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少女の願いを叶えるのが男の甲斐性?

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衝撃の出会い?から数分後今現在の状況はと言うと・・・
顔面負傷1名 主人公落下における衝撃による全身打撲1名 全力ストレートを放ったため右手首捻挫1名 無傷でニヤニヤしている1名。
物語開始直後の時点で負傷者が三人と言うのもファンタジー世界の話では有りがちだと思うが戦闘で負った傷ではないのが何とも情けない。
主人公とヒロインに関しては自業自得でしかなく主を賭して守った老執事は衝撃で伸身5回捻りの高軌道運動を受けて顔面から地面に突き刺さっている。「痛ぇだろうが!出会い頭の初対面の人間に右ストレート捻りこむ馬鹿いるか!」
「はあー?!その初対面の人間押し倒した挙句にむ、胸まで触った挙句に無礼な事言ったらそうなるでしょうが!!」
「胸?胸触りました貧相な胸なら、でもその前にちゃんと可愛いって言っただろうがそれで普通帳消しだろうが!」
「なるか!しかもまた言ったわね!人が気にしている事をずけずけとデリカシーの欠片もないホントサイテー!」
今にもお互い掴みかかりそうなほどの剣幕で口喧嘩が始まったが直ぐに竜也の方が旗色が悪くなっていく。
勢い任せでは口喧嘩は勝てないボキャブラリーの豊富さと相手をとことん打ちのめそうという気概が強い者が勝つ。
そうこうしている内に押されっぱなしになっている竜也。
「分かった分かった俺が悪かった!」竜也は両手を上げて降参のポーズ。
「まだ言い足りないけどまあ良いわ、そう言えばあんた誰?」シルビアは腕組をしたまま竜也を見ている。
互いの素性も知らぬまま口喧嘩をしていた二人だが冷静にお互いを見詰め合ってみた。
竜也の目の前に彼をじっと見つめる少女、歳は15、16位、腰にも届きそうな金色の綺麗な髪、外国の映画で見た事がある古めかしい衣装
ちょっと痩せすぎかなと思うスレンダーな体型。先程まで今にも噛み付かれそうな剣幕だったその表情も今は竜也をまじまじ
興味深そうに観察している。一方そんなシルビアをなんだか難しそうな顔をして見ている青年の姿は半袖のシャツに紺色のベストそれにやたら裾
の幅が大きいズボン。良く見ると小さな穴やインクが着いている余り良い身なりをしていない。
短く刈上げた黒髪と割と精悍な顔つきをしている。
(身なりは薄汚れているけど筋肉質だし…もしかすると歴戦の戦士…見えないわ。)
シルビアが手を差し出し竜也に告げる。
「私の名前はシルビア・クアーナ、この屋敷の主よ。人の家に大穴空けた貴方は誰?」
差し出された手とシルビアの顔を交互に見てどう対応していい物かと考えながらも
自己紹介する竜也。
「俺は美作竜也、美作工務店社長兼職人でまあ突拍子も無い話で悪いんだがこの場所とは違う場所から来た人間だ。」
「そんな事見て分かるわよ、人族がこの領地に居る事自体異常なのよ。それにコウムテン?シャチョウ?人族の階級の言葉?」
お互い自己紹介したものの知識と見解の齟齬はそう簡単に埋められる物ではなくましてや異世界人同士世界レベルのズレがある。
 「工務店っうのは簡単に言えば大工や土木工事を専門に請け負う会社だな。
社長はまあ、そこで1番責任が有る奴?だな。」
「なるほどね。コウムテンは職人の寄り合いみたいのものであんたはそこの会頭なのね。
……嘘は付いてないようね。」
シルビアは何かしらの方法で達也の言葉の真偽を確かめていた。
嘘を言うつもりなど無い達也は服に着いた埃を叩きながら立ち上がるとシルビアを見つめる。
「あのな、俺が嘘付いて何の得があるんだ?
それに俺だってあのポンコツ乳娘に無理矢理連れて来られてんだ。
 こんな事ならあの乳揉んで置くべきだったか?いやそれ位じゃ割り合わないか!」
シルビアの薄い胸を一瞥してから豊満なミルアルの胸を夢想して目を瞑る。その達也の態度に本能的に馬鹿にされたように感じたシルビアは
無言で竜也の腹に肝臓を突き上げるような鋭いボディを入れる。
「お前、無言でボデェ入れるなよ・・・」悶絶する達也をジト目で見るシルビア。
「男って何でこうなんだろう!あーもう!話が進まない。ん?」
イライラしながら大きく穴が空いた我が家の屋根を見つめると見たことがある人影が
こちらを伺っている。
「ねえ、あんたが言ったミルアルってもしかしてあそこで出待ちしているあの子の事?」
「どれどれ?ああ、あいつだあのポンコツ娘なにしてんだ?
  おい!んな所でうろちょろしてんな早く降りて来い。」
屋根の上で二人のやり取りを伺っていたミルアルだったが二人に見付ってしまい気まずそうにふわふわと降りてきた。
「えへへ、なんか出るタイミング探してたら出るに出れなくなちゃったよ。
  やっほー!タッツンと胸の貧しい子!」
気まずそうな顔していたのはほんの数秒、いきなりのテンションアップとシルビアに向ける無礼な一言に達也は呆れている。
「誰が胸が貧しいだ!」
「やめとけって、ミル子お前も余計なこと言うな!」
衝動的に殴りかかるシルビアを羽交い絞めにしながらミルアルをたしなめる達也。
「致し方有りませんお嬢様。胸の貧富は世界共通の悲しい階級制度を具現化した神理ゴットルールで御座います。」
いつの間にかに埃一つ無い格好の老執事がしゃんと立っていた。
「神理…たしかに、じいさん!俺目から鱗だぜ!」
シルビアを捕まえたままの達也が老執事の言葉に感銘を受けている。
シルビアの目が据わっている事も気付かないまま、
彼女の怒りの矛先がこの二人に向く事になり狂戦士の様な
形相のシルビアに殴られるのは数秒後の事である。
大きな胸に殉じた二人の男が復活した数分後、
いい加減話を進めないといけないと作者の意図を汲んでくれたのか天井に穴が開いたままの屋敷の中で老執事が用意した紅茶?と焼き菓子を飲みながら事の経緯を話し合う席が設けられた。
焼き菓子を遠慮なく口一杯頬張るミルアルそれを横目に若干イラついているシルビアその様子を見て溜息を付く達也、妙な沈黙を破るように老執事ことムイ・ルー翁が口を開く
「それでは皆様現状を把握し今後の展開についてお話いたしましょう、それではまずオッパ…
  ゴホン、ミルアル様ご説明くださいませ。」
何を言いかけたのかは深く追求しないでおきたい老執事の言葉にミルアルが口の中のお菓子を飲み込むと若干抑え目なテンションで淡々と話し始めた。
「まず最初にシルビアちゃんの要求どうりこの領地を守って彼女が死ぬまで平和に出来る人選は間違いなくタッツンで間違いないよ。」
「そこがまず疑問なの。だってこの人は戦士でも英雄でもない只の職人らしいじゃない。どうやって願いを叶えるつもりなのよ?」
シルビアの疑問も至極真っ当であるしかしその疑問にミルアルは今まで見せていた軽い口調から酷く淡々とした口調に変え話し出す。
「そもそも貴女が使用したのは大陸史干渉システムの一側面です。本来なら不干渉である私達姉妹 は一部の例外を除き一時的にシステム起動者の願いを叶えるために間接的に協力します。彼、美作竜也の召喚は最も適した人材として選定されました。
 彼が選ばれた最重要因子は彼が因果律逆転因子の数値が高いためです、因果律逆転因子が高い者ほど運命を覆す事を可能とする。
 つまり・・・英雄になれる可能性が高い人って事だよ!!」
ミルアルと出会ってまだ1時間も経っていないが彼女の口調と佇まいの変化に戸惑う3人、
竜也は彼女が良く口にするシステムと呼ばれる物の一部になってしまったように感じてしまった。機械的、システムという言葉にどこか人為的な響きを感じている達也を余所に一瞬の変化を
自覚していないミルアルが達也の前にある焼き菓子に手を伸ばそうとしているのが見えたのでその手を掴み彼女をじっと見た。
「なにー?うちの顔になんか付いてるの?あんまジロジロ見られると恥ずかしいよ。」
いつもどおりの軽いノリの彼女に戻っているのでなんかムカついた達也は焼き菓子を数枚手に取りミルアルの口にねじ込む。
「こいつに言ってた事は半分以上わけ分からないがお前の願いを叶えないと俺は元の場所に戻れな いらしい。俺はお前の願いをまだちゃんと聞いてない俺に出来るかは分からないがお前の口から聞かないと始まらない気がする。お前は俺に何を望むんだ?」
急に真面目な顔をしてシルビアを見つめる竜也に一瞬見とれてから顔を伏せるシルビア
(なにあいつ、もう一瞬ドキッとしたじゃない!落ち着け私!ワンツー!ワンツー!良し!)
「あんたに出来るか分からないけど私はあんたに賭けるしかないの。
  私の願いを叶えて、私達の領地とそこに住む人達を守って!」
「任せろ!俺がシルビアの願いを叶えてやる。」
その自信はどこから来るのだろう?右も左も分からない異世界に呼ばれたのに赤の他人の願いを叶えると断言した目の前の男にシルビアは唖然とし真っ直ぐ自分を見てくるその眼から目を離せなかった。鼓動が高鳴るのを自覚した。
「なんで、そんなに簡単に言えるの?馬鹿なの?」
「馬鹿かもしれないが女が懸命に言った願いを無碍には出来ないんだよ。 
  男ってのはそういう生き物なんだ。」
生まれて初めての胸の高鳴りに戸惑いながらの竜也顔を見る。
「まあー正確に言うと彼女の存命中にこのエリアの繁栄と拡大、つまり敵対勢力からの侵略を完全に排除して尚且つここの領民さんたちが今より良い暮らしが出来るようにしないといけないってことだよ。かなり難易度高いよぶっちゃけ無理ゲーぽいよね~♪」
少し良い雰囲気の二人に割り込むようにミルアルが割って入る。にまーと笑いながらシルビアを見るミルアル、見られたシルビアは
顔を真っ赤にして慌てて下を向く。
「当面の目標はタッツンがこの領地を実効支配して茶々入れてきている人族の国を潰すか支配しないと駄目だね。」
笑いながら物騒な事を言うミルアル。
「そもそも、人族ってなんだよ人間なら俺もそうだろそれにシルビアや老師も人間じゃないのか?」
「あんた、私達は人族じゃないわよ。魔族、私達はそう呼ばれているわ。それと老師って爺やの事?」
シルビアが呆れながら竜也を見るとミルアルがすっと竜也の首に抱きつくと囁く。
「竜也が彼女達の容姿を見て人間と区別しないのも君がこの腕輪に選ばれた要因なんだろうね。」
その様子を見たシルビアがミルアルを剥がしにかかる。
「ちょっとなにくっいてるのよ!あんたも嬉しそうにしてるな!」
「不可抗力だ!男ってのは胸を押し付けられたら動けなくなる生き物なんだ!」
「嘘付け!!」
始まった様で中々進まない3人の物語。
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