庫から自家製の八朔ピールを取り出した。

このピールは、2月頃に親戚から届いた無農薬の八朔の皮を、下処理して細長く切り、糖分で煮詰めて乾燥させて、砂糖をまぶしたものだ。
ピールにチョコレートをつけるとオランジェットになる。

糖分が多いので、比較的長持ちはする。少しずつ食べていたが、手作りだしそろそろ食べきった方が良いと思っていた。

鍋にお湯を沸かし、金属のボールを浮かべる。ちょっとだけ奮発して買っておいた高カカオのチョコレートをボールの中に入れ、溶かしていく。

思えば小学生位のとき、初めてチョコを湯煎したら、誤ってお湯がチョコの中に入ってしまい、大失敗した。懐かしい思い出である。

部屋の中にチョコレートの甘い匂いが漂い始めた。

ピールにチョコをつけていく。
全体にどっぷりつけたり、半分だけつけたり、少しだけつけたり、家で作るオランジェットは自分好みに色々変えられる。

お店で買うと結構値段がするが、作る手間を考えると納得価格だ。

チョコをつけたオランジェットをクッキングシートの敷いた鉄板に並べ、冷蔵庫で冷やす。

固まったら保存容器に入れて冷蔵庫で保管する。

柑橘系のほのかな苦味とチョコレートの甘味が合わさっていくらでも食べられる悪魔のスイーツである。

今回作った分で今年の八朔ピールは無くなった。

美味しいのであっという間に食べてしまうだろう。

冬の甘味を食べ終わったら、次なる季節の甘味を手に入れつつ、外へ、前へ進むのだ。


ボールについたチョコで作ったホットチョコレートを飲みながら、出来上がったオランジェットを1つ頬張り、こまりはそのほろ苦さを楽しんだ。
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