365日のこまり。

tonari0407

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18日目 事実は人の数だけある

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ここ数日、自分がとてつもなくスローペースで動いているように思えて、こまりは落ち込んでいた。

足掻いても足掻いても進んでいない気がして、何もする気になれなかった。

家事もする気になれず、スマホをいじる。

前に読んでいた 残365日のこおり。の続きを読んでみる。

物語は胸くそな展開になっていた。
暴走した主人公(こおり)が勝手な誤解をした挙げ句に元カノ(杏梨)と浮気、それが彼女(あいり)にばれて、元々別れる気だった彼女は急いで逃走。主人公が彼女をストーカーして部屋に無理やり入ってレイプ。
その後もこおりは自分勝手に罪を償っている気分になって自己陶酔の現実逃避。それをみていたリイト(1年後にこおりを消去するとあう案内人)が、リイトからみた事実を突きつける。

リイトがこおりを猿呼ばわりしていたが、おさるさんに失礼だ。

リイトがぼろくそにこおりを罵ったので、少しはスッキリしたが、あいりのことを思うとこまりは胸がいたくなった。

緊急避妊薬を貰いにいくのはとても勇気がいる。今はネット診療という手もあるみたいだが、病院にいくっというあいりの言い方から、受診したようだ。

どれだけ心ぼそかっただろうか。産婦人科だと、幸せそうな妊婦さんもいる。その中に紛れて待つことはどれだけ嫌なことか、こおりにはわからないだろう。

緊急避妊は排卵を遅らせる作用もある。その後の避妊は気を付けるように医師から言われることもある。そもそも一回目に遅らせた排卵がこおりがレイプしたときに重なって妊娠していたらどうなる?

同じ病院にまた行けるだろうか?あいりは薬を飲んだ後、体調を崩したみたいなのにまた飲めるだろうか?そもそも、外に出られるだろうか?

私がされたときは、しばらく男の人が気持ち悪くて仕方なかった。
こまりの中で嫌な思い出がよみがえる。

どれだけ力をいれてもびくともしない。動けない。自分の一番大切なところを無理やりこじ開けられ、尊厳を踏みにじられることがどれほど自己肯定感を下げるのか。

性的暴行は身体と心の殺人だ。

こまりとしてはあいりが警察に行かなかったのは、こおりのためではなくあいり自身のためのような気がした。

根掘り葉掘り聞かれ、さも自分にも非がなかったか聞かれ、嫌な記憶を掘り起こされる。

聞く人にもよるだろうが、些細な言葉も傷ついた心にはどんどん刺さってずっととれない刺になる。

それがどんなに辛いことか。

もう関わりたくなかったんじゃないかな?
こまりはそう思った。こまりのときはそうだった。

もちろん、こおりの気持ちもあるだろう。リイトの読みもこまりの気持ちも、あいりの気持ちを100%表現できる訳はない。

起こったことは1つでも、それを見ている人の目だけ事実がある。

だから世の中は残酷なのだ。

こおりの元カノの杏梨の小説もアップされていたが、こまりは読む気になれなかった。


【今日できたこと】
・軽い文章だけど、活字を読む





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