リモート・ウォーリア

ラノべえ

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1 個別居住領域

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 未来の地球は恐ろしい宇宙人に占領されてしまった。彼らはミサイルも戦闘機も使わず、地球人が思いもしない方法で侵略してきたのだ!
  一部の人類は奴隷となったり、へき地や地下で細々と生き延びるしかなかった。
 それから30年、この物語は日本地区の秘密地下都市フソウより始まる――


「ピピピッ、ドシュッ ドシュッ バーン!」

  少年は秘密地下都市フソウの個別居住領域の一室でビデオゲームをしていた。   畳一帖程もある大きなモニターの中に、大昔の地球で生息していた肉食恐竜のようなものが、たくさん#蠢_うごめ_#いている。その中を少年の操る全身が真っ白なロボットが、左手に持った銃から光線を撃ちまくりながら突進していく。ロボットの背中にはスリットがあり、そこからジェット噴射のようなものを出して、プロペラ戦闘機並のスピードで飛行できるのだ。相手の肉食恐竜は、よく見るとシッポの付け根あたりに、装飾が施されたリングのようなものが付いていて、本当の恐竜とは違うようだ。
 この少年の名前は、#氷上強兵_ひかみきょうへい_#――明日でちょうど十五歳の誕生日を迎える。ここ地下都市フソウでは短期間に人口を増やすために、十五歳で大人ということになっていた。
 強兵は、あと一週間もすれば個別居住領域から出て大人ばかりの自由領域で生活をすることになるのだ。

「グェエエ~ ブゥオーン!」

 恐竜型のモンスターが、太いシッポを振り回して攻撃してきた。

「おっ、と!」

 白いロボットは、ひらりと身をかわすと右手に持っていた剣で相手のモンスターを真っ二つに切り裂いた。

「シュバッ、ドォオオ~ン!」

 爆発のエフェクトの後、1000POINT UP! の白い文字が浮かび上がった。

「ねぇ 替わってよ」

 その時、いつの間にか強兵が座っている椅子の隣に十歳も年が離れた幼い弟、#逸兵_いっぺい_#が来ていて声をかけてきた。しかし、

「負けてすぐ泣く#癖_くせ_#に何言ってるんだ、これは遊びじゃないんだぞ!」

と強兵は軽くあしらって、異様とも思えるほど真剣な表情でモニターを凝視した。
 地上のモンスターをあらかた倒した白いロボットは、次に空に浮かんでいる敵の巨大空中要塞に向かって行った。

「ジャキッ!」

 強兵はコマンドを切り替えて、このロボットの最強の武器であるエターナル・インパクトを装備した。エターナル・インパクトは、特撮やアニメに出てくる宇宙戦艦の先端部に装備されている巨大な大砲のようなもので、一撃で全長が数キロにも及ぶ敵の空中要塞を粉砕することができるのだ。
 白いロボットは、時折シャワーのように降り注ぐ空中要塞からの弾幕を鮮やかにかわしながら標準を合わせると、

「くらえ! エターナル・インパクト!」

と叫びながら引き金を引いた。
 雷のようなエフェクトが出た後、発射口から目がくらむほどの白くて巨大な光が、ズォオームと敵の空中要塞に向かって一直線に伸びていき動力部を貫いた。

「ドォオォォ~ン バァアアァ~ン パリィ~ン ジュクシー!」

 空中要塞のあちらこちらで無数の大爆発が起き、空全体が巨大な火の玉のようになって落ち始めた。

「ビィキィイイイィ~ン!」

 この世の終わりのような光景の中、白いロボットは勝ち誇ったように決めのポーズを採った。ロボットの体の周りから稲妻のエフェクトが現れると、次第に強くなりモニター全体が光で真っ白になった。次の瞬間、ファンファーレのような音楽が鳴り響いてMISSION COMPLETE! の文字が表示された。

「でも、来週からは逸平が思いっきりこのゲームで訓練できるぞ、俺は明日で大人になるから、ここを出て、本物の戦闘兵機の訓練を受けることになるんだからな」

 ゲームを終えた強兵が、穏やかな表情になって逸平に語り掛けると、

「寂しくなるなぁ、でも、兄ちゃんは本物のリモート・ウォーリアを操縦出来るんだよね?」

と強兵のこれからの事を祝福した。
 リモート・ウォーリア、それは宇宙人に対抗するためにフソウで造られた遠隔操作で闘う等身大のヒト型ロボットのことである。さっきの白いロボットが主人公のゲームもリモート・ウォーリアを操縦するための訓練の一部なのだった。

「がんばってね強兵……」

 二人が話していると、まだ若い強兵たちの母親の#希美_のぞみ_#がキッチンからやって来て声をかけた。

「まかせてくれ母さん、人類が太陽のもとで暮らせるようにしてやるよ!そして、そのー、今までありがとう」

 新成人になって自由領域へ行けば、家族とまた会うことはあっても今までのように一緒に生活することはもうないのである。強兵も新しい生活に対する好奇心や希望もあったが、今は何とも言えない寂しさで胸がいっぱいになった。
 しばらくすると、部屋の電話のベルが鳴って巨大モニターにツインテールの千年に一人かもしれない天使すぎる美少女が映し出された。

「強兵……、そのー、新成人おめでとう!」

 彼女の名前は、#神楽萌絵奈_かぐらもえな_#――強兵の訓練を兼ねたゲームのライバルである。実を言うと、強兵は個別居住領域全体で半年に一度行われているリモート・ウォーリアのゲーム大会での三年間連続チャンピオンで、相当な強さなのだ。そのため、神楽萌絵奈はいつも準優勝だったのだ。
 思いがけない萌絵奈からの電話に強兵はちょっと慌ててしまった。何か気の利いたことを言ってやろうと思ったが、ありふれた言葉しか出てこなかった。

「ああ、ありがとう、萌絵奈も次のゲーム大会がんばれよ!」

 強兵と半年違いで成人する萌絵奈にとっては、次のゲーム大会がチャンピオンになる最後のチャンスなのだ。

「もちろんだわ、強兵がいないなら、この私がぶっちぎりで優勝するに決まってるでしょ、強兵が作ったスコアの記録を全部塗り替えてね!」

「ははっ、それは楽しみだな、でも俺も向こうで本物のリモート・ウォーリアの訓練を受けて、圧倒的に強くなっているかもしれないぜ」
 
 強兵は半分茶化すように言ったが、心の中では萌絵奈の強さを認めているのだ。
 このやり取りを逸平と希美が、この二人の関係は、フームという顔で眺めていた。
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