6 / 7
6 若人サロン①
しおりを挟む
リモート・ウォーリアの訓練センターの周りには、歩いて行ける範囲にいろいろな施設が整っている。
強兵が住んでいる部屋も、訓練センターのすぐそばにあった。
彼は、自由領域に来てから間もない休日に、とある場所へと出かける事にした。
<若人サロン>、遅くても20歳までには結婚しなければならないフソウの若者たちにとっての出会いの場である。
若人サロンは、300人ほどが収容できる広さの部屋で、前方に歌や踊りを披露するためのステージを備えている。部屋の真ん中には、複数の椅子やテーブルが並べてあって結婚式の披露宴会場のような雰囲気である。
一部は有料だが、ちょっとした飲み物や軽食が無料で振る舞われていて、結構混雑している。椅子があっても、座るのは容易な事ではなそうだ。
だが、強兵にとってはそれも好都合だった、人が多ければそれだけ多くの出会いがある事だろう。
彼が、今日ここへやって来たのは、自由領域に来てから疑問に思っている事を解消するためなのである。
その疑問というのは、個別居住領域にいた頃にモニター越しに対戦して知り合ったライバルたちを、リモート・ウォーリアの訓練センターで見かけない事である。
そして、七海ヒビキや三船水樹など歳が近くて強い操縦者なら知っているはずの人物が、初めて聞く名前だったからである。
自由領域と個別居住領域間の情報は、少年少女たちの育成に与える影響を考えて制限されている。だから強兵も解らない事がたくさんあるのだ。
「あれ、キミはもしかして氷上強兵くんじゃないの?」
飲み物を片手に、サロンを見回していた強兵の後ろから誰かが声をかけてきたので、驚いて振り向くと見覚えのある妖しい美女が立っていた。
「あっ! あなたは……」
そう言いかけた強兵だったが、顔に見覚えはあるのだが、どういうわけか名前が出てこなかった。
「はい、自分は氷上強兵です。たしか、あなたとは以前にリモート・ウォーリアの大会で対戦した事がありましたね?」
そうは言っても、個別居住領域での対戦はモニター越しの事なので、実際に会うのは、今日が初めてである。
「あたしは、喜多村環奈あまり覚えてないのも無理ないワ、3年以上前の事だし余り強い方じゃなかったしね」
「いやぁ……、こんなキレイな人の名前を覚えてないなんて、自分が子供だっただけです」
強兵は、個別居住領域での知り合いに初めて出会ったので、とても嬉しかった。
これで、自由領域での生活の事や疑問をいろいろ聞けると思った。
「なにっ! 氷上強兵だとぅ……」
「氷上強兵だ! 成人して自由領域に来ていたのか――」
環奈と話していると、いつの間にか見覚えのある数人の男たちが強兵の周りに集まってきた。
「やぁ、強兵! 大きくなったな! と言っても会うのは初めてだけど……」
「あっ! あなたは蒼井先輩ですか?」
話しかけてきた男の名は蒼井勇輝、強兵にとって個別居住領域での兄貴分のような存在であり、強兵と萌絵奈を除けば最強レベルのリモート・ウォーリアの操縦者である。
他の個別居住領域での知り合いも、顔は知っていても実際に会うのは初めてである。
強兵はみんなと再開できた事が嬉しくて、あらためて自己紹介がてらに、リモート・ウォーリアの訓練センターでの事などを話し始めた。
強兵が住んでいる部屋も、訓練センターのすぐそばにあった。
彼は、自由領域に来てから間もない休日に、とある場所へと出かける事にした。
<若人サロン>、遅くても20歳までには結婚しなければならないフソウの若者たちにとっての出会いの場である。
若人サロンは、300人ほどが収容できる広さの部屋で、前方に歌や踊りを披露するためのステージを備えている。部屋の真ん中には、複数の椅子やテーブルが並べてあって結婚式の披露宴会場のような雰囲気である。
一部は有料だが、ちょっとした飲み物や軽食が無料で振る舞われていて、結構混雑している。椅子があっても、座るのは容易な事ではなそうだ。
だが、強兵にとってはそれも好都合だった、人が多ければそれだけ多くの出会いがある事だろう。
彼が、今日ここへやって来たのは、自由領域に来てから疑問に思っている事を解消するためなのである。
その疑問というのは、個別居住領域にいた頃にモニター越しに対戦して知り合ったライバルたちを、リモート・ウォーリアの訓練センターで見かけない事である。
そして、七海ヒビキや三船水樹など歳が近くて強い操縦者なら知っているはずの人物が、初めて聞く名前だったからである。
自由領域と個別居住領域間の情報は、少年少女たちの育成に与える影響を考えて制限されている。だから強兵も解らない事がたくさんあるのだ。
「あれ、キミはもしかして氷上強兵くんじゃないの?」
飲み物を片手に、サロンを見回していた強兵の後ろから誰かが声をかけてきたので、驚いて振り向くと見覚えのある妖しい美女が立っていた。
「あっ! あなたは……」
そう言いかけた強兵だったが、顔に見覚えはあるのだが、どういうわけか名前が出てこなかった。
「はい、自分は氷上強兵です。たしか、あなたとは以前にリモート・ウォーリアの大会で対戦した事がありましたね?」
そうは言っても、個別居住領域での対戦はモニター越しの事なので、実際に会うのは、今日が初めてである。
「あたしは、喜多村環奈あまり覚えてないのも無理ないワ、3年以上前の事だし余り強い方じゃなかったしね」
「いやぁ……、こんなキレイな人の名前を覚えてないなんて、自分が子供だっただけです」
強兵は、個別居住領域での知り合いに初めて出会ったので、とても嬉しかった。
これで、自由領域での生活の事や疑問をいろいろ聞けると思った。
「なにっ! 氷上強兵だとぅ……」
「氷上強兵だ! 成人して自由領域に来ていたのか――」
環奈と話していると、いつの間にか見覚えのある数人の男たちが強兵の周りに集まってきた。
「やぁ、強兵! 大きくなったな! と言っても会うのは初めてだけど……」
「あっ! あなたは蒼井先輩ですか?」
話しかけてきた男の名は蒼井勇輝、強兵にとって個別居住領域での兄貴分のような存在であり、強兵と萌絵奈を除けば最強レベルのリモート・ウォーリアの操縦者である。
他の個別居住領域での知り合いも、顔は知っていても実際に会うのは初めてである。
強兵はみんなと再開できた事が嬉しくて、あらためて自己紹介がてらに、リモート・ウォーリアの訓練センターでの事などを話し始めた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる