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第7話ー6 Aパート2
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「いざ!」「応!」
五六八と対峙している月子は息を大きく吸い込み丹田で練り上げた濃密な氣を体の隅々に行き渡らせる。五六八との距離は20メートル弱この距離を一息で詰めようとしていた。
対する五六八は使えなくなった右手をだらりと下げ脱力しつつ全神経を迎撃の為の動作に集約し最速の左を打てる状態に保っている。今彼女の意識は月子を打倒する事のみに捧げられている。天真爛漫、我が道を行く彼女だが本来の彼女は実に思量深い少女である。同世代の少女達とは性格も感性もそりが合わず異質なものとして見られている事をちゃんと認識している。兄や弟と違いゴーレムメイカーとしての資質が無い事も分かっている。幼かった彼女はゴーレムを満足に作れない事に親族からは疎まれ叱咤されいつも兄である輝兼に慰められていた。いつもの様に泣いていると輝兼は自室に呼びあるアニメを見せた。TVの中では不器用な少女が必死になってスポーツに取り込む姿が映し出されている。何処かその姿が自分と重なった。
「ねえ五六八、この子はこのスポーツが大好きだからどんなに下手でも諦めないでがんばれるんじゃないかな?だから五六八も好きな事を見つければ僕なんかよりずっと上手になれる。まずは好きな事を見つけてみよう。」
この兄の言葉とアニメの中の少女のお陰で彼女は自分に出来る事、好きな事を模索する事ができた。
体を動かす事、格闘技、地属性の魔術、出来る事が分かるとどんどん楽しくなっていった。気が付けばゴーレムメイカーの家系の中で異端の存在でありながらその事が苦痛で仕方が無かった少女はもう存在しなかった。
それでも上書きされた性格の根底には幼い頃の性根は残っている。明け透け無く裏表無しで人に接する彼女はその明るすぎる性格ゆえに同世代の友人が出来なかった。一抹の寂しさを感じていたが顔に出す事は無い。兄弟が居れば構わないと思っていたそんな彼女に始めて同性の友人が出来た。兄の友人が連れてきた小さくて可愛らしい少女。人形のような可愛らしさについ何時もの様に接してしまって怖がらせてしまった。でも彼女は少し脅えながらも少しずつ話し掛けてくれる様になりいつしか普通に笑い合える友達になっていた。
月子達との対戦が決まり五六八も内心葛藤していた。普段二人で行っていた組み手とは違う本気の勝負。それ故に彼女を怪我させてしまうのではないか?そして友情が壊れてはしないだろうか?だがそれ以上に本気の月子と戦ってみたい。彼女自身の欲求が勝っていた。ならどうすれば彼女との1対1の真っ向勝負が実現するか?どうすれば後悔の無い闘いが出来るか?まず1対1の勝負が出来るように兄弟にお願いをする。これはすんなりと了承された。ただ弟の正兼が終始不服そうだったが粘り強く説得して何とか承諾してもらえた。
後は月子が自分に向かって来てくれるかだが兄と兵頭勇吾の様子を見れば彼は兄との対戦を望むと考えられた。
ここまで出来れば後は月子との戦いを待つだけだった。
想像以上の強さと未だ底が見えない事それに切り札を使ってなお立ち上がる彼女に恐怖と羨望を抱きながら細かい呼吸を繰り返し集中力を上げていく。月子から目を逸らす事は出来ない瞬きも許されない1分が何倍にも感じる極限の緊張感の中研ぎ澄まされた感覚の一つである第6感に相当する魔力や霊力と言ったものを感じる事が出来る術者にとって必衰の感覚の中で取り分け自然魔力は肌で感じる事が出来る。五六八は試合場の乱れている自然魔力の微かな揺らぎを視線の先に居るはずの月子の方から感じた。そう、感じた時点で月子は既に五六八の視角の中には居なかった。血の気が引く、視線は外していないのにも拘らず彼女が居なくなる事を認識出来なかった。鳩尾に何かが触れる、そこに居たのは月子だった。五六八の鳩尾に静かに添えられた掌から月子の熱が伝わる。五六八の意識は深い闇に堕ちて行く最後に聞こえたのは
『暗剄、龍吼掌。』
五六八と対峙している月子は息を大きく吸い込み丹田で練り上げた濃密な氣を体の隅々に行き渡らせる。五六八との距離は20メートル弱この距離を一息で詰めようとしていた。
対する五六八は使えなくなった右手をだらりと下げ脱力しつつ全神経を迎撃の為の動作に集約し最速の左を打てる状態に保っている。今彼女の意識は月子を打倒する事のみに捧げられている。天真爛漫、我が道を行く彼女だが本来の彼女は実に思量深い少女である。同世代の少女達とは性格も感性もそりが合わず異質なものとして見られている事をちゃんと認識している。兄や弟と違いゴーレムメイカーとしての資質が無い事も分かっている。幼かった彼女はゴーレムを満足に作れない事に親族からは疎まれ叱咤されいつも兄である輝兼に慰められていた。いつもの様に泣いていると輝兼は自室に呼びあるアニメを見せた。TVの中では不器用な少女が必死になってスポーツに取り込む姿が映し出されている。何処かその姿が自分と重なった。
「ねえ五六八、この子はこのスポーツが大好きだからどんなに下手でも諦めないでがんばれるんじゃないかな?だから五六八も好きな事を見つければ僕なんかよりずっと上手になれる。まずは好きな事を見つけてみよう。」
この兄の言葉とアニメの中の少女のお陰で彼女は自分に出来る事、好きな事を模索する事ができた。
体を動かす事、格闘技、地属性の魔術、出来る事が分かるとどんどん楽しくなっていった。気が付けばゴーレムメイカーの家系の中で異端の存在でありながらその事が苦痛で仕方が無かった少女はもう存在しなかった。
それでも上書きされた性格の根底には幼い頃の性根は残っている。明け透け無く裏表無しで人に接する彼女はその明るすぎる性格ゆえに同世代の友人が出来なかった。一抹の寂しさを感じていたが顔に出す事は無い。兄弟が居れば構わないと思っていたそんな彼女に始めて同性の友人が出来た。兄の友人が連れてきた小さくて可愛らしい少女。人形のような可愛らしさについ何時もの様に接してしまって怖がらせてしまった。でも彼女は少し脅えながらも少しずつ話し掛けてくれる様になりいつしか普通に笑い合える友達になっていた。
月子達との対戦が決まり五六八も内心葛藤していた。普段二人で行っていた組み手とは違う本気の勝負。それ故に彼女を怪我させてしまうのではないか?そして友情が壊れてはしないだろうか?だがそれ以上に本気の月子と戦ってみたい。彼女自身の欲求が勝っていた。ならどうすれば彼女との1対1の真っ向勝負が実現するか?どうすれば後悔の無い闘いが出来るか?まず1対1の勝負が出来るように兄弟にお願いをする。これはすんなりと了承された。ただ弟の正兼が終始不服そうだったが粘り強く説得して何とか承諾してもらえた。
後は月子が自分に向かって来てくれるかだが兄と兵頭勇吾の様子を見れば彼は兄との対戦を望むと考えられた。
ここまで出来れば後は月子との戦いを待つだけだった。
想像以上の強さと未だ底が見えない事それに切り札を使ってなお立ち上がる彼女に恐怖と羨望を抱きながら細かい呼吸を繰り返し集中力を上げていく。月子から目を逸らす事は出来ない瞬きも許されない1分が何倍にも感じる極限の緊張感の中研ぎ澄まされた感覚の一つである第6感に相当する魔力や霊力と言ったものを感じる事が出来る術者にとって必衰の感覚の中で取り分け自然魔力は肌で感じる事が出来る。五六八は試合場の乱れている自然魔力の微かな揺らぎを視線の先に居るはずの月子の方から感じた。そう、感じた時点で月子は既に五六八の視角の中には居なかった。血の気が引く、視線は外していないのにも拘らず彼女が居なくなる事を認識出来なかった。鳩尾に何かが触れる、そこに居たのは月子だった。五六八の鳩尾に静かに添えられた掌から月子の熱が伝わる。五六八の意識は深い闇に堕ちて行く最後に聞こえたのは
『暗剄、龍吼掌。』
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